ソフトウェアやデータファイルを一括配布するツールを初めて世に広めた元祖といえる会社は?もちろんWinnyではなく、Napsterでもない。答えはマイクロソフトだ。
1994年にMicrosoft Systems Management Server 1.0(Microsoft SMS)が出荷され、後に出たMicrosoft SMS 1.1が順調に売り上げを伸ばした。分散システム集中管理ツールというキャッチフレーズを持っていたが、要するにソフトウェアの一括配布・インストールでクライアント/サーバー システムを有効に管理できるというのが売りだった。私はそのMicrosoft SMSの日本における2代目のProduct Managerとして主にマーケティング面の責任を背負ったのだ。
Microsoft SMSはサーバー上にインストールイメージを作って階層構造でノードにファイルを受け渡し、ソフトウェアのデータを配布していく。また、ネット枠内のPCの情報を調査して何がインストールされているのかというインベントリ(資産)情報を収集することができる。クラサバ全盛の時代において、フロントのモジュールの入れ替えは深刻な課題であったので、午前2時無人のオフィスで一斉インストールとかいう広告コピーが大いに受けてよく売れた。
ただし一つ問題があった、きちんと動かすのが難しかったのだ。当時、PCサーバーのCPUはPentium 133MHzとか200MHzとかの時代で、社内LANもギガなんて先の話であり、場合によってはISDNを介して接続したWAN越しに配布するという恐ろしい使い方もありえた。環境が整う前に出てしまったということではあるが、不満に思われるケースも多かったためか雑誌の日経コンピュータで動かないコンピュータという一番業界で恐れられている記事に登場してしまった。この記事は事実誤認が多かったため異例の1ページ弱の訂正記事が出たのだが、いずれにしろあまり満足いただけていない、ユーザーが当時は多かったようだ。階層型で一斉配布というこの当時のバージョンのMicrosoft SMSの仕組みと期待される使われ方にずれがあったのだ。
インターネットが社会を動かし始めた1997年ごろ、インターネットを介したソフトウェア配布の可能性を日本での技術責任者と話したことがあるが、そんなことをやったらネットの各ノードが詰まって機能しなくなるだろいうと一笑に付されたものだった。
P2Pで構成されたグリッドシステムとしての可能性
ソフトウェア配布ツールとしてのMicrosoft SMSはその後勢いを失い、システム管理ツールとしては、NEC、Fujitsu、HitachiそしてIBMというメインフレーマーのツールが主流となっていった。システム運用としてトータルにサービスしているのでニーズに近いところでツールと運用ノウハウを売ることができるのは日本ではこの4社だ。
一方ソフトウェア配布ツールとしてはWindows Updateが大規模なパッチ提供ツールとして進化を続けている。ここでマイクロソフトはパッケージソフトベンダーというよりサービス提供企業となっているところが面白い。
そして、特定ノードにデータを集中させない分散型のPoint to Pointシステムの可能性も大きい。
しかし、Winnyではライセンス違反のデータが過半を占める自体を制御できず、著作権に絡む第一審有罪判決まで開発者が受ける事態になった。技術的な可能性が大きいだけにその運用のあり方や開発姿勢がとても残念だ。
資源を少しずつ出し合って、ユーティリティコンピューティングを行うという技術的可能性は大きい。それだけに、最初から社会的批判や損害賠償請求という事態に至らないような仕組みを込みで設計するなり、抜けていると気づいた時点で手を打つなり、何か歯止めのしくみが弱かったことが悔やまれる。
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