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エンタープライズコンピューティングのルールを変える仮想化の波

2003/04/11 10:00
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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ベンチャーキャピタリストのStewart AlsopによるFortune誌最新コラム「I've Seen the Real Future of Tech--And It Is Virtual」を読んでみよう。論理展開が若干粗っぽいが、なかなか示唆に富んでいる。

「仮想企業」というコンセプト

ドットコム時代よりももっと前、90年代前半に「Virtual Corporation」(Bill Davidow)という本が出版された。もう絶版になったのだろうが、日本語訳も出たビジネス書のベストセラーだった。

「His insight was basically that with outsourcing and networks, companies could pull together resources to address specific projects and objectives without having to build permanent organizations.」

Virtual Corporationとは、アウトソーシングとネットワークによって、企業は、恒久的な組織を作らなくても、必要なリソースをかき集めて必要なプロジェクトを遂行できる、というコンセプトであった。このビジョン実現のための真の課題は、人間の側よりもテクノロジーの側にあり続けた、とStewartは言う。そして、

「Now, ten years later, we're at the beginning of a major transformation, in which far-flung networks can expand and contract as needed and are easier to understand and administer. That means changes not only in how companies oversee their IT resources, but also in how suppliers build and sell systems.」

Bill Davidowが本を書いてから10年が経った今、大きな転換がまさに始まっているわけだが、それは単にユーザ側の変化のみならず、システム構築をするベンダー側にも本質的変化をもたらす、というのがこのコラムのポイントだ。

コンピュータ技術の発展の3つの段階

Stewartは、「the development of technology for business」を3段階に分けている。第1の波は、1950年代から70年代。メインフレームやミニコンをコンピュータメーカーが顧客に売り込んでいた時代。

「They would sell businesses on ideas for what computers could do and would build systems around particular projects. Those systems tended to be unique, expensive, and hard to maintain, but they worked.」

特定のプロジェクトのためのシステムが作られ、それは固有のシステムで高価で、メインテナンスがたいへんだった。でも動いた。動くことに価値があった時代である。

第2の波は、80年代から90年代は、コンピュータには何ができるかを企業が理解し、「a more versatile approach」、多目的なアプローチをするようになった。PCとLANの到来によって、「IT departments began building infrastructure that would solve multiple problems.」。

これから訪れるのが第3の波。

「As computers and networks become commodities, companies are learning they can reduce costs and make the whole jumble a lot easier to manage. Suddenly it doesn't matter what server or storage unit you buy or where you put it. It all looks like one integrated system. That's virtualization.」

この文章が、このコラムの肝になる文章である。

仮想化が進めば、どんなサーバーやストレージでもよくなる

どんなサーバーやストレージを買おうが、それをどこに置こうが、そんなことには何の意味もなくなる仮想化(Virtualization)によって、企業はITコストを飛躍的に削減しつつ、管理も著しく簡単になる。企業はそのことを学んでいる過程にあるとStewartは主張している。

ここで仮想化(Virtualization)という言葉について、若干解説しておこう。冒頭で、このコラムは論理展開が粗っぽい、と書いた理由とも関係する。

Stewartは、Virtual CorporationのVirtualと、この仮想化(Virtualization)を、引っ掛けて、このコラムに彩を加えようとしている。

ただ、読者として少し混乱するのは、このVirtualとVirtualizationの意味が、微妙に違うことに起因する。一般的な形容詞としてのVirtualという言葉はかなり広い意味で使われ、その意味は曖昧なこともあるし、文脈によって変わってくる。しかし、仮想化という意味でのVirtualizationというのは、情報技術における重要な基本概念の一つで、明確な技術的意味がある。

実現段階に入ったコンピュータの「仮想化」

無限のリソースを持った理想のコンピュータ・システムを頭の中でイメージし、やりたいこととその実装を分離すると、システムの問題は一気にわかりやすくなるが、現実にはコンピュータシステムのリソースにはさまざまな制約(メモリ容量とかHDD容量とかプロセッサの能力とか)がある。この乖離の間を取り持つのが仮想化という技術である。仮想化のもともとの意味は、「存在しないものを存在するかのように扱う」ということであるが、コンピュータシステムの世界の仮想化とは、実装における物理的制約があって「本当は存在しないはずの仮想のコンピュータ」が「存在するかのごとく扱う」ことを言うのである。だから、ユーザや管理者やシステム開発者は、仮想化のおかげで、「理想のコンピュータ」と向き合う自由を与えられる。それは素晴らしいことだ。

仮想化という概念自身は、コンピュータサイエンスの初期から、つまりものすごく古くからある。しかし問題は、仮想化しても、きちんと性能が出るのかということであり続けてきた。物理的制約を全部理解した上でシステムを構築したほうが間違いなく性能は出る。このトレードオフをどう考えるかがコンピュータシステム技術の歴史だったと言ってもいい。結局は、仮想化の技術を局地的に入れられるところから入れ(例、仮想記憶)ながら、現在に至っている。
その仮想化が、とうとう、企業の情報システム全体のところまで来つつあるのだよ、というのが、このコラムの意味である。

技術的に難解な話を、短いコラムでわかりやすく書くのはとてつもなく難しいので、ときには論理の飛躍に目をつぶってでも、たくさんの情報を盛り込もうとせざるを得ないことがあるが、Stewartのこのコラムはその典型である。

さてコラムの文章に戻ろう。

「As this idea sweeps through companies, it is enabling them to rethink how they build their infrastructure.」

つまりこの仮想化という考えが企業全体に及ぶと、ITインフラの作り方が変わるというわけである。この文章に続いて、Storage Area Networkの例が出てくる。

Storageのところは比較的わかりやすいので、仮想化がどんどん進みつつある。

ストレージに続いて仮想化の進む4分野

StewartがStorage以降の仮想化対象として挙げるのが、次の4点である。本当はここからが、議論を呼ぶところで面白い。

  • 「Server consolidation」
  • 「Death of appliances」
  • 「Re-emergence of Application service provider」
  • 「Web service tool」

の4つである。

Storageと同じようにサーバーも集中化し、特定アプリケーションに特化したサーバーは死に、死んだと皆が思っていたASPが生き返り、そうなるとウェブサービスがようやく本格的に意味を持ってくる。粗っぽく要約するとこういうことだと思う。興味のある方はぜひ、原文を読んでみてください。

仮想化の波は本当に来るのか

Stewartはこう言っているが、本当にこういう「major transformation」が起こるのか。その先を考えるのが、このコラムを読む真の意味である。

米国IT産業やシリコンバレーは、こういう本質的な議論が大好きなところで、大きな技術的潮流と企業戦略とは密接に関連付ける必要があると誰もが考えている。大きな技術的変化点を見誤ると、会社などすぐになくなってしまうからだ。

Pacifica Fundの同僚のTim Orenに、僕は「Stewartのこのコラムにお前はagreeするか?」というメールを送ってみた。20分後に戻ってきた返事がなかなか面白かったので、ここでご紹介しておこう。Timはこういうことにかけては一家言あるビジョナリーなのである。

「Fundamentally, I agree with his argument. He's describing a less drastic version of the so-called 'grid computing' - I think that is just right.」

と彼は書いてきた。Timの目からは、このコラムは、グリッドコンピューティングがコンピュータシステムの現実から少し離れたドラスティックな提案であるのに対して、その「less drastic version」に見えるようだ。なるほどそういう風に考えるとわかりやすいかもしれない。

具体的な4つのポイントについては、

「Regarding his conclusions:



- Server consolidation. I really agree with this, but he may emphasizethe physical consolidation of boxes and locations more than I would. The interesting issue is that virtualization will likely be a force toward consolidating server platforms.



- Death of appliances. For devices that are fundamentally about'computing' or standard Internet facilities like mail, I basically agree. I don't agree with consolidation of 'network appliances' - that is a separate market.



- ASP re-emergence. Maybe, but I don't see it as an inevitable strong trend. Making the platform more uniform underneath has economic advantage for both the enterprise doing things in-house with either purchased or homebrew software, and for the ASP.



- Web services tools. In some ways, XML/SOAP and the other technical standards behind Web services are the enablers of virtualization. I have always argued that web services are more important to programmers and systems integrators than end users, so I agree with his premise.」

との回答であった。

シリコンバレーにおけるある種のスタートアップやベンチャーキャピタルの競争は、高度に知的なゲームみたいなところがあるから面白いと、僕は思っている。

読者の中で、興味のある方は、Stewart AlsopがGeneral PartnerをつとめるNEAというベンチャーキャピタルのポートフォリオ・カンパニー(投資先)をあれこれと見て、Stewartの仮想化対象のビジョンに合致した投資先があるかどうか、調べてみたらいかがでしょうか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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