■「テレビの座を奪う日は来ない -- ひろゆきの分析」のクールさ
フォトグラファー向けの実践的flickr活用法(=コミュニケーションを通じて自動的にポートフォリオを組織化できるflickr)を書いていたら、ThinkPadの「ページを戻る」ボタンで全消失してしまいましたorz。
それはさておき、CNETの記事「ニコニコ動画がテレビの座を奪う日は来ない--ひろゆきの分析」は非常に興味深い記事ですね。 状況分析としても事業構造の将来見通しとしても相当妥当な内容だと感じました。
で、分析の分析をするほど突っ込み所がある訳でもないので(どころか、冷静過ぎる分析と絶妙の発言ポジションニングに納得+感心)、ここでは余り述べられていない「ニコニコの本質的な競争優位性」について少しだけ考えてみたいと思います。
■1600年代のグローバリズムとビジュアルイメージの変革
この間、国立新美術館に出かけてフェルメールとオランダ風俗画のコレクションに触れてきました。
これらのコレクションに描かれているのは「家庭の台所で家事などに勤しむ女性」のポートレートなど、当時のグローバリズム牽引役=新教国オランダのブルジョアジー階級が(従来教会などで触れてきた荘厳な宗教画とは大きく異なった)「俗的な生産あるいは消費、遊興や余暇」の様子などです。
今から眺めても充分モダンだなあと思える、「ペットとの戯れ」とか、「居間での休息」など、従来は教会=大型スポンサーが公共の場で不特定多数に向けて(宗教的感化のツールとして、重々しく)公開していた聖像群に比べると実にパーソナルでポータブルなタブローの数々を眺めていると、「なるほど急速な経済成長期とはそれまで無かった自由な私的時間と私的空間が可能になる、大いなる変革期なんだなあ・・」と感心してしまいます。
教会の巨大な聖像に比べるとタブローというのは非常にコンパクトですし持ち運び可能ですから、すでに写真の可能性がそこに開かれています。また、少なくともそこに描かれている人たちのパーソナリティは基本的な部分で現在の我々とそんなに大きくは異なっていないように見えます。それらのイメージをFlikrの写真群に紛らせたとしても、恐らく印象的な相違は余り無いだろうと感じます。
ところが近代絵画以前にはそのような“余興や放蕩、恋愛や社交”などは宗教的アラート(私的な欲望の自由な発露は宗教的禁忌だった)の対象として以外には真面目に題材にされることが無かったわけです。それは要するに、それらを描いて売買可能なマーケットを形成できる程のキャパシティが社会全体には無かったということだと思います。
それが、1600年代のオランダは東インド会社(オランダ東インド会社の成立は1602年、フェルメールが風俗画家に転進したのが1656年)が世界経済に乗り出して縦横に交易することでかつてない繁栄を築きます。そして、そのことによって市民階級は大幅な経済的自由=“自由な私的空間と自由な私的時間”を獲得します。その現象がとても分かりやすい形で表出しているのがこれらの膨大な風俗絵画群だと言えるのでしょう。
■ニコニコのコア競争力〜職人集結力とその支援ネットワークの組織力
で、そう遠くない将来、歴史家や美術研究家たちがデジタルアーカイブ化されたニコニコの作品群を見たときに当然それを生み出した社会構造の変動を考えるハズです。
そのとき、ひょっとすると、現時点ではほぼマイナスの意味のみを帯びて語られるニート層が日本の社会構造がもたらした「新しい階層」=“それまでは出来なかった自由労働(※1)を可能にする経済的な自由を得た一定の階層”という認定をすることもあるのか?などと考えました(←この場合の経済的自由とは金銭的自由だけでなく“余暇を獲得できる”という自由およびそれを可能にした経済基盤といった広義の意味で用いています)。
正直、ニコニコのユーザー層(のプロファイリング)については適正な資料を知りませんし、ニコニコ作品群の影響力および将来的評価については現在まだまだ未知数です。
ただ、日々のランキング変動とそのめまぐるしく変化を繰り返していく驚くべき自己再生能力に触れる限りでは、そのポテンシャル(=クリエーティブな生産能力が爆発的に伸張する可能性)は相当物凄いと思わざるを得ません。
そして、その源泉は何かというと「多くのイノベーティブな職人さんたち」および「それらのイノベーションを受容・伝播するクリエーティブな参加型ユーザーたち」だと言えるでしょう。
つまり、それらの“新たに台頭する階層のコア”を受け止める受け皿として機能しているところがニコニコ動画の強さであって、その競争優位の源泉ではないかと考えるのですが、冒頭記事の「ひろゆきの分析」内に登場する下のコメントなどは、まさにその競争優位を推し進めるうえで妥当な考え方だと言えるのではないでしょうか?
「データセンターの投資をやめて、無料ユーザーを締め出せば、理論的に黒字化は可能。でも無料ユーザーを含めてコンテンツをあげる人がいなくなれば、サービスとして先細る。ランニングコストを下げて利益を出すというモデルはやりたくない」
※1:自由労働
この場合の「自由労働」とは社会契約上の雇用関係とは関係なく、何らかの生産(批評行為もある種の生産行為と捉えた上で)を行うことを含めているので、分かりやすい給与労働とか時間制労働の姿としては見えて来ていない生産行為を指しています。こういう行為を指し示す適切な用語ってあるんでしょうか?非常に生煮えのエントリーですいません。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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すごく簡単に感じたのは「少しのヒマ」が大量に集積されて新しい財を生み出しているようなイメージですね。
吉川さんの分析はアナリストとして非常に精緻で参考になりますねえ!よくよく深いところまで触っているなあと思います。