■mixiが買収すべき企業とは?
ちょっと「象徴的な」言い方をすると、mixiはそのポートフォリオとしてふたつの企業を買収するのがいいと思う。
そのひとつはTwitterで、もうひとつはPayPalだ(※1)。
さて、どうしてそのようなポートフォリオが望ましく感じるのかと言うとmixi利用上最もウザいと思っているのが、
1) 日記連続投稿
2) スパムコメント
だからである。
連続投稿は「日記」というmixiのコンテンツ縛りからするとどうしても排除されがちなノイズなのだけれども、それを強く希求し、嫌われても敢えて続行すると言う強いウォンツが認められる。
そして、それられがTwitter、Tumblrなどのマイクロブログ系のサービスによって顕在化しているのはご存知の通り。
また、忌まわしいスパムに関して言うと、これもmixiの利用規約縛り(商用利用の禁止)の当然の帰結として未だに激しく忌諱されている(※2)。
ところがPersonToPersonのネットワーク性を商用利用したいというニーズが非常に高いのも明らかで、残念ながらそのニーズに対しては従来レガシー的な広告出稿の受け皿しかなかった。
しかし、昨年後半、特にFacebook界隈で起こったソーシャル形の広告(まさにSocialAdというネーミングの商品も存在する)は、そういった反レガシー広告の先鞭をつけるものだったと言える。
ある種の商用利用に関してはオーソライズしてしまい、コミュニティ内の経済循環に接続可能な「マネタイズの仕組み」をデザインしない限り、スパムは永遠にスパムのままでしかあり得ない(※3)。しかも、アンチ・スパムという負の経費負担(付加価値を生み出さないコスト)の存在も無視できない。
冒頭に挙げたTwitterとPayPalは、それらの二つの需要(マイクロ・コミュニケーションとマネタイズ≒マイクロ・ペイメント&マイクロ・アド)に「象徴的に」対応している(ここで“象徴的に”と言うのは、これらに代表される類似サービスでも代替し得るし、実際には関連性のあるサービスなども込みで=ポートフォリオとして検討する必要があるため)。
つまり、Twitterはコミュニケーションの裾野を拡げ、PayPalはマネタイズの選択肢を与えてくれる。
■クローズドの美徳と機会損失
実はあまり表に出て来ないことなのだが、mixiはその成長の過程でずっと“鋼鉄の処女”とも言うべき閉鎖主義を貫いてきた。
mixiが描き出すソーシャルグラフは今まで多くのベンチャー企業を刺激し続けてきたし、価格比較サービスやユーザー間オークション(※4)、個人間与信管理、ピアプロ系のコンテンツ・マーケット、ソーシャルグラフを活用した人材紹介サービスなど、mixiインフラ上で形成可能な新サービスはmixi以外の企業によって様々に企画検討され、ことごとく拒絶されてきた。
そういう意味では、mixiはそのサービス構成のみならず企業スタイルに於いても、ずっと2.0的ではなかった(だから悪いとかそういうことではありません※5)。
それはソーシャルグラフを拡大している最中のmixiにとっては、「為すべきことへの集中」として幸いしたし、「無為によるコスト圧縮」は財務状況を大いに改善した。現に決算期の報告内容を見てみても資本金は投資活動等には用いておらず、現預金は潤沢である・・的な言及が多い。
ただ、mixiは既に「自らによって自らの枠組みを書き換える」ことが困難になってきているように見える。それは“イノベーションのジレンマ”という言葉でほぼ説明可能だと思う。
だからといってmixi生態系ともいうべきソーシャルグラフを拡張・拡充し得るベンチャー共同体(※6)を形成するには、現状のmixiへの市場評価は余りに冷え込んでしまっている。
直近のmixi財務諸表をみると純資産合計は約87億円。これでは本当に価値のある企業買収には挑めないだろうし、生態系確立のための開発者基金的な投資にも一つ桁が足りない気がする。
そうすると、外資(マイクロソフト買収後のヤフー!や百度※7などが妥当では?)にいかに高く売り抜けるのか?こそがmixiにとっての懸案事項になるだろう(だが、それが見事に実を結んだ時には株主にとっては大いなる福音になるし、経営陣にとってもそれ以外の解法は既に残されていないように見える)。
※1
Twitterはデジタルガレージが出資済みなのだけども、TechCrunchが既に鋭い読みをしている。つまり、DGはドコモへの将来的実装を意図しており、今回の出資はそのための先行投資なのだと言う。マイクロ・コミュニケーションはiPhone以降のケータイにとっての生命線になるのかも知れない。
また、PayPalはeBayの子会社なのだけど、マイクロペイメント系のサービスで優れたものは未だに豊富に存在しているので買収相手先には事欠かないだろう。ペイメントを握ることがいかに肝心なのかは、i-modeの事例を見るまでもない。
しかも、mixiのソーシャルグラフは元来相互与信的な仕組みだったのでマイクロクレジット的なサービスにも向いている。
※2
規約縛りの帰結という表現は本当は「商用利用の禁止ルールのままではソーシャルグラフを対象としたビジネス・ニーズに対応できない。だから本来存在したPtoP的なマネタイズ欲求はスパム的なノイズにしかならない」とすべきかも知れない。
※3
Facebookの先鋭的な試みには、常に新しい広告メカニズムとソーシャルグラフとの結合に向けた深い洞察を感じる。
新しい広告メカニズムとは常に激しい嫌悪と隣りあわせなモノなので、ああいったアプローチが大変な物議を醸しながらも許容ラインを可視化していくダイナミズムには学ぶべき点が非常に多い。
国内ベンチャーに欠けているのは、そういった外部的ダイナミズムを内部に取り込んでいく意欲と力量かもしれない(ケータイ系のモバゲーとニコニコにはその貪欲さを感じる)。
※4
かつてeBayが華々しく散ったことを思い返す。mixiのインフラなら、あの絶大な商品ネットワークと決済サービス網を着実に日本の文化風土にインプリメントできたかも知れない。といってもeBay撤退とmixi成功の間のタイムラグはそれをただの夢想と断定する程に間が空きすぎているのだけども..。
※5
ミクシィがイーマーキュリーだった頃、オンザエッジと共同で立ち上げた分散型のオークションサービス(イーハンマー)など、Web1.0の時代にも関わらず2.0的とも言える外部ネットワーク的なサービスを手がけているのです。
※6
ソーシャルメディアの集合体は、たとえばこういったイメージでシンセサイズされる。ソーシャルグラフをどのようにデータポータビリティの文脈で再編集・再編成可能に仕立てていくのか?については、まだまだ未開拓の領域だ。
http://zen.up.seesaa.net/SocialMediaInformationFlow.JPG
※7
NASDAQ上場企業 百度(Baidu)の時価総額は11.87億ドル(≒1.4兆円)なので、ミクシィは時価総額的には百度のほぼ10分の1程度に過ぎない。しかも、ミクシィ株式は最盛期の44%程度の時価へと右肩下がりのグラフを描き続けている。
2007年の世界主要企業の株式時価総額は、上位500位までの社数で中国勢が日本勢を逆転した。2007年末の時価総額上位500社(ドルベース)を国・地域別に見ると、中国・香港企業が計44社と2006年末比で倍増し、日本の40社(8社減)を上回った。日本株を売って、高成長が見込める中国株に乗り換える海外投資家が相次いだ。
2008年1月13日のニュースより
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