最終更新時刻:2009年11月26日(木) 20時40分
9

[前編] テレビCMしていない会社を10社挙げられますか?:就職活動中の学生さんへ

公開日時:
2007/12/21 06:00
著者:
かみやひろゆき
 

人生に「レール」などない

昨晩は大学院時代に在籍した研究室の忘年会に参加し、教授や後輩達と飲んできた。
アツくなって長文となったため、2回に分けてポストしようと思う。

卒業してからそこそこの年数が経つので知っている後輩は一人もいないのだが、ウチの会社も新卒採用をするので

 「ひょっとして誰か興味を持ってくれる学生はいないかな?」

とほのかな期待を胸に行ったのだが…

完全に打ちのめされてしまった。

この研究室は、新しい研究テーマを取り上げコンピュータを大いに活用していることもあり、学生の間での人気はとても高い。
人気が高いので、優秀な学生も集まってくる。
で、自然とそれなりの企業へ皆就職しているようだ。
就職先にはソニーやIBM、NRI(野村総研)やNHKなど、見事な企業名が並ぶ。

まあこうした傾向は私の時代も同じだったのだが別にウチの会社に興味を持たなくても、

  • どうしてベンチャーではなく大企業を選んだのか
  • 就職したらどんなことをやりたいのか
  • 1年目、5年目、10年目、40歳になったらどうなっているか

といったようなお話ができるといいな、と思っていた。

ところが大きな衝撃は、そもそも

 「ベンチャーのような小さな知名度も高くはない会社で働く」

といった考え自体が全くないことだった。

この、日本社会が作り上げる

 「有名大学を卒業し、大企業へ就職することが成功のレール」

という刷り込みには恐怖すら覚えてしまう。

「就職」というのは大学入学の選択に比べて、比較にならないほど多種多様な選択肢があり、正解や優越といった基準も尺度も存在していない。

にも関わらず、ほとんど疑いもなく、就職先を選んでいるようだ。

人生に成功のレールなどない

先週の金曜日、本城愼之介さんとお会いする機会があった。

本城さんと言えば、改めて説明するまでもないが、楽天を三木谷さんとお二人で立ち上げ、取締役副社長を務められていた方である。
慶応大学をご卒業なので希望すれば大企業への就職もできたはずだが、まだ影も形もないビジネスへ踏み出すことを決断された方だ。

その本城さんがこんなことをおっしゃっていた。

  •  有名大学を卒業し、大企業へ就職することだけが成功なんてことはないと誰もがわかっているのに、多くの人がこの道を目指している
  •  成功への一本道などなく、上り坂も下り坂も回り道もあるのが人生である
  •  今まで"正解よりも回答"を、"成功よりも成長"を重視して生きてきた

ベンチャーで日々苦労をしている方であれば共感できるお話だと思う。
人類の長い長い歴史を振り返ってみても、人生もビジネスも、【成功のレール】などなく、正解・不正解の2択でもなく、そこには多種多様な選択肢があり、どれを選ぶかを決めるのは自分である。

選択肢は何百万

アメリカでは、優秀な学生の多くがベンチャーや新しいビジネスへの挑戦を目指すと聞く。
あるいは、学生の間に面白いビジネスを見つけたと思ったら中退してその道に突き進む人も多い。
ビルゲイツ(Microsoft)も中退だし、ラリーページも博士課程の途中で google を立ち上げている。

日本の優秀な学生は「ベンチャー企業と大企業を比較して大企業を選ぶ」のかと思っていたが、そもそもの選択肢として「大企業以外」は入っていないようだ。
これは、私の後輩に限った話ではなく、おそらく日本の特徴なのではないかと思う。

「大企業よりベンチャーが良い」といった短絡的な話をするつもりはない。
ただ、何の疑問も抱かずに、大きな組織の一部となることを受け入れてしまうことは、残念でならない。

大企業でも「個」は発揮できる、ベンチャーでは経験できない大規模のプロジェクトを動かせるという意見は確かにあるだろう。
ただ、こうして個性を発揮し、プロジェクトを本当の意味で「コントロール」できる立場になれる可能性は大きな組織になればなるほど低確率になり、気が遠くなる時間がかかる。

「Web進化論」の梅田さんは、著書「ウェブ時代をゆく」の中で大組織で成功できる要素として7項目挙げている。

例えば1項目はこうだ。

(1)「配属・配置転換のような他者によって自分の生活や時間の使い方を規定される」ことを心から楽しめる。

他の6項目も、どれも言い当てていると感じるものばかり。

自分の趣向・指向と、大組織での人生は、本当に適合しているのか、これから就職を考える学生さんは自問自答を繰り返して欲しい。

就職活動をしている学生に聞いてみたい質問がある。

「テレビCMをしていない会社を10社、今すぐ挙げられますか?」

と聞かれたら、すぐに答えられるだろうか?

日本には10どころか「100万社を越える会社」があるのだ。
人生の一大転機・決断となる社会への第一歩にもっと積極的に向き合って欲しいと思う。

(…後編へ続く)

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

9

かみやさん。コメント有難うございます
>Lv.30で魔法もバリバリ使える人が入社してくると、
>Lv.12で大活躍していた人すらも突然戦力外に

 かみやさんのお話を聞いていて
SEGAの「アーリエル〜クリスタル伝説〜」
思い出しました。

 1から集中して成長させるヒーラー(LV9だと爆発的に強くなる)
以外は、ほとんどステージクリアごとに雇える人で
どんどん交換していった気がします。(人はいるけど使わない感じで

 ヒーラータイプの人
(ほって置いても独学でこつこつ遣ってて、ブレークスルーする人)
は中々居ないですね。

  きむこう on 2007/12/23

8

ライブドア事件以降の新興株式市場の低迷など見てもベンチャー全般へのマイナス要因は数え切れないと思います。起業よりも廃業の方が多いというのは、その当然の結果なのでしょうね。
でも、そういう時だからこそ遣り甲斐があるっていう位のスタンスじゃないとそもそも難しいのかもしれません。学生さんでも、そういう意識の人が全くいないという訳でも無いと思います。少しでもそういう気運を作っていければと思っています。少しずつでも成功体験を積み重ねていくことかなあ?とか。

  尊仁 on 2007/12/23

7

きむこうさん、まさにウチもそれに苦しんでおります(苦笑

ベンチャーは何年もかけてジックリと育てる余裕がないので、どうしても業務をしながら成長していくことになります。

「ベンチャー=中小企業」→「日々生き長らえれば良い」のであればコレでも良いのですが、資金調達をしてある程度の期間で成果を出し続けることを目指す「ベンチャー」の場合は OJT ではスタッフの成長スピードが追いつかない場合が大半です。

となるとどうなるか。

即戦力を採用するしかなく、GREEの田中社長も日経新聞のインタビューで同じようなことをおっしゃっていました。

RPGで例えると、Lv.3でスライムを倒しながら成長している所に、突然Lv.12ぐらいの人が入社して周りの敵もそれに合わせてレベルアップした状態になるので、いきなりLv.3の人は実質「戦力外」になります。OJT といっても成長スピードが追いつかず、放置プレーになってしまうんですよね。

そして、Lv.30で魔法もバリバリ使える人が入社してくると、Lv.12で大活躍していた人すらも突然戦力外に…

これがベンチャーである気もしています。

(コメントありがとうございます)

  かみやひろゆき on 2007/12/23

6

尊仁さん、その通りで日本では「ベンチャー ≒ 中小企業」と思っている人が多いですね。
どう違うのかと言えば、短い言葉で説明するのが難しいんですが、ビジネスに対する捉え方が全く異なると思います。

日々の生活の延長線上につながっているのが中小企業に多いパターンで、「資本過小、売り上げ高僅少、経験も資産も信用も知名度も無い弱小零細企業」もこれに当たると思います。こちらも決して悪い所だけとも言えず、ズルズルと生き長らえることは結構できたりします。

シリコンバレーのベンチャーは「日常の延長線なビジネス」では資金調達が困難ですから、「イノベーション」が求められ、うまくいかなければ簡単に退場させられます。

と書いていて、この「ベンチャー ≒ 中小企業」という思いこみが、学生が「ベンチャーにそもそも興味がわかない」大きな原因の1つな気がしてきました…

(コメントありがとうございます)

  かみやひろゆき on 2007/12/23

5

 そういえば、職安紹介のJavaの携帯アプリ系の某ベンチャーで
「バイト(時給800円)で3-5年ぐらい様子を見てよければ社員として採用します」
なんて会社もありました。

 其の時の時点でC、C++、ASM等で8年ぐらい実務経験があった時点での話ですから
 漠然と「優秀な人材を」
と望むのは、結構ピンボケしているのかもしれません。

  きむこう on 2007/12/21

4

 殆どの場合
ベンチャー=中小企業
と考えると、お話的に納得いくかも。

 *即戦力(処理能力が凄い人)
 *販売のコネがある人
なのかな。求められているのは。

 小さいところほど、
仕事を振る上司の方に余裕が無いので
 *放置
 *単純作業の指示(バイトに毛が生えたもの:携帯の検証等)
な感じです。

 OJTなんで横文字でかっこいいけど
結局はお客さんに育てさせているだけですしね


*教育制度がある(もしくは独学するにしても業務時間中にその余裕がある)大企業
*一から修行させてくれる(育ててくれる)姿勢が見受けられる中小企業
に行ってから、5年ぐらい修行してから本当に遣りたい仕事の会社に
就くのも良いかもしれません

  きむこう on 2007/12/21

3

ベンチャー企業といっても、現実には、資本過小、売り上げ高僅少、経験も資産も信用も知名度も無い弱小零細企業=研究開発費どころか、福利厚生さえ怪しい。なんていう超マイナス思考の見方も可能だと思います。
でも、その一方「何も無い強み」「何も知らない強み」「だからこそイノベーションが起こせる有利性」という別の見方も可能ですよね。そういう良き規範になれるよう頑張りたいものだと思います。

あと、インターンの20代若者を見ていると凄くいいなあと思います。先入観が無いというか怖いもの知らずで常識のブレーキが無いので非常にアグレッシブで思考や行動が柔軟です。
大手だと末端業務に留まるところが大きな仕事をまるっと見れるので、人によっては凄く面白いだろうと思います。やがて、そういう経験が後輩などにも伝わるといい人事スパイラルが生まれるのではと、今から期待をしています。

  尊仁 on 2007/12/21

2

坂本さんのおっしゃるとおり、だと私も思っています。
全ての人がベンチャーに向いているかといえば、そんなことはなく、大企業でご活躍する方も多々知っております。
ただ、大きな組織に入ることが当たり前のような感覚になっている気がして、そこが残念です。
「そういう人生もあると思いつかない」、確かにそうなのかもしれないですね。

それから、リスクという点で考えると、よく「大企業に入ったから安心とは言えない」とおっしゃる方もいますが、日本の社会はまだ大企業優位なことが多々残っています。
とはいえ国力をつけるのであれば、資源が少ない我が国はイノベーションが必要でもあり、梅田望夫さんのおっしゃるベンチャー企業の「多産多死」が機能する社会の仕組みができて欲しいとも思ってます。

(コメントありがとうございます)

  かみやひろゆき on 2007/12/21

1

周りの環境によるでしょうね。私が以前在籍したベンチャーは優秀な新卒がいっぱい入った最初の年で、配属即大活躍という人もいました。一方でそういう人が周りにいないとそういう人生もあると思いつかないでしょう。
また、自己の成長とリスクを考えると仕事を覚えて育つには定評がある大企業の方がリスクが少ないとは私も思います。ベンチャーにいくのは仕事を覚えてからでもいいかなとも思います。いつ何時つぶれるかもしれないリスクがあるわけで、スキルを身につける前に放り出されたらたまったものじゃないと思うのも分かります。

  坂本多聞 on 2007/12/21

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

この記事に対するTrackBackのURL: 

CNET_ID

メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。