3月23日の情報通信政策フォーラム(ICPF)「参加型メディアの可能性」に参加してきた。概略は大野さんのブログが詳しく、事務局長の池田氏から「異議申し立てとしてのブログ」、小飼弾さんの404 Blog Not Found:質疑問答の技術など多様なレポートがすでにあり、これからも続報が出ることだろう。(3/26 追記 ITmedia 記事1 記事2)
非常に内容が濃く、いろいろ思うところがあったので、ここでは、私見を交えて紹介していきたい。
参加する前は、「日本のブログはこれでいいのか:個人サイトが主導してきた日本文化の鏡」で書いたように、結局日本文化があって今のブログができているので、いいも悪いもないだろうと考えていた。基本的にこの考えは変わらないが、ブログをはじめとする参加型メディアが日本社会を変えつつあるので、過剰に悲観することはなく、これから日本社会を徐々に変えていけばいいという楽観的なイメージを描くことができた。
日本のネットの特質:タテ社会の人間関係の縛りと反動としての匿名ネット文化
日本のネットコミュニティの匿名性の高さと、逆に北米などでの実名性の高さが話題となった。小飼氏が、北米ではフリーランス的な働き方が浸透しており、実名ブログで自分の価値を高めることが自分というブランドを上げ経済的なメリットへとつながりやすいという指摘があり、とても納得させられた。『個人のブランド』を高めることが社会的地位の向上に役立つので、ブログもその一環として実生活の仕事や研究に密な存在となっているのだ。
一方、日本は、所属する組織でどう生きるかが問題となる、中根千枝氏が指摘されたところの「タテ社会」だ。これは階層社会と誤解されやすいのだがそうではなく、タテのつながりでどの組織に所属しているかが重視される社会ということだ。場を同一にするもの同士のつながりで集団が構成されており、小飼氏が指摘されたコミュニケーション(コミュニティを作る働きかけ)が必要のない仲間内同士で集団が構成されている。
これに対して、資格とかキャリア、肩書きで集団を構成するのがヨコ社会であり、北米のフリーランス的行き方とかはこの原理で成り立っている。ヨコ社会で生きるためにコミュニケーションを行い、自分ブランドを高めることは生きることそのものに近い本質的な行動となる。
一方、タテ社会で出る杭は打たれる日本社会において、リスクを取って実名でブログを書き、自分ブランドを高めることは経済合理性が少ない。
ブログで個人の見解を書
いていても、時として批判は個人ではなく、所属組織に向かってしまうことがある。職を賭すぐらいならまだしも、社会不適合者とまで見られるリスクさえある。日本のブ
ログで実名が少ないとか、その道の権威が参加度が低くてレベルが上がりにくいとかいう問題の根幹にはそんなタテ社会という構造がありそうだ。
私の知人で実名とプロフィール公開サイトをもたれているのはライターの佐藤信正さんとかサッカー&SEOつながりの大内範行さんとかフリーランス的な生き方をされて『自分ブランド』を高めることの経済的メリットがある方だ。
日本のタテ社会の反動としての匿名ネット文化
匿名性がより好まれる日本のネット文化は、そんなタテ社会の反動によるものだという指摘が佐々木氏、小飼氏らによりされた。従来、人間関係を気にして自由なクチコミがごく私的な狭い範囲、井戸端会議やタバコ部屋談義、に限られていたのが、ネットというメディアを得て解き放たれて成長しているというのだ。
毎日新聞が最近、ネット降臨という題でネットの匿名文化を叩いている。結局のところ日本社会の一端を担ってきた大マスコミが作った社会が、今の日本のネットコミュニティを生んでいるのであり、光が影を非難するさまは、「悪いもう一人の双子(Evil Twin)」を叱咤するさまに似ているかもしれない。
徐々にではあるが、着実に日本社会を変えつつある参加型メディアの未来
タテ社会の反動として匿名性が高い日本のネット文化であるが、書き手の慣れに伴う質の向上は着実に進んでいるのではないかと指摘がされた。かつての新聞の投書と比べるとはるかに向上しているという。
匿名が中心であっても、自己表現することの楽しさと、その技量の向上のためのポジティブなサイクルが回りだした日本の参加型メディアは、日本の社会構造を徐々にではあるが着実に変えながら発展を続けていきそうだ。高い期待に副えるほどのスピードはないので、途中幻滅を生むかもしれない。しかし、うん十年も経てば、いつのまにか日本がちょっとだけ変わっていたと後から分かるのではなかろうか。
ブログをはじめとする参加型メディアの歴史はそれほど古くはない。渋谷陽一氏と橘川幸夫氏らが始められたロッキングオン、橘川氏のポンプ、リクルートの「じゃまま?る」とかの紙の先行媒体時代から比べるとインターネットという場に移り影響力ははるかに大きくなっている。大きな変化ほど徐々に進むから気付きにくいものなのだ。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
多聞 on 2007/03/26
櫻吉です。
納得させられました。
私も実名を出してブログやサイトを書いていますが、それは自分を
売りたいがためです(あれで売れているかどうかは怪しいですが)。
ですが、実名ゆえに会社(及びグループ会社も含めて)に関しては、
リスクを考慮にして意見を控えています。
今の時代は、匿名も、致し方ない事なのですね...
櫻吉 on 2007/03/26
読み返して結論が冒頭のまとめとかぶっていたので加筆修正しました。
ちなみに、渋谷陽一さんはトークライブでお話を聞いたとかいう経験だけですが、橘川さんには質問して、そしてじゃま?るの中の人にはリクルートグループ時代のパーティーでお話したとかいう接点がひそかに自慢です。
多聞 on 2007/03/26
情報発信 on 2007/03/25
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櫻吉さん、毎度ありがとうございます。
実名、匿名そして筆名いろいろありますが、日本のタテ社会に適応したありかたは筆名じゃないかというのが私見です。シンポジウムで小飼氏が小椋佳さんを目指せばいいのではと指摘されたことも私と同じ考えです。森?外(森鴎外)とか、松浦静山とかいくらでも遡れますが、雅号で執筆するという日本の伝統文化にならうのもいいなという考えです。