最終更新時刻:2008年9月5日(金) 23時13分

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美しい写真はウェブでは手に入らないという“福音”

公開日時:
2006/12/08 14:29
著者:
尊仁

■携帯小説作家の作家力とは?

先日、携帯小説作家(の卵)の方とお話する機会があった。

恋空』が一ヶ月で前後巻併せて100万部突破して、ある種ウェブエコノミーからの断絶をココロザシ(実は単なる怠惰)と思い込んでいた編集者達もようやく携帯小説市場に気づいた・・のかも知れない。

でも、本当に新しいのは携帯小説という“アウトプット”などではなく、モバイル・コミュニティが形作っている作家育成(=コンテンツ市場形成)の対流構造であって、しかも、ちゃんと見ておくべきことはその特異な文体とか形式ではなく(それらは表層的な結果に過ぎない)モバイル・コミュニケーションが実現した新しい出版マーケティングの実像だ。

その作家さんは既に驚くべき読者数をウェブ上で獲得している。でも、それは、顔の無いただの数字という意味では決してない。その読者数は、作品力+作家の日々の読者ケアを通じて育まれたものだ。

だから、現実には、“そこに存在する人たち”をコアにしたファン層を自らの手で形成している。

そして、さらにユニークなのは、その作品ナビゲーションだ。ここでは、作品はまず仮説としてコミュニティ内に提示される。そして、その後の反響に応じて想定済みの複数プロットから選択された、しかるべきストーリーが次回連載分として提出される。

それはちょうど選択式のゲームシナリオをユーザーの反応に即して場面場面で繰り出していくような叙述スタイルだと言える。その試行錯誤、お互いの興味の探りあいの皮膚感覚こそが、現段階の携帯小説作家に於ける作家性なのかも知れない。

■世界のすべては写真集にある! 本当に?

STUDIO VOICEの最新刊は『写真集の現在 特別総集編』だ。STUDIO VOICEの十八番『写真集の現在』の在庫一層セール。写真集という特殊カルチャーの変遷を総覧するにはとてもいい特集だと思う。

ただ、そこで興味を惹かれて、写真家やその作品について調べようとするといきなり大きなストレスにぶつかってしまうことに気づかされる。それは何かと言えば、ある程度知名度のある写真家やその写真家の作品についてはウェブ上のアーカイブが非常に乏しいことだ。

有名写真家の作品を画像サーチしてリーチした先の画像ファイルのチープさに落胆した経験は誰しもあるのではないだろうか?

有名作家の作品は既に有価値性が認知されており一定の商品性があるので、その流通市場たる出版マーケットやプリント市場での存在が担保されている。

その換わりに、そういった商品流通性とは無縁と目されてきたウェブ情報圏内には、それらの写真作品に関連した批評記事やオリジナルプリントの断片といったようなものは意識的に流出を避けられてきた(実際的に不要だったしそれらを流通させることのメリットよりもデメリット=権利侵害への恐れの方が先に強く認識されていたのだと思う)。

それはきっと善悪論とか是非論とか(つまり信念とか理念とか)そういうことではなく、ただ“惰性”でそうなってしまったという程度のことではなかったのか?と、思う。

でも、翻って考えてみると、現時点ではファインフォトの広大なエアポケットとでも言うべき真空空間が“スポッ”と空いているように見える。

■より多くの人たちにシェアされることの経済

歴史的に蓄積されたファインフォトがそのプロテクションによって逆に本来いるべき居場所を失っているような、そんな状況なのではないか。そして、その巨大な空虚を埋めるモノは果たして何なのだろうか?

冒頭の携帯小説作家(の卵)なんて、その好例で(テキストとフォトという違いはありますが)、実は、携帯小説市場がここまで拡張するなんてことは、ムーブメントを仕掛けたCGMメーカーやパブリッシャーでさえ、ほとんど想定していなかった(実は、ブログ書籍は既に凋落していた)。

ところが、日々のインタラクティブな交感状態のなかで、気が付けばそこに大きな空虚(満たされるべき欲求のプールという言い方は身も蓋もないでしょうか?)があったということに気づかされた(そして驚いた、笑)。

恐らく、まず“プロテクション”から入るとすれば、そういった新しい情報爆発は起こらない。そして従来型の写真集やギャラリーのシステムから離れられない限りは、そういったパラダイムシフト的なアクションは起こせないだろう。

先の打合せで同席した携帯小説パブリッシャーの場合は、完全に意識と感覚が切り替わっていて、書籍刊行に向けたマーケティングアプローチは常時アップデートしているような状態だ。

■産業的空白があることの意味

だから、作家との対話もしっかり噛み合う(プロトコルが合っている)。でも、こんなやりとりができる出版社は非常にレアで、たとえば『恋空』も、国内上位各社から拒絶された経緯がある(100万部が消えた!)。

写真界も(業界規模は異なるけど)、きっと同じような状況なのだろうと思う。もしかするともっと後退しているのかもしれない。戦略的後退はアリだけど、実は、これも、またただの惰性に過ぎないのではないかと思う。

既にフォトシェアリングサイト上には素晴らしい写真群が大量に流通している。このことをどう捉えるのか、いずれ問われる日が来るだろう。

このエントリーのタイトルに“福音”と敢えて入れたのは、このウェブ環境上の写真プアな状況(空白と停滞)が、恐らく来るアントレプレナーやアーティストにとっては、潜在的な機会創出になるだろうと考えたからです。

YouTubeがブレイクしてからYouTubeについて語る・・という段階では、もう産業的空白=機会は(同一領域内には)ほとんど無いのです。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

2

なるほど・・着々と浸透しつつありますね(フォトシェアリング=コンテンツの流通経路という流れ)。そう言えばjpg magazineという紙媒体もリニューアルされて再注目されていましたね。

  尊仁 on 2006/12/11

1

直接の関連ではありませんが、こういう発想があります、作家性ではなく流通プラットフォームとして。

FlickrBlogがFlickrの最大の武器であるということ
http://mitaimon.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/flickrblogflick_ab44.html

  katute on 2006/12/11

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