■2005年は大きな節目だった
再び『芸術起業論』にフォーカスを戻すと、この本がなぜアクチュアルなのか?というポイントに限っては、日本の産業構造の変化が根底的には大きいのではないかと思う(ブロゴスフィア的美術試論としての芸術起業論再読は別途他のエントリーでやる予定です)。
2005年度は記念的な節目の年として回顧されるかもしれないのだけど、今までは貿易収支(輸出入額の国際収支)が注目されてきたことに対して所得収支(資金運用の国際間収支)が初めて貿易収支(黒字額は約9兆円)を上回ったのだ(所得収支の黒字額は約12兆円)。
人口論はそのままその社会の経済動向と密接に連動している。
日本社会が戦後成熟し、やがて逆ピラミッドを描くにあたって、日本はかつての製造業中心、貿易収支の黒字が伸び続けてきた経済循環から金融業中心、つまり投資収益の黒字額が今後は伸びていくであろう経済循環に大きく切り替わっている。
これは、産業構造自体が知的労働集約型の収益スキームへと大きく変貌を遂げている日々の実感とも対応している。
■新しいギャラリスト達の登場と台頭
そうなってくると、要するに付加価値再生産=資本再投下の先はよりハイレベルの知的営為・知的産業に向かっていくはずなので、既に中国が先鞭をつけているように、ハイカルチャー=現代美術市場への投資意欲が高まってくる可能性は非常に高いと睨んでいる。
そもそも、美的感覚の鍛錬とその実装(=産業化)に関してはコミック・アニメカルチャーの高度化の歴史を振り返るまでもなく現代日本人の得意とするところなので、提供者側のドメインは潤沢であると言える。
それに対して高付加価値創造の可能性への投資意欲がリンクした場合、中華圏に対して大きく立ち遅れている日本現代美術市場は大きくブレイクする可能性があるかも知れない。
また、そのときに変革の担い手になるのは、ただ創造者の個人的才覚だけではなく美的創造力と資金投下力とを巧妙に結合できるビジネスプロデューサーではないかと考える。
萌え市場の産業化に大きく貢献したのは、萌え文化の担い手とは全く関係の無い金融のプロ達だったのだから、この場合も、従来のギャラリスト達以外の領域から登場してくるのではないかと予感している。
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