■2010年のWikipedia(「禁ダウンロード法」)について..
『2010年のWikipedia』ネタは、これはこれでまた改めて使える方法なのでは?という気がしつつ(仮想事典を試験的に一部分だけ書いてみることで、設定資料から考察を進める..的なアプローチが可能ですね)、 でもはてブを見てみるとことごとく「ネタ」のキーワードが貼り付けてあってちょっとガッカリしたり・・(苦笑)。
確かに本物のウィキペディアとの混乱を避けるために“ネタ”であることは敢えて強調したエントリーではあったのですが、その実、書き手として考えられる範囲の近未来を(ひどく諧謔的ではありますが)真面目に書き記したエントリーだったのです。なので、多少の補足をさせてください。
すごくシンプルに考えても、この場合の“違法サイト”“適法サイト”を判別して周知する方法は非常に問題が多い筈です。その「基準も方法」もまるで見えているとは思えません。
それに、例えばPSE法の事例などでも(これも最初に識者などによる反論異論が多数存在した)散々業界混乱して消費者が右往左往したうえで、『実は準備不十分でした。多大なる迷惑をお掛けしてしまって申し訳ありません』なんていう情けないコメントが事後になって出てくる始末ですから、お役所のすることには間違いが無いとも思えません。
■著作権法の改正って、このままの進め方でいいのだろうか?
もちろん、なんちゃら陰謀説のような論には“ヤレヤレ参ったな”と思いますし、国際間競争論的なナショナリズムにも辟易します。(国際的な産業間の競争とは相対優位の考え方に照らし合わせて考えれば基本的には国際間の分業システムと看做すべきで、弱肉強食的なゼロサムゲームではない)ですが、わざわざ競争インフラが最初から(相対的に)低い位置で国際市場に乗り出そうとするのも余り意味の無いことだと思います。
でも、ネットコンテンツの流通促進という観点からビジネスの取り組みを考えるのであれば(弊社はそういう立場です)公的インフラ、特に著作権法も含めた知的財産運用構造の改善(あるいは改悪)は抜き差しなら無い問題です。
しかも、少なくとも国内で営業をする以上は国内法の縛りを避けられませんから、いずれにしろ他人事ではありません。場合によっては死活問題です。
ところが、現実には、権利者団体サイドの権利者保護という大義名分を繰り返すに過ぎない議論(?)に、延々時間ばかりを掛けているように見受けられます。「時間=コスト」・・とは、どんなプロジェクトであっても基本的な考え方だと思うですが。しかも、実際的にはこの議論には約2年間が費やされています。
■すごい会議? 短期間に官庁が劇的に変わる・・と、いいですね。
たとえば「会議の設計」という観点から考えても、アジェンダ(議題)と参加メンバーの選択・準備の段階で、まず想定される結論・・とまではいかなくても、考えられる議論の方向性やその中でのバランスオブパワーなどは最初からある程度デザイン済みの筈です。
ですから、この間のパブコメ募集以前に、会議の準備と運営という段階でかなりのところまで落としどころが想定されていたと見るべきでしょう。
もしも、どういった戦略構想のもと、どのような会議をデザインするのか?まで含めて管轄官庁の仕事なのだとすれば、“著作権法も含めた知的財産の運用をいかに国際的水準以上に高めていくのか?”的なデザイン感覚が不可欠なのだと思います。
あるいは、そこで参加されるメンバーが、いかにより高度な意見を相互作用的に提出することができるのか?という、一層付加価値の高いモデレーションができれば、会議で議論を重ねていく意味合いも十分にあるでしょう。
果たして検討委員会にすごい会議を求めるのはヘンで要請なのでしょうか?でも、人知と経費を投入して知的財産権の運用上大切な法改正を議論するにあたって、そのような創造性が持ち込まれるのは(本来であれば)至極当然のことだといえないでしょうか?
■議論の再整理として読み直したい..「ダウンロード違法化はグーグルの一極支配を加速する」
前回のエントリーでネタ元にさせていただいた「ダウンロード違法化はグーグルの一極支配を加速する」に再度触れますと、今回のダウンロード違法化の議論のためのテーブル自体がそもそも妥当なのか?という疑問があるわけです。
結局、日本の政府は業界の業界による業界のための政府であって、業界というものが存在しない所は見えてないし関知しないということだろう。
ただこれは、談合とか癒着とか既得権益の保護という話ではない。日本人の意識の中に「オオヤケ」はあるけど、public という概念がない。政府はむしろその意識を民主的に反映して「オオヤケ」を体現した業界というものを通して統治するスタイルを徹底させているのである。
IBMは日本のハードベンダーと競合していたし、マイクロソフトは日本企業にパソコン用のOSを供給していた。過去の黒船は、何らかの形でどこかの業界と接点を持っている。業界から情報収集していれば視界に入ってくる黒船だ。
それに対してグーグルは業界を一切作らない企業だ。グーグルは public な所だけで企業活動をする。だから規模がいくら大きくなっても日本政府には見えないのだ。
業界を通してグーグルが見えてきた頃には、全てが終わっているだろう。
これは、もうあちこちで指摘を重ねられていることですが、そもそも産業構造や競争構造、あるいは資本主義制度や会社組織論などが大きく変化を遂げつつあります(「過剰の経済学」はその最たるものではないでしょうか?かつては「希少の経済学」だったとすれば)。
特にデジタル・ネットワークのコストレス構造、なかでも金融資本や人材、そして知的労働の分散化・流動化は、劇的に「資本と労働」システムを切り替えつつあります。
■フレームワークが固定しているのは仕方が無いこと。でも、それを変えなければ駄目なのでは?
そうしたとき、上の指摘にあるように「行政指導」によって、「業界団体」が、内部調整しながら「国際競争」を闘っていくというプロセスそのものが陳腐化をしてしまっている。
だから、本来であれば奨励されていても可笑しくは無い新しいアーキテクチャーやビジネスモデルがどんどん切り捨てられることによって、(本当はその後の未来を導き出したかも知れない)新産業の芽が次々摘まれていっている。
それには、「業界」という前提そのものが無意味化しつつあるにも関わらず「業界」秩序内の刷り合わせ、利益配分の調整を繰り返すほか無い官庁が、旧来の意識のままでこの様な重要課題を取り扱っているということが原因のひとつとして考えられると思います。
アップルのパブコメ引用が“煽り”記事だとはてブのコメントに書いてあったのですが(汗)、あれがアップルのコメントかどうかの真偽とは別に、そもそも「本当にこの会議運営でいいのか?」「著作権改正のアジェンダ(検討課題)って、本当にこの設定でいいのか?」っていう段階の議論が、実は、改めて必要なのではないでしょうか?
そういった意味では、あのパブコメは再度読み直しても十分に意味があると思います。だって、既得権益保護を一生懸命頑張られれても、もしかすると新産業育成に於いてはマイナス効果しかなかったりする訳ですから。
しかも、恐ろしいことに管轄官庁や委員会(の権利者団体メンバー)は「正しいことを真面目にやって汗を流している」ことを疑わない。
本来、組織の合目的性は所与の環境要因が変わった際に見直されないといけない筈です。でも、それは、どうやら大変困難なことのようです。。じゃあ、どうすればいいのか?これを真面目に考えるべきときだと思います。
望ましいアジェンダについては自分自身も考えてみたいと思います。
■CNETブログアワード2007について御礼申し上げます!
最後になりましたが、CNETブログアワード・準グランプリという栄えある賞をいただきまして、本当にご支援いただいた皆様には厚く御礼申し上げます。
ずっと書いている割には相変わらず読みづらく 自己中心的な(好きなことを好きなように書いているだけなので)ブログではありますが、このようなご評価をいただけると正直凄く嬉しいです。
これからもますます叱咤激励いただければと存じます。
参考書籍:
ご存知の方も多いと思いますが、良著ですよ。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
尊仁 on 2007/12/27
アメリカがこれほどオープンにしているのに、日本政府やメディアが知らんぷりというのは、あまりにも国民を馬鹿にしているとしか考えられません。アメリカがこんな要望を出しているぞ、日本政府はどうするんだという声があってもいいはずです。ソウじゃないとアメリカのシナリオどおりに政府は動いているなと思うしかありません。
mugendai on 2007/12/27
MIAUのシンポジウムでも「外圧」という言葉が出てくるのですが、米国政府要望書にここまで明示的に記載されていると思わず仰け反りますね。
(日本からすると)マイナスの非関税障壁と言いますか・・・国際競争力をわざわざ低下させるような施策の動機付けがこういうところにあるとすると相当寒いですね。
恐らく、今回の違法化の及ぼす影響はコンテンツ業界に限らないと思います。そして、文化庁がその影響度と深刻さを理解しているのかさえ怪しいのが現状ではないでしょうか?
総務省が進めている健全サイトフィルタリングも同じような逆方向の施策ではないかと感じます。
http://it.nikkei.co.jp/mobile/news/index.aspx?n=AS3S0702L%2007122007
尊仁 on 2007/12/27
尊仁さん、こんばんわ。mugendaiです。初音ミクと違法ダウンロード問題は尊仁さんに任せようと思ったんですが、「アメリカ年次改革要望書」(日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書)にすでに書かれていることを知って、思わず「著作権者のいらだち」というタイトルで書いてしまいました。一度ご覧ください。(http://japan.usembassy.gov/pdfs/wwwfj-20061205-regref.pdf)これほどストレートに書かれていると、思わず笑ってしまいますから。
mugendai on 2007/12/27
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国際競争力を巡る政治学者、経済学者、官僚、知識人の見解や展望は相当バラエティに富んでいるように思います。
ただ、グーグルスフィアとも言うべき現在のウェブワールドとどう向き合うか?というオピニオンはまだまだ形成されておらず、とにかくその動きを追いかけるのに精一杯というような状況でしょうか?
ケータイサイトの健全化問題もそうなのですが、すぐ規制で業界を縛ろうという思考スタイルは非常に根強く、そうそう変わらないのでしょう。その間にも米国どころかアジア圏でもますます後退しそうですね。