期待と否定の両方が錯綜している企業向けのホスティング型グループウェアサービスGoogle Apps for Your Domain(Google Apps)。マイクロソフトの牙城を脅かすと従来の企業競争の枠で捕らえた日経新聞も、GmailのWebユーザーインタフェースがいまいちとか論じるeWeekの翻訳もこのニュースの本質的な革新性を見逃しているという点では変わりない。Google Appsは言葉が先行したSaaSの本質を明らかにして、私がここで自家用車型情報システムと呼ぶ、従来広く使われてきた企業情報システムを過去のものにする可能性を秘めているのだ。
自家用車型情報システムのメリットと限界
2006年現在、企業向け情報システムのほとんどは企業のネットワーク内に独自サーバーが用意されて専用にサービスを提供している。従来は、広告モデルで提供されることが多い無料サービスが、街の乗り合いバスだとすると、その企業専用に用意されたサービスはお抱え運転手つきの高級社用車のようにより高い次元のサービスが得られているとされてきた。
しかし、管理が行き届かない企業内情報システムは、高級社用車に数十人が列をなして待たされるかのような処理の滞りや、時には車が故障して動かないとかいう不自由さにも直面してきた。自家用車なら、故障したら代車をディーラーに用意させたりができるが、サーバーだと設定の問題があるからと、通常は電源を入れない待機系を用意しておくというような程度の準備になっている。
また、いざ負荷が膨大に膨れたら到底まかないきれないし、逆に日ごろは資源が有効に使われておらず実に、もったいない状況といえるだろう。また、処理の積み残しが嫌で巨大なサーバーを買っているとしたら、それは、自家用バスを持っているようなものだ。自家用バスだったらいつもはガラガラだと気づくだろうが、情報システムにおいて、CIOは自社のシステムが、もったいない状態になっているなどと、気づくことは難しい。
Google Appsは、タクシーチケット方式とも呼べる従来に無いサービス
一方、Google Appsは、広告モデルで提供されるGmailと資源を共有化されている。タクシーチケット方式、もしくはハイヤー方式で必要に応じて都度、車を調達して使えるようなものなので、多少の不自由さはあるにしろ、サービスの安定性、信頼性、ピーク対応性は、自家用社用車とは比べ物にならないくらい高い。現実社会のタクシーは雨が降るととたんに捕まえるのが大変になるのだが、Google Appsは世界中で資源を共用しているので、局所的な負荷の増大も問題にならない点が違う。
使いたい時に資源が使えるという自家用車の便利さと、固定費負担が無く、昼用に応じて資源を柔軟に調達できるタクシーチケット方式の両方のよさを兼ね備えるような存在が、Gmail Appsの負荷構造なのだ。
導入後も成長していくメールやファイル共有サービスの維持が負担になっている企業は多い。また、小規模企業はシステム投資の費用対効果認識がシビアで、それがないと業務が止まるとかいうような死活的なシステム以外への投資は後回しにされてきた。
Google Appsは、コストにシビアな小規模企業や公共団体から使われだすだろうが、そのうち、自家用車方式のライセンス型情報システムを過去のものに葬り去る契機になった、そ後に評価されるかもしれない。
また、私はかつてSaaS=ASP 2.0であり単なるバズワード(はやり言葉)に過ぎないといっていた。SalesForceの説明で納得できなかったので、このバズワード説は確かに今まではそうだったと思うが、Google Appsの登場で変わったと思っている。SaaSは、資源の共用化により、自家用車型情報システムを超えるサービスレベルを実現しうる、新たな企業情報システムのあり方として広まるのではなかろうか。
関連リンク
グーグル、企業向けサービス「Google Apps for Your Domain」ベータを提供開始へ
CNET Japan -
グーグルに聞く、企業向けサービス「Google Apps for Your Domain」の今後
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
櫻吉 on 2006/11/29
トラックバックをありがとうございました。
面白いと言ってもらえて嬉しいです。
自分の行っている様な内容を
誰も書いていなかったので、
ちょっと焦っていましたから。
時期が時期なので早く決まって欲しいという
思いがあるのですが、
なかなかうまくいかないので、
「まあ、こんなものさ」とマイペースにやっていこうと思います。
トモ on 2006/09/01
崖っぷちからの就活レポート
http://ameblo.jp/shuukatsu-motegumi/entry-10016462604.html
のエントリーが面白かったのでトラックバックさせてもらいました。
就職活動は、下手に早く決まってあせって公開するような会社に行くよりはなかなか決まらずあちこち行って見聞を広げておくのがいいと思いますよ。あまりあせらずほどほどにがんばってください。
多聞 on 2006/09/01
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将来のPC業界パワーバランスを書いている櫻吉です。
このエントリが非常に面白く、ためになりました。このため、自分のブログの中で、参考にさせていただきました。トラックバックもさせてください。