KDDIと三菱東京UFJ銀行が共同で設立した「じぶん銀行」の銀行営業免許が6月17日に下りました。 それを受けて、同行の親会社となるKDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏と三菱東京UFJ銀行 頭取の永易雅人氏、じぶん銀行の初代社長となった中井雅人氏がサービスのビジョンについて発表がありました。
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0806/18/news011.html
「じぶん銀行」とか「ケータイ」で、といわれてもなかなかイメージがわかなかったのですが、サービスのイメージがようやく明らかになりました。
ログインは簡単で4ケタの暗証番号を入力するだけ。通常のネット銀行がIDとパスワードを入力するのに対し、4ケタだけで済むのは便利です。ケータイで個人認証ができるという点を活用しています(セキュリティは若干不安ですが・・・)
実は目玉は「ケータイ番号振り込み」です。通常の銀行で振込む時は、相手の銀行名・支店名・口座番号などを入力する必要がありますが、じぶん銀行ではアドレス帳から振込先の相手を選んで振り込めます。つまり、相手にメールを送ったりするのと同じ感覚でお金の振込みができるようになることになり、とても便利なサービスです。
AUはサブスクライバIDといって端末固有の番号があるのですが、それを銀行口座番号と紐付けることによって実現されているようです。従って、初めはAUユーザのみで実現されるのかもしれません(ここは未確認ですが)。NTTドコモ・ソフトバンクとの連携も今後は必要になってくるでしょう。
AUの電話料金引き落とし口座をじぶん銀行にするとポイントが増量される、三菱東京UFJ銀行の口座保有者には手数料が優遇されるなど、AUまたは三菱東京UFJ銀行とのシナジーを考えているようです。我々一般ユーザから見ると、ポイント増量や手数料優遇はうれしいサービスとなります。
じぶん銀行の目標は3年で240万口座を獲得し、預金量1兆円程度、単年度黒字を目指しています。さらに5年後には340万口座、預金量1.5兆円程度、累積赤字の解消という非常に高いハードルとなっています。果たして実現できるのか考えてみたいと思います。
インターネットを中心にした銀行はそもそも儲かるのでしょうか。一定規模の口座数を持っている代表的な例としては、ジャパンネット銀行があります。
ジャパンネット銀行の平成20年3月期の決算内容は、預金量4,200億円、口座数180万口座、営業収益230億円、当期純利益10億円(前期2億円) という結果でした。平成11年の設立後、直近では平成17年に一度黒字を出していますが、それまでは赤字が続き、ようやく平成19年3月期に黒字(当期純利益2億円)になりました。他、イーバンク銀行などもありますが、赤字から脱却できていません。
この原因としてはいくつか考えられますが、一つは収益力の高い商品がないことが挙げられます。我々一般ユーザから見ると、預金を運用していれば儲かるのではと思いがちですが、銀行の方から見ると全く違うようです。通常の銀行の収益は貸出金からの収益が圧倒的に大きいのです。従って、口座を開いてから預金を入れてくれただけでは、あまり多くの収益が期待できません。
そこで必要になるのが、振込等の取引に関わる手数料収入と、カードローンや住宅ローンなどの貸出による収益です。従って、取引をいかに多く行っていただくか、ローンをいかに借りていただくかが焦点になり、ネットバンキング各社が躍起になって取り組んでいます。 今回のじぶん銀行ではまず取引がしやすいことを売りにしていますので、手数料収入がメインかと思いますが、それだけでは他ネットバンクと同様、黒字転換に時間がかかりそうです。そこからいかにして貸出収益を生む商品を作れるか、その商品への仕掛けを作れるかがキーとなり、他ネットバンクが歩んだ数々の苦労を強いられることになるのではないでしょうか。
もう一つの原因はクリティカルマスを取れていないことがあげられます。ジャパンネット銀行は口座数が約150万口座から黒字転換したことを考えると、損益分岐点はかんばっても100万口座以上になるでしょう。ジャパンネット銀行が8年かかって150万口座を集めたものを、じぶん銀行は3年で240万口座集めるという高いハードルを達成するには、利便性以外に、今のKDDIと三菱東京UFJ銀行の顧客をいかに誘導できるかが焦点となってきます。確かにポイントと手数料の優遇はありますが、(始まって見ないとわかりませんが)誘導には若干弱いという印象があります。 更なる誘導の施策が求められると思われます。
最後に、他ネットバンクとは異なる事情があるのは、じぶん銀行がKDDIと三菱東京UFJがそれぞれ50%ずつ出資した合弁会社(資本金200億円)である点です。両社の平成20年3月期決算における当期純利益を見ると、KDDIが2,177億円、三菱東京UFJ銀行が5,509億円です。今回設立したじぶん銀行の利益でジャパンネット銀行相当の10億円があがったところで、両社にどれほどのメリットがあるのか、まだ見えません。従って、両社が利益以外にもじぶん銀行から得られるメリットが確実に見えるようになったとき、本気の姿勢が現れてくるのではないでしょうか。
「携帯電話の中にある銀行」という世界に類を見ない取り組み、ぜひ成功させて欲しいと願っています。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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