発明家エジソンは有名だが、起業家エジソンはそれほど知られていない。白熱灯の発明は有名だが、エジソン・システム(発電機と白熱灯の他に、電力計、地下導線、ソケット、ヒューズ、スイッチなどの設計、製造・安全性、経済性の評価など含めたトータルシステム)の独創性はすでに忘れ去られている。
「電球は光を与える、発電機は電流を生む。しかし、これらはそれだけが必要ではなく、電球は発電機の電流に順応しなければならないし発電機は電球が必要とする電流を与えるような性格をもつように組み立てなければならない。」これは、彼自身のシステムに対する思想を語る言葉の一部である。
かくして1882年9月4日、ニューヨークのパールストリートの発電所が操業を開始し、やがて6000個から7000個の電球を点灯するようになった。このとき、エジソンの発電所は、町の中心に置かれていたので「中央ステーション」となずけられた。中央ステーションから電気を供給するメリットは、電気の光を大衆に分け与えるという大きな利点があったし、パールストリートを選んだのも金融街の中心であり「ここに位置すれば電気料金の費用を負担できるレストランや商店に、客を引き寄せる手段としてこの新しい光が使われるだろう。また、このステーションはウォール街にあるから金融資本家や大衆投資家の注意を引くことだろうし、電力事業拡大のために、彼らはほかの場所にエジソンの発電所を建設する資金を提供して欲しい人たちであるから」そんな読みがあって、この地に建設されたのである。(中略)
この経験が生き、ウォール街の一流銀行の後ろ盾を得て、エジソン・エレクトリック・ライト社を立ち上げることができ、株式資本で30万ドルの融資を受け、新規公開株として株式市場に上場することができた。この頃、エジソンを巡るうわさは投資家の注意を引き、わずかな公開株に買い注文が殺到して、ある時点でエジソン株は、一株3500ドルという驚異的な値にまで跳ね上がった。
電力事業と計測の歴史 http://www.jeea.or.jp/course/contents/02102/
このパールストリート発電所は1882年に稼動開始して2007年に閉鎖されるまで125年間に渡って操業されていた(21世紀以降は変電所として稼動) 。
それはともかく、電球のその先に家庭用の電力需要(個人が個別にコントロールできる清潔で安全な電灯という社会ニーズにフォーカスした)を満たすための発電送電システムの構築を世界規模で構想し、実現したエジソンの気宇壮大にはいまさらのように胸を打たれる。
※交流直流を巡る電流戦争の結果はエジソンの敗北に終わる。また、上の記事を読むと送電方式だけでなく、電気料金徴収の仕組みに於いても、エジソン対ウェスティングハウスの闘いのあったこと(従量制対定額制)が記されていて非常に面白い。
ここで取り上げたエジソン・システムの華々しい市場デビューは言うまでも無くGoogleのいわゆる「情報発電所」に対する熱狂的支持をほうふつとさせる(ラリー・ペイジは相当のニコラ・テスラ ファンなのだとか)。
インターネット・プロトコルを「電気」と言い換えればグーグルの「サーチ」は「電灯(検索窓)」+「発電機(データ・センター)」に相当するのかも知れない。ところが、そのパラダイムシフトにはまだ終わりがないのだ。という指摘が、アンカテblogに述べられている。
がそれなのだが、この場合は「電灯(iPhone UI)」+「送電システム(AppStore)」と言い換えるべきか?もちろん今目前にあるiPhoneのUIとAppStoreのサービスだけを見てこの指摘を敷衍するのは相当難しい(※アンカテで触れられているのはiPhone UIではなくiPhone APIですが)。
ただ、少なくとも、タッチパネル+カメラ+マイク+GPS搭載のWi-Fiデバイスが、あのスムースなアプリケーション操作を通じて「外に出る」ことのその先はもう少し考えてみる価値がある。
たとえばiPhoneのGoogleMapsは非常に良く出来ていて、まずキーボードからキーワードを入れる必要がない。
なぜなら位置情報を取得して自動的にロケートしてくれるのでそもそもPCとは操作性が全く違う。ただ、それだけなら従来のGPSデバイスと違うことは無い。
でも、Push Notification Service を組み合わせれば、位置情報にマッチした情報の動的取得が移動しながら可能になるだけでなく、geotagのフィルタリング等をうまく活用できれば取得情報のパーソナライズも自在だ。
これからは、人が行く所にiPhoneがついていって、ネットのむこう側にいる人のアクションをトリガーとして、こちら側にデータが送られてくる。Push方式の「インターネット」だ。
移動体通信やそれとリンクした情報配信はカーナビやケータイで散々やられてきたことなのだけど、その情報配信とは(カーナビの場合は特に)パブリッシャーが契約者に配信する一方的な形態が主であり、一方、ケータイの場合ユーザビリティの制約や情報編集メカニズムの未成熟もあってCGMの萌芽がビジネスベースにまで成長し切れなかった。
iPhone+AppStotreの先にある情報送信メカニズムのキーは「向こうからやってくる」イメージだ。
こちらからキーワードを選定して検索窓に入力→返ってきた情報を吟味してさらにキーワードを修正→再度検索結果を吟味・・。PCユーザーはその操作プロセスに慣れ切っていて、その恩恵も非常に大きいため、かえってそれ以外のコンピューティングへの想像力が閉ざされてはいないだろうか?
iPhoneを触っていて感じるのは「もうキーボードもキーワードもいらない」という設計者のメッセージだ。iPhoneではYouTubeでもほとんどキーワード入力を行わなくても操作できるように配慮されている。
そして、この操作感覚がiPhoneに対してノンPCユーザーが強く反応するポイントなのだ。きっと、この操作感覚はAppleの強力なSDKを通じてウィルスのように伝播するだろう。しかし、その操作性のみにiPhone UI+AppStoreの可能性を見切るのは時期尚早だともいえる。
本質的に重要な“データが向こうから飛んで来る・・”情報送信メカニズム。この操作体験を明示的に実装したアプリケーションはまだ存在しないのだ。
もちろん、優れた使い勝手や美しいデザインはiPhoneの普及を当然促進するだろう。ただ、それは「電灯の普及」という電化生活の入り口の光景に過ぎない。
エジソンの目的は照明を普及させるためには、ガス産業を手本にした電気照明システムを作りあげることであった。ガス灯以上に明るく、酸素も使わず、火事の危険もなく、壁も汚さない照明を目指していたのである。
電力事業と計測の歴史 http://www.jeea.or.jp/course/contents/02102/
<続編に続く・・かも知れません>
※補記:iPhone対応のGoogleMapsとYouTubeがAppleによって開発されていることは案外知られていないのですね。
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了解です!超鉄大帝まだ読んでいないのですが気になってます。と、いうかテスラ関係は興味が尽きません!