前編からの続きです..(長いので前後編に分けました)
■「時間争奪」のメディアアーキテクチャー間競争について少しだけ考えてみる
ですから、「プロアマ競争」議論以前に、「メディア=アーキテクチャー間の競争」があるのだという議論の土台に立つ場合、そのアーキテクチャー間(この場合はプロ=パッケージ流通中心のプレイヤーと定義可能かも知れませんね)で何を争奪しているのか?という問いかけが可能になります。
そして、突き詰めていくとそれは「時間」の争奪だと言えはしないでしょうか?
・「創作者=生産者」の時間獲得
・「利用者=消費者」の時間獲得
この2点に於いてニコニコが既存音楽産業に対してある程度のアドバンテージを発揮し始めている(キャズム論に照らして言うとアーリー・アダプターとアーリー・マジョリティーの間の溝に差し掛かっているあたりか?)ことが、現時点での「プロアマ」議論にも繋がっているのではないか?という印象を持っています。
そして、以前参照した岸氏のコラム内にあった「所得機会の損失」という問題点の指摘(デジタルネットワークがプロのコンテンツに対して所得機会の損失というダメージを与えている)についてもう少し敷衍すると、現在ネットで活動的に創作を行っているアマチュア作家も、実は「(潜在的な)財の獲得」にチャレンジしていると考えられるのではないかと思っています。
つまり、「所得機会」といっても経済活動の様々なスタイルとスパンがありますから、「パッケージの製作」がそのまま所得機会に結びつくような場合もあれば(例:アドバンスと言われる前払い金とか、受注業の場合は製作料金、給与所得者の場合は給料など)「プロトタイプを延々作っていくなかで市場化可能なコンテンツが発生する」ような“ロングノーズ”な場合もあります(※ロングテールは通常パッケージング以降の消費分布を指します。で、パッケージ化以前のゆるやかな潜伏期間をロングノーズと呼んでみました)。
ただ、よくよく考えてみれば知的財産というのは直接直近に所得機会が訪れるものばかりではありません。特許権のように潜在的なポテンシャルは大きくても収益獲得まで相当時間の掛かるような財産権は多いのです。
イメージとしては新興企業のプライベートイクイティ(理論価値はひたすら怪しい)とか、現代アート作家作品をギャラリーが先物買いするケースなども近いような気がします。
■ブログ圏はその新しいアーキテクチャーの変動をどう捉え、どう言語化していくのか?
そもそも音楽出版だって(書籍出版と同じく)多くのコンテンツは最初からどんどん収益化できるものばかりではありません。ですから、矮小な所得機会議論はコンテンツの創造と収益化を考える上で余りメリットがある議論だとは思えません。
それより、むしろ、
・生産様式:多くのアマチュアが隙間隙間の時間を縫って創造している、生産行為および付加価値の「束」
・消費スタイル:それを支えている膨大な受容サイドの隙間時間の「束」 。そして、その受容サイドにしても「コメント、タギング、ブログなどでの批評行為、アフィリエイト・ネット等を介した流通網への参加」など、従来型の単なる消費者像では捉えきれなくなってきていること。
・アーキテクチャーの変遷:そして、それらの行動を陰ながら支援しているメディア・アーキテクチャー(およびアーキテクチャー間の競争状態) の変化をどう捉えるのか?
を見据えて議論していくほうが、「旧来メディアの衰退を新メディア登場のせいにする」議論よりもよほど建設的だと考えます。
「今目の前にある現金収入」ではなくても、「今は自己投資に過ぎないのだけど、やがては現金収入になるかも知れない価値のあるもの」に向かうには、「適正に設計されたアーキテクチャー(暇な時間は限られている)」と「それほど大変ではない参加ハードル(著作権者としての覚悟?本当に必要なのだろうか?)」が、まずは必要なのではないかと考えています。
ケータイ小説作家は「書きやすさ」を重視しますし、ニコニコ職人にとっての匿名性は(プロ職人も含めて)参加性を高める一要因になっているように見えます。
そして、ニコニコとケータイ小説が先鞭をつけたこの分野はまだまだポテンシャルを有しているでしょうし、さらにこのビジネスモデルを先に進めるメディアビジネスがこれからもどんどん出てくる筈です。
そのときにも、まだ相変わらず「デジタル対アナログ」「プロ対アマチュア」の素朴な議論にとどまり続けるのか?それとも、より新しい創作環境と経済基盤についてより一層踏み込んだ議論が出来ているのか?これは、ちょっと大げさに言うとブログ界隈にとってもひとつの試金石のような気がします。非常に自己言及的ではありますが。
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