今年の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(熱狂の日 音楽祭)」のテーマは「音楽の世界旅行」でした。
つまり、近代の天才作曲家達。特に(過去になってから)国民楽派として総称されたヨーロッパ周縁諸国の作曲家達(ムソルグスキー、ストラヴィンスキー、グリーグ、シベリウス、バルトーク、ヤナーチェク、スメタナなど)を中心に取り上げた、近代音楽の祭典だったのです。
そこで、ちょっと興味深かったのが、当音楽祭で配布されていた「公式アフターブック」に載せられていた、青島広志氏による冒頭のエッセィでした。
もうひとつ、決定的な違いは、政治的な運動へ参加しないことです。国民楽派の作曲家たちは、多かれ少なかれ自国の音楽文化を引き上げることに尽力し、そのために独立運動などにも参加し、その用途としての作品の存在も確証されていますが、著者にとって、政治と経済は、忌むべき世界の出来事として、永久に関係を持ちたくない相手です。
彼は、自らの西洋音楽への目覚めと遍歴に於いて、その清貧ぶりでは国民楽派との共通性を感じることを述べつつも、実は、政治性との絶縁に於いては、明確に彼らと立場を違えている旨、とても正直に表明をしています。
そして、ここにも、先だって触れた「ネルロとコゼツの相克」の構図と同じ構図(の変奏)が見て取れます。また、中国の現代アートにあって日本の現代アートに無いもの=「政治的闘争」の不在という、共通した通底音も同じく聴き取ることが出来ます。
もしかすると、ここで述べられている「アンチ政治性、アンチ経済性」に加えて、「アンチ宗教性」という基調も加えることが出来るかもしれません。
このように、戦後民主主義形成の時代を通じてアートがあらゆる俗社会との交わりを拒絶し続けてきたある種のアレルギー反応、そのストレスの強さを改めて感じつつ、実はそのアレルギー自体、非常に限られた「時代性の表象」なのではないか?と感じるのです。
なにしろ、芸術が経済や政治、あるいは宗教などの領域と無縁であるべきだという主張には、それはそれで特異なイデオロギーの匂いを感じますし、そもそもそういった「原理」に捉われて疑わない姿勢は、現代アートの「すべてを疑ってかかる」スタンスの真逆に位置している姿勢のようにも感じるのです。
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