初級編の後編です。お題は「なぜ、コミュニティ出版的な方法論にトライすることがこんなにも難しいのだろうか?」
あれだけベネフィットがあるのであれば「やればいいじゃん!」と思うのですが、実際にはなかなか稼動しないという現実がある訳ですね。
■もしかすると“ヤフー!の呪縛”とも言うべき思考の壁があるのではないだろうか?という勘繰り
さて、問題は、この仕組みにトライすべきプレイヤーにとっての心理的障壁の大きさだ。
まず、たいていのコミュニティ・メディアは“セグメンテーション”という概念を非常に嫌う傾向にある。で、軽くインタビューしてみると、どうやらユニバーサルな“縛りのないメディア”。つまりポータルサイト的な“規模の追求”に相反するアプローチのように見えてしまうらしい。
でも、雑誌の特性とは即ちターゲティング・メディア。つまり適切にセグメントされていることが非常に重要なので(生命線と言っても言い過ぎではない)、本当は「区切って」「集めて」「提案する」戦術こそが好ましいのだ。
クォリティペーパーが部数ではなく品質で評価されるのは、その先に一定数の高額所得者層が読者として控えているという仮定が成り立っているからであって、決して媒体制作費が高いからではない。
たとえば、とあるブログ・コミュニティで「ペット」を題材にした有力ブログを選抜し、セグメント化を行った結果、そのテーマに準じたブログ群のPVが30%程度向上し、さらにはアフィリエイトの商材売上げが300%に跳ね上がったという事例がある(商材の選定も重要なノウハウですが)。
こういったメディア構築手法の切り替えがないとコンテンツでドライブする方法論でコミュニティメディアの付加価値を上げていくのは難しいのではないか?
一般紙・大衆紙の方法論ではなく、特定のカルチャーや生活スタイル、価値観を捉えるデザイニングがどうしても欠かせないように思う。
なので、「ヤフー!の成功モデルを追従するという考え方をいったん捨ててみる」という考え方が有効なのでは?と思う。
ポータル的な数の論理だけではなく、そこにターゲティングメディアの思考法を持ち込むことの優位性を検討してみてはどうだろうか?
■昨日までやっていたことをいきなり明日から変えろというのは相当乱暴なことなのだけど、その先の変化を考えると変えざるを得ないのではないか?
その一方、出版社にとって「問題」なのは、そもそもの出版業自体がこういったビジネスモデルに取り組むような組織体制ではなかったことが、本質的な心理障壁の原因になっているように感じる。
作家→版元→取次という“バリューチェーン(=価値連鎖)”によってずっと成り立ってきた組織体が、いきなり「ネットコミュニティをマーケティングすることによる出版ビジネスモデルの確立」に取り組もうと思ったとして、じゃあ誰がどのような価値概念と指示体系によって執り行うのか?これはとても大きな問題だ。
従来、編集者は作家や編集プロダクションから提案される企画や原稿をハンドリングし、営業マンは書籍取次(流通)や書店バイヤー達と向き合ってきたわけで、ネットコミュニティの情報循環(サイトの企画運営)と格闘することの意味合いとか価値感を改めて突きつけられても困り果てるというのが実情だと思う。
いわんや、そのノウハウが「編集部」「営業部」の組織を縦断した全体像として行き渡るための「人材採用→人材教育→現場業務」システムへと結実するには、相応の手間とヒマが掛かる筈。
でも、考えてみれば、そういった転換期だからこそ新しいノウハウを考案・共有し、いちはやく時代のニーズに対応した付加価値創造メカニズムを開発できるというアドバンテージがある。
だからこそ、これはきっと経営課題として組織論を将来どう組み替えていくのか?=投資判断なのであって、従来どおりの出版スキルを鍛えていく方向とは異なった視点・思考が求められるテーマだと考える。
■コロコロとポケモンの関係性、その発生時点の動向など振り返ってみるのも刺激的なのでは??スカンクワークスの薦め
たとえば、スカンクワークスとして新業態を試してみるような方法は要求に合致しているように思う。
かつて小学館が(当時、日陰部署だった)コロコロコミック編集部で任天堂の「ゲームボーイ+ポケモン」のメディアミックスを手がけた(ゲームボーイは衰退し、ポケモンはヒットを期待されていなかった)際にもスカンクワークス的な手法を用いている。
そして、そのような取り組みをするだけの経済的効果は十分にあると考えるのだが、「ケータイ小説=一過性の熱病」という捉え方に踏みとどまっている限りは難しいだろう。
発売当初のポケモンがコロコロとのメディアミックスを通じて(具体的にはミュー騒動を契機に)ビッグタイトルに成長したのは、その背景に「ゲームボーイと通信ケーブルで友人同士が交換を楽しむ」という新しいメディア体験(の萌芽)があった訳で、ここでも出版プロジェクトが新しい体験性をビジネスに繋ぎ込む大切な役割を演じている。
だから、本質的には、その現象の下にあるマグマのような動静。いかに現時点のメディア体験が変化を遂げつつあるのか?の先々を察知していくことを薦めたい。
そして、ケータイユーザーに於けるメディア接触スタイルの変化こそが作者と読者の間の導線を大きく揺れ動かしているのだという消息を積極的に伝えていきたい。
この先にある新しい出版生態系をどのように発見し、どのように育成していくのか?イノベーションの種はまったく尽きない。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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