■YouTubeによるロック鑑賞ツアーの醍醐味
仕事で徹夜しながらYouTubeで70年代のロックビデオを見続けていた。なるほど、メディアが変わることでこんなに音楽の感じ方が変わるのか?と驚いた。実際、従来、放送媒体やパッケージを通じて行われていた「対面的」に音楽と接するスタイルとは、根本的に異なる体験性がある。
ここでは、ミュージックビデオは常にタグクラウドやコミュニティによって空間的広がりと、多層的奥行きをもってお互いに参照されている。
あらゆるパフォーマンスやアーカイブは、動的なネットワークによって(時代や場所、解釈や関係性などで関連付けられ)接続されている。
レッド・ツェッペリンの「カシミール」をジェスロ・タルがカバーしているかと思えば、「ファイブイヤーズ(五年後)」はデビッドボウイだけでなくビョーク(同じく“ファイブイヤーズ”)によっても歌われている。
■栄光の70年代を振り返る
そこで「栄光の70年代」の“偉大なる”楽曲と演奏の数々に触れながら思ったことなのだけど、「デビッドボウイは、いまだに、ちゃんと理解されていない」んじゃないだろうか?
ウィキペディアでも、その劇的(で無節操)な変身ぶりと、過激なコンセプトワーク(=過剰すぎるイマジネーションは同時にスキャンダルを引き起こす)が列挙されている。要するに、彼は、常に矛盾した存在であり続けてきた。
それに比べて、他の、例えば、キングクリムゾンやピンクフロイド、ストーンズなどの同時代を代表するようなグループ、アーティストたちはもっと連続性があり、マスターピースはマスターピースとして(というよりは懐メロ!?)連綿とプレイバックされている。古の名曲を演奏するスティーブ・ハウの映像など涙無しでは見られない。
そういったプレイヤー達と比較すると、ボウイの場合は余りにその「存在と様式」が変化し過ぎているのだ。これでは、「プラットフォームとしてのデビッドボウイ」を形成するのは、まず非常に困難だろうと思わざるを得ない。
■デヴィッドボウイ・プラットフォームは可能なのか?
彼の「ハンキー・ドリー」から「ロウ」あたりにかけての疾走とめまぐるしいばかりの変容は同一の人物がその時代性、新たな価値観の台頭と軋轢を受容しながら、どれだけ多重人格的に自らを書き換えられるのか(書き換えの際には当然消去も行われている)?の壮大な人体実験のようだ。
そして、このラディカル過ぎる実験精神はポップミュージックという「定着と深化」を拒絶すべき表現様式(であり産業構造)に於いては、ただただ流れ過ぎていくだけの漂泊物であって、結果、それらの「変身の歴史」は意識の表層から、さらなる深みには沈殿していきようもない。
それが、YouTubeの登場(による相互参照的な鑑賞体験)と、フォークノミー的なソーシャルメディア(によるアーカイブの再評価)を通じて見直すと、より空間把握的、時系列的、比較文化的に、彼の歴史を把握することができる(というほど包括的、分析的に見直したわけではないですが)。ハイパーアクティブなボウイのこれまでの変遷も、これほどまでに追いやすくなれば再評価されやすいだろう。
でも、だからといって早晩「デヴィッドボウイ・プラットフォーム」が立ち現われるのか?というと、それははなはだ怪しい。
なぜかというと「重くて深い」モノは西洋的伝統として抽象化、体系化されやすいと思うのだけど、ボウイのように、「軽くて深い」モノは、東洋的伝統として哲学的(霊的?)な価値観に照らして解釈した方が、断然相性が良いように思うからだ(ボウイは一時期京都に寓居を構えていた時代がある)。
■クレイジーダイアモンドは砕けない
あと、ネットワークを延々辿るように、70年代のミュージックビデオを見ていてもうひとつの「“偉大な”プラットフォーム」に気づいたのですが、それは荒木飛呂彦の「ジョジョの奇妙な冒険」に登場する「スタンド」に託された「ロックミュージック体系」でした。
フロイドのクレイジーダイヤモンドを聴きながら(クレイジーダイヤモンドはロイドの名曲であり、同時に、ジョジョの第四部『ダイヤモンドは砕けない』主人公、東方仗助の使用スタンド名)、ジョジョに登場するスタンドの階層はある程度それらが元になったロックミュージックの価値評価と関連しているのだろうなと思ったのです(ファンの方々によってはもっと深く分析されているのかもしれません)。
また、そう感じたのも、そのクレイジーダイアモンド(Shine on your crazy diamond)が素晴らしかったわけですが(主人公が使用するスタンドに対応させるべき楽曲には当然相応の強度が求められる)。
あと、ボウイの作品からは「スケアリーモンスターズ」が(スティール・ボール・ラン内に)登場しているようなのですが、残念ながら僕はまだ読んでいません。もし、(ボウイの作品から)ダイヤモンドドッグスが出現すれば、クレイジーダイヤモンドとの対比も出来て面白いのですが。
※このエントリーは梅田望夫氏の指摘されていた「プラットフォームとしてのアントニオ猪木本」という論考に刺激をされて書きました。
そう言えば、梅田氏のブログで取り上げられているのは「1974年の猪木」なんですね。ボウイが問題作「ダイヤモンドの犬(オーウェルの1984にインスパイアされた作品)」を発表したのも、同じく1974年です。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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