■2007年の「写真新世紀」が気が付いたときには終了していた件
2006年の「写真新世紀」はちゃんと会場で作品を見てブログを書いたんですけど、2007年はそもそも審査が終わってしまってから公開審査会が先日(11月25日)あったことに気付いた位で、我ながらフォローの甘さにたじろいでしまいます。
フォローと言っても、実は写真新世紀そのもののフォローというよりは昨年のグランプリ受賞者の高木こずえさんの個展がフォローしたかったというのが本音です。・・と言っても、実を言うと、昨年の受賞時のブログ界隈の反響は悲惨なものでした。
「目新しくない」「薄弱な視点」「思い付きレベル」などなど。ちょうど、本城直季が木村伊兵衛賞を獲った直後のような非難のオンパレード。視点や手法が既にあったからといってあそこまで叩くのは正直どうなのだろう?と思うのです。
極端なことを言うと「決定的瞬間(=ブレッソン)」にしたって、「タイポロジー(=ベッヒャー)」にしたって、そこから多くの表現の系譜を生み出している訳で、それこそ「日常写真」などは現在の写真の原型のひとつ「カロタイプ」が発明された時点で発明者自身の手によって試みられています(タルボット「自然の鉛筆」=世界初の写真集とも言われていますね)。
でも、本当の問題はアワードおよび批評も含めた写真市場を支える環境の問題なのではないかと感じます。アワードは賞を与えて、1年後のグランプリ受賞作家による個展をフォローするだけですし、受賞作家の表現を継続的に支えていくギャラリーや批評のシステムとはほとんど切り離されています。
それに、前回の受賞時にも審査員側からそれなりにうなずけるコンテクスト(写真表現の歴史的文脈への言及)があった訳でもなく、それがこの先どのようにして新しい文脈を育んでいくのか?の展望も聴くことはできませんでした。
つまり、その時点、その空間に於ける「お祭り」でしかなかったということだと思います。
■表現と批評のリサイクルが無いことの問題点
アワードというのは、本来その授与そのものに価値があって、いただくほうは「有難い」。その賞の授与を通じて優れた作家を顕彰することで、さらに新しい才能が刺激され、より一層シーンが盛り上がる・・と、ポジティブに見ればそうなのですが、その実、本当は授与する側にも一定の責任があるように思います。少なくとも、「あげっぱなし」はどうなのだろうか?と。
現在、写真表現は「個人のまなざしの率直な提出」という「素」の状態だけで意味を持ちうるのかというと決してそんなことはなく(であれば、すべての個人写真に等しく価値があるという結論になってしまわないだろうか?それでは賞を選考するという行為そのものが無意味化してしまうでしょう)、一定の歴史的文脈の理解とそれに基づいた新しい価値観の見極め・言語化が不可欠だといえます。
であれば、その審査は単なる個人的信念や価値観の表明というよりは、より大きな(パブリックな、美学的な意味での)歴史性の解釈・評価・提案が表明されるべきではないでしょうか?
望むらくは、その歴史的評価の連続を蓄積していくことによって新しい展覧会を企画したり、一定の企画意図をもとに作家活動を応援したり・・という言語化→視覚化→公開→批評→言語化・・という表現と批評のリサイクルを繰り返していくことがもっとも求められるのではないかと思います。
■怒りのエントリーにはシンパシーを感じます。
高木こずえさんの新作は残念ながら見逃してしまいましたが、ブログなど検索し直してみても結局去年のブーイング以上の言説は出てきませんし、あの「捏造された双子(双子のモチーフはアメリカの女流作家ダイアン・アーバスが提出した歴史的にも重要なモチーフです)」についての、より深まった言及は見受けられませんでした。
作品の言語化、そして歴史性への接続とは日本の写真界が苦手とするウィークポイントなのかもしれません。ですが、その繰り返しを経なければ、結局のところ「好きか嫌いか」の気分以上の作品理解や批評行為は難しいでしょうし、その言語化メカニズムがないところで、ある程度の客観評価を担保した市場メカニズムの構築も難しいのではないでしょうか?
そんなことを(2007はまったく見ていないにも拘らず)つらつらと書いてしまったのは佳作受賞者の西澤諭志さんのブログを読んだからです。
僕がいろいろ書くよりも、彼の怒りのエントリーを読んでいただいたほうが、その問題意識は伝わりやすいかもしれません。・・もちろん、「不満だったら自分でやれ!自分で自分名義の賞が出来上がるくらい活躍してみろ!」の批判はアリだと思います。実際、こうして怒りを抱えることによって彼はさらに先に進んでいる気がします。それに、その賞を獲らなかったからこそ今がある・・みたいな出来事は珍しくないのかもしれませんし。
写真新世紀の公開審査というものを初めて見たけど、審査会ってこんなぐだぐだでいいの?何の企みもなく、好みの問題だけで審査をしようとするレギュラー審査員のやる気のない態度に、怒りを覚える。「こいつら、いつか絶対ぶっつぶす」と呪いの言葉を審査中ずっと念じていた。彼らは作家としては、俺も写真集だって持っているわけだし、疑いも無く立派かも知れない。だけど写真新世紀や審査員が、何らかの後押しでもって受賞者をプロデュースする等の後見をするわけでもないのに、何となく気分で選ばれた、下手すりゃまぐれ当たりみたいな作品を選んだところで、どうやって新人が育つんだよ。お祭り気分で選ぶ無責任な態度には、出品者として本当に不愉快だった。審査員は彼らを選んだ事に対して、誰も責任を取るつもりもないし、これまでの審査を顧みるシンポジウムなんかも開催しない。ここ数年のグランプリ受賞者の個展を見ろ。1年間、彼らが金銭的な協力しか受けてこなかったのがよくわかる。だから、これでどうやって「写真新世紀」なんて名前に相応しい新人が育つんだよ。
ブログ「荒地」 より 「写真新世紀2007東京展」の一部を引用
去年の記事:
捏造された双子たち 写真新世紀のグランプリが決定
http://japan.cnet.com/blog/takahito/2006/12/04/post_cc4a/
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