■外から見た日本 内から見た日本
昨夜は、東日本橋の内田コンプレックスで新野君、近藤君の両名と新しい活動方法(=作品制作及び展示の企画・提案、販売方法など)について色々と意見交換をした。
彼らは、ビジネスとメディアとアートを、それぞれ自身の視点と行動力で切り拓いていけるユニークなアーティスト達だから、その対話を通じて得られる着想は触発的だ。
そこで対話しながら突然気が付いたのが、「欧米から見たときの日本のポジション」についての、ある“取りこぼした視点”だった。
それは、わざわざブログに書くのもはばかられるほどバカバカシイ単純な見落としだった。
つまり我々は日本からの内部→外部の視点として、「日本 対 海外」もしくは「日本 対 欧米」という視点設定を何気なく無意識中にしていることが多いのだ。この対立軸の置き方、視点設定の特殊性にいまさらのように気付いたのだ。
■その捉え方が、実は非対称であること
この視点の設定に対して、欧米的正統派美術史観の捉え方としては、「日本」をひとつ取り出して、個別・独立に扱う捉え方、取り出し方法は寧ろ特殊であって、「アジア圏」、あるいは「オリエント」といった世界地勢上の視点から見たエリア感覚の方が主流だろう。
それは、恐らく我々が思っている以上に“非対称的”な関係性であって、なぜなら、日本という極東の孤島では、永い太平の鎖国期間を経て、自国に対しての内観的視点の設定、良くも悪くも、自己内省的な歴史感覚・美的感覚が醸造されてきているので、その非対称性を特殊であると感じる感受性が失われている。
だからといって旺盛な進取の気質によって外国文化を吸収配合して、さらに、日本流に再アレンジしアウトプット続けてきたという華々しいとも言える歴史がある。日本文化の持つ、その独自性も見落とすことはできないだろう。
だから、ある種の鎖国的な感性を単純に自閉的・閉鎖的体質として非難することは、当を得ていないと思う。
ただ、そのように、常に、「日本視点」、「日本流」の自己中心視点が働き続けて来たことは、決して事実からは遠くないと思う。
■アジアを現代アート・パッケージの製造・流通拠点として捉えること
だから、東日本橋の手作りのバーカウンダーで、彼ら、意欲に溢れたアーティスト二氏と対話をしながら見えてきたことは、次のようなことだった。
じゃあ「いっそ、ストレートに、アジア圏のコンテンポラリーアート市場に於ける協業・連携を通じて、世界市場に向けた自己発信をしていく」戦略を考えよう。
そうすると、
?カルチャー環境の現状(=アジア圏が文字、文化、食生活、倫理観、宗教性などの面で共感・共有できる面は多くある)と、
?エコノミー環境の現状(=現在最大の協商エリアであるアジア圏とは、距離交通面に於ける利便性などを考えても協業可能性が高い)また、アジア圏の現代アート市場に向けての投資活動は、今後より一層活性化することが予測されるために、お互いが双方向に価値交換するメリットがある。
とを考え併せると、この方法論は単なる思いつきを超え、実現すべき具体案となり得るという結論であった。
■美術史の“空き地”再開発
村上隆がスーパーフラットのコンセプト表明以降、彼自身のアーティスト活動に限らずカイカイキキやGEISAIなども含めて日本発のムーブメントを創出しようとしている、その試みの基底には、日本的伝統美術が従来有している、独自の価値体系の動静への眼差しがあると思う。
また反面それは大勢の日本人からは正統な評価を失っており、再発見されリニューアルされることを忘れ去られた“美術史観的空き地の再開発”というべき側面があったのでないだろうか。
また、彼自身が正確に指摘をしているように、その再開発のロジックとメソッドは西欧美術史観の理解と解釈および適用という他者的な視点、つまり、西欧的メソドロジーとして取り得る方法論を、貪欲に吸収活用するという、ある種日本的柔軟なスタイルが用いられていると思われる。
■スーパーフラット・メソッドの源泉を、岡倉天心のビジョンから再読する
今、改めて岡倉天心の一連の著作(それらは、ほとんど海外で英語を用いて記述されたものだ)で、彼がちょうど今から百年前に発見し、それを概念流通させ、システム構築(要するにカルチャーとビジネスの両面で、世界市場内に於ける日本美術の制作・発信拠点を構築すること)しようとした試みを、明確に理解することができる。
建国以来連綿たる宗主権の影にはぐくまれたこの民族のふしぎな粘着性、中国やインドの理想を、それらを創り出した人々の手からはとうの昔に投げ捨てられてしまっているような場合にすら、それをそのまったき純粋さにおいてわれわれの間に保存している粘着性、藤原文化の精妙を喜ぶと同時に鎌倉の尚武の熱情に酔い、足利時代のきびしい純潔を愛しながらも、同時に豊臣の華麗な壮観をも寛容する粘着性、こういう粘着性が、今日、日本を、西洋思想のこの突然の端倪すべからざる流入にもかかわらず、無傷に保全しているのである。近代国家の生活が日本に余儀なくして帯びさせる新しい色にもかかわらず、自己に忠実にとどまるということが、本来、この国が先祖たちによって教え込まれた不二元の思想の根本至上命令なのである。日本をして、現代ヨーロッパ文明のうちで日本が必要とする要素のみを、さまざまの源から選び取らせた判断の円熟さは、日本はこれを東洋文化の本能的な折衷主義に負うているのである。
「東洋の理想」 岡倉天心著 富原芳彰訳
そして、それらの著作を通読するにつけ、彼が当時構想したような、アジア圏をひとつの文化的、美術的なまとまりとして捉え、そこからの創発的なムーブメントとして始動させようと目論んだ新美術運動が、改めてリアリティを帯びてきているように感じる。
■百年目のトラックバックとは?
そういった、当時の動き(天心は東京藝術大学を追放された後、五浦に日本美術院の拠点を構える)に百年のときを超えて呼応しているとも位置づけられる、村上隆による日本発のアクションは、まるで『百年目のトラックバック』とでも言えるものだ。
岡倉天心はその幼少期を横浜商館で過ごし、当時一流の英語教師から海外文化の薫陶を受けながら、その後、東洋文化の真髄に触れる機会も持ち、ある意味当時から非常にハイブリッドな日本人流を身に着けていたし、そのことが単なる愛国的・唯我的な取り組みではない、グローバル感覚に満ちた日本画創出運動に繋がっていった。
そのハイブリッド性は、本来海外の様々な表現者や市場、文化と接触し、触発しあうことによってより一層強味を発揮できるのではないかと感じる。
村上隆が東京芸大史上初の日本画による博士号取得から、その後の不遇時代を経て、ニューヨークでの一念発起によって今の運動に至ったことも、そのハイブリッド力発動のメカニズムとして捉えることができるだろう。
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このエントリーは、特に、私的な体験を基に私的な構想を書き連ねました。
かなり読み難かったことと思います。何卒お許しください。