あけましておめでとうございます。CNETブログネットワークは2008年も非常に活性化しているようですね。
今年の初投稿ですが、昨年末の私的録音録画小委員会で提出された「DRM(デジタル著作権管理)普及による新しい私的録音録画の未来像」に触れつつ、DRMを巡る状況の推移を整理してみました。
それにしてもiPodで聴く初音ミク、実にいいですねえ..。
■DRMの棺おけに最後の釘が!? (米国)
TechCrunchによると米国四大レーベルのうち唯一DRM(デジタル著作権管理)フリー楽曲の提供をしていなかった(どころかコピーコントロールCDにRootkitを仕込んで訴訟問題を引き起こしたという悪しき前例のある)Sony BMGがようやくDRM撤廃に向けて動き始めたようです。
まだDRMのハンデ無しに楽曲を提供していない4大レーベルはSony BMGだけ。残る最後の1社が撤廃に動くことで、DRMの棺おけにも最後の釘が打ち込まれることになる。
かと思えば、2007年12月18日に開催された文化審議会 著作権分科会(私的録音録画小委員会)の第15回会合では、DRMの将来的な進化を視野に入れた新しい法制度を議論するための検討資料が提示されています。
■DRM管理による私的録音録画の廃止??(日本)
その内容は、概略としては下のような内容です。
「DRMが普及すれば補償金は不要では」「いや、補償金は必要で、課金対象も拡大すべきだ」――こう着状態にあったこんな議論に、一定の方向性が見えた。
文化庁が「DRMが普及し、補償金が不要になる20XX年」のアイデアを提示。小委員会の議員はおおむね賛同した。
具体的には、下のように私的録音録画が全てDRM管理に移行した20××年の将来ビジョンを提示したものです。
この資料では、娯楽目的の私的録音録画について、デジタル著作権管理(DRM)が広く普及することを視野に入れ、それが実現する過程で目指すべき法制度のあり方を示した。事務局である文化庁 長官官房著作権課が作成した。
この中で、将来的に著作権保護技術が発達・普及した段階で、(1)私的録音録画補償金を廃止し、契約ベースでの対価支払いに移行する、(2)娯楽目的の私的録音録画を、著作権法に定められた私的複製の範囲から除外する、(3)DRMにより一定回数・方法でコンテンツの複製が認められている場合、その範囲内であれば権利者がユーザーに私的複製を許諾したものとみなす、(4)タイムシフトやプレイスシフトもいったん第30条の適用範囲から除外するが、こうした利用形態を無許諾・無償で認める規定を再度作ることも検討課題としておく、といった内容を盛り込んでいる。
要するに、これは「私的録音録画」を著作権法から排除する代わりに「録音録画補償金制度」も撤廃するという、ある種の妥協案のように見受けられます。
従来著作権法で認められてきた「私的使用を目的とした録音録画」を許容しない代わりに、全てをDRM、つまり権利者と利用者の間の「契約ベース」に移行するというのはかなり思い切った構想提案だと思うのですが、この会合を伝える報道記事を読む限りでは権利者側だけでなくメーカー側も賛成のようです。
メーカー側は、課題の多い現行の補償金制度を廃止し、DRMと契約をベースにした対価支払いに移行することを一貫して主張。
これに対し権利者側は、DRMと契約をベースにした法制度に現時点で移行することは困難として反対しており、当面は現行の補償金制度を維持・拡大することを主張している(「DRMが普及したら補償金廃止」――文化審、大詰めの打開策より)。
■DRM救世主説は一挙両得プランなのか?
著作権利団体側とメーカー側との利害調整という意味では、
(1) 権利者は確実に権利対価を徴収できるうえに不正利用をメカニカルに管理できる仕組みを無償で獲得することができ、
(2) 従来はメーカー負担となっていたとされる(これはそう言われているという程度のことなのではっきりした資料はありません) 私的録音録画補償金の負担から解放される。
という一挙両得の「助け舟」と言えそうです。
ただ、利用者としては私的複製の是非だけでなく、複製回数やタイムシフト(時間をずらしての視聴)、プレイスシフト(場所を移しての視聴)までも個別の契約ベース(実際にはDRMによる管理と課金)を求められるわけですからネットの“自由の恩恵”は、むしろかつてない“不自由な制約”に変貌を遂げてしまいそうです。
果たして、私的な録音録画の廃止と私的録音録画補償制度の廃止とは「等価交換」できるものなのでしょうか?
■DRMを解放すべし!(仏)
さて、この提案内で将来の解決策として期待されている「DRM」について、かつて文化庁とは大きく異なる態度を表明し、DRM公開法案を承認していたのがフランス議会です。それは、いわば反DRMとでも言うべき立場でした。
フランスの立法機関は火曜日、Apple の iTunes ミュージックストアや iPod を支える独自フォーマットの開示を迫るオンライン著作権法案を承認した、と Associated Press が伝えている。
この草案は、音楽の海賊行為に対する新しい制裁措置も盛り込んでいるが、Apple Computer Inc. や Sony Corp.、Microsoft Corp. に対して、独自のコピー対策テクノロジー (DRM ソフトウェア) を開示するよう強制し、ライバルが同等のサービスやプレーヤーを提供できるようにするものだ。
Silvervineの定点観測 フランスの立法機関が Apple の iTunes や iPod を脅威にさらす法案を承認
フランス議会の場合は、個人の選択自由を担保するためにAppleがiPod、iTunes、iTunesStoreなどの生態系で採用しているDRMを解放して相互運用可能に(つまり、オープンに..)するべきだという判断を下した訳です。
■DRMの自由を巡る闘い
この法案は06年の6月に議会を通過したものです。
DRM技術(実際にはApple QuickTimeのFairPlayがターゲット)を公開して相互運用可能にすべし..という法案の趣旨はマイクロソフト裁判(マイクロソフトへの制裁金、史上最高の6億1300万ドルに--EU裁定下る)やグーグルのダブルクリック買収問題(欧州委、グーグルによるダブルクリック買収について調査開始)に見られる市場独占の弊害に対する政治の介入と言えそうです。
そして、フランス流の、個人による選択の自由を常に優先的な検討課題にしてきた伝統の現われだという見方もできると思います(競争の自由を担保すると言う点では、市場の独占抑止も消費者による選択肢の担保もそのスタンスは同じか?)。
フランスの与党で保守派の国民運動連合(UMP)の議員5人が提出した主要な改正案の1つには、「相互運用性が保証されなければ、われわれは顧客の囲い込みや反競争的な状況といった重大な危険にさらされ、結果的に消費者を人質に取られることになる」との注記がついている。
音楽フォーマットの独占的利用を禁じる法案、フランスで審議 WIRED VISION
現実にはこの法案は大いなる妥協を強いられてしまい、審議当初法案が志向したようなDRMの自由(オープン化)は実現されていません(フランスiTunes DRM公開法、緩和へ ZDNet Japan)。
非常に長いので、前編・後編に分けました。後編に続きます・・。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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