■男性ヌードは芸術作品になるのか?
男性のヌードが果たして芸術作品になり得るのか?これは、なかなか刺激的な問い掛けだ。
もちろん、ブルース・ウェーバーやロバート・メイプルソープの為しえた偉業は、敢えてここで持ち出すまでもない。ただ、既にお墨付きの“作品”であるそれらのマスターピースを、現代の我々の生活と連続性のあるものとしてリアルに受け止めるのはなかなか難しい。
鷹野隆大が男性ヌードを撮り始めたきっかけは、取材や彼のインタビューを読んでもそれほど明確ではない。でも、『僕は自分なりのポルノを作らなければならないと思って、主題を性的なものへと変えているんです(STUDIO VOICE 06年07月号 特集:写真を撮る方法)』のようなコメントに触れると、それらのシリーズが、偶然と必然、理論と感覚、それぞれのミックスとして長い探索を経て生まれてきたことが分かる。
そして、『横たわるラフ』から、『in my room』に至る流れの延長線上で、今回@ギャラリー・タグボートで公開されている『in my room 6×6』は、従来大判カメラで撮影してきた男性ヌード(だけではなく、着衣のポートレート作品なども含む)の試写段階、本番撮影前の準備カットとして撮影されたものだ(6×6は、中判カメラで使われるブローニーフィルムの内の一フォーマット)。
■「in my room」から「in my room 6×6」へ
それらの写真は「in my room」の大判作品に比べるともっとくだけていてカジュアルでより「素」に近い作品だ。作品化する直前の言葉をかけながら調子を作っていく際の親密さ、親しみが感じられるし、空間の緊張感も緩くより日常的だ。だからこそ、彼が「僕ならではのポルノ」と語る作品の生々しい息遣いが、より微細に伝わってくる気がする。
タグボートの企画意図としてはユーザー投票により、作品誕生の瞬間に対して、より一層コミットさせようということではないかと思うのだが、男性ヌード作品が今の日本でどのように受け入れられるのか?(あるいは一切受け入れられないのか?)のある一局面を垣間見せてくれるのではないかと思っている。
■“物語の終わり”について
僕が今撮影しているのは、オンナノコが女装している+オトコノコが女装しているの双方をシャッフルして、それを作品化しようとしているシリーズだ。
それを仮に『物語の終わり』という名称で括っているのだけど、それには、特に近代以降の物語文学のヒストリーが当初から、“大人の男と女という枠組み、図式”を前提にしているという意識が働いている。
だからといって性差・性別の境界線がどんどん曖昧になり、そのことによって、お互いの役割意識や性意識が変わってきていることをアンチ物語とかアンチ近代という風に言ってしまうのも正直余りしっくり来ないし、そのように断定してしまうのはとてもつまらないことのような気もする。
そうではなくって、ジェンダーの構造がどんどんファジーになって、その対立構造そのものがどんどんグラデーション的に緩やかな諧調を帯びてきていることが、何か新しい物語の端緒になっていくのではないか?と、感じているのだ。
同人系マンガに於ける所謂“ふたなりモノ(両性具有モノ)”などは、その最もデフォルメされたスタイルだと言える。両性具有性と、“攻め”対“受け”の柔軟な転移に滲み出ているのは、性的役割のあいまい化であり、性意識のハイブリッド化だ。
鷹野隆大の作品シリーズとの接点があるのかどうかは僕もよく分からないのだけど、新しい時代の動向の片鱗(突端?表層?)に触れているという点に於いては、どこかで同時代的な感覚センサーが働いているのかな?と、思う。
物語の終わり(ポジフィルム) Photo by Takahito 2006
参考リンク:
「in my room 6×6」シリーズに寄せて 鷹野隆大
http://www.tagboat.com/takano_ryudai/message.html
服装ジェンダーと美の再検討 神名龍子
http://www.netlaputa.ne.jp/~eonw/sign/sign66.html
常にベータバージョンな書籍 東京の子供と少女を撮ること
http://rblog-biz.japan.cnet.com/takahito/2006/10/post_2f02.html
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