著作権を巡る議論が広がっているその渦中には「著作権侵害非親告罪化」というシリアスな問題があります。
親告罪→非親告罪の切り替えは、知的財産権の中でも重要度の高い著作権を扱っていくうえで影響が大きいだろうと思います。なかなかシステムにパッチを当てるだけという風にはいきそうもありません。
こうした問題を論じるにあたっては本来、利益代表者同士がそれぞれの立場と権益をぶつけ合うことで(裁判のみに限らない)テーゼ→アンチテーゼ→ジンテーゼの弁証法的な価値形成を“総体として”形成していくような状態=動的なシステム書き換えの状態が望ましいと考えます(どちらかが一方的にシステム書き換えをコントロールするような状態はできるだけ避けるべき)。
また、それには継続的に社会的アーキテクチャーを改善していくための衝突と軋轢を繰り返しながら、常時システムをアップデートし続けていく、それぞれの立場と権益に忠実な“よき意思”の率直な発露が欠かせないように思います。
ソフトウェアやシステムの開発における重要な格言として"Don't fix it, if it's not
broken"(壊れていないものを直すな)というのがあります。せっかくちゃんと機能しているものに手を加えると、往々にして予期せぬ副作用が生じて、
システム全体の品質が低下するということです。似た格言として"Keep It Simple & Stupid(KISS)"なんていうのもあります。余計な機能をできるだけ加えないで、システムをできるだけ単純にしておくことが重要ということです。
(中略)
法律を改正するからには、法体系や法目的との整合性(ソフトウェアで言えばアーキテクチャ(設計思想)との整合性と言い換えられるでしょう)や様々な副作用について、代替案と
比較して考える必要があります。システム開発においてセキュリティの穴を作ってクラッカーに狙われないようにすることが重要なのと同様に、法律の穴を権力
者側に悪用されないよう注意することも必要です。利益よりもリスクの方が大きいと判断されれば改正はすべきではありません。著作権侵害の非親告罪化についてひとこと (栗原潔のテクノロジー時評Ver2)
http://blogs.itmedia.co.jp/kurikiyo/2007/05/post_7c0e.html
局所的には“海賊版取締りのための著作権法改善なら良いだろう”、あるいは“二次創作などの行為を抑圧する取締りを助長するのは言論弾圧的で好ましくない”、“脊髄反応的に弾圧に結びつけて考えるのは被害妄想的”などの議論が散発しているようなのですが、既得権益 対 非既得権益、権力サイド 対 被抑圧サイド、強者対弱者というような対立構造にのみ収斂してしまう状況はあまり好ましくないのではと感じます。
そういったなか、たとえば上のブログに表明されているようなスタンス(社会的アーキテクチャーをトータルで捉えようとする視点=設計的視点)で考えることは非常に示唆的なスタンスではないでしょうか?
つまり、(僕なりに敷衍すると)対立構造や抑圧構造、搾取対被搾取などの対比・対置でもって固定的にそれぞれの立場をフィックスするのではなく「継続的かつ動的な書き換えのプロセス、動的設計の状態」に参加していくことをよしとする立場です。
■ここで話は飛躍しますが..
司馬遼太郎が、「近代日本の政治的対抗勢力が一定以上の勢力を獲得できなかったのは、西南の役で西郷隆盛が武士階級の残存勢力もろとも滅亡したから」というようなことを述べていたように記憶しているのですが(参照関係があやふやで申し訳ありません。ちゃんと調べておきます)、本来的に、それぞれが主体的立場で権利を請求し、その拠って立つ価値観を争うことによって社会的アーキテクチャーを更新していこうとするスタンスはこと日本的な精神土壌(和を尊ぶことを第一義とする)もあり、従来醸造されてこなかったように感じます。
ですが、いずれにしろいずれかの権益代表のみの利害でシステムを更新することによる弊害よりも、それぞれの利害をバランスしたうえでのシステム更新を進めていく利益の方が大きいように思います。
それに、そういう考え方をベースに闘っていくことのほうが長期的には相互のメリットをもたらし得る気がします(良いアーキテクチャーがあることによって、社会活動、経済活動が継続的に活性化していくことが本義)。
著作権の最大の存在理由(少なくともそのひとつ)は、芸術文化活動が活発におこなわれるための土壌作ることだと筆者は考えています。
なぜなら、豊かな芸術文化は私たちの社会に必要なものだからです。ですから、著作権をその目的に沿うように使ったり、設計することは、私たちに課せられた課題です。著作権とは何か? 福井建策 集英社新書
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