■国内のアート・マーケット・スケールと成長ポテンシャル
アメリカのGDP構成比が29%、対して日本が11%。するとスケール比で3対1。その一方で、オークション市場の規模は、アメリカが16%(1200億)。それに対して、日本が2%(170億)。スケール比では8対1。ただ、これは現代美術の取引額ではなく美術品の取引総額です。
かつてはサザビーズやクリスティーズなど海外オークション市場でも印象派以前の美術品取引が主流だったのが2004年には勢力逆転し、現在では、コンテンポラリーアートの取引額がモダン以前の作品の取引額を上回っているそうです。
ただ、その一方で国内に眼を転じると、取引市場そのものが存在していない状況です。例えば、国内のアートオークション企業シェアトップのシンワアートオークションが公開しているカレンダーを見てみると、半期の間に15回開催されるオークションのうち、たった1回だけがコンテンポラリーアートという有様です。もちろん落札額ランキングに現代美術作家が登場することはありません。
ただ、GDP比や海外市場の取引額との対比で大きくビハインドしているということは、当然将来の成長ポテンシャルがあると見込むこともできる訳です。
ですから、以上のような数字をどのように捉えるか?は、その市場の成長規模をどのようにプロジェクションするのか?と、いう観点から考えるべきだと思います。
■日本現代美術のセルフイメージとトランスフォーメーション
さて、前回、前々回に触れた“アート市場を考える思考ツリー”ですが、ここに透けて見えるのは、現代美術市場の拡がりは近代までの日本美術史をどのように価値判定するか?と、密接に繋がっているのではないかというポイントです。
・仮説:現代美術は伝統美術と連続している
この視点は、例えば村上隆のSUPER FLATのコンセプトに代表される価値観です。この視点(仮説)には、ふたつの大きな価値判定についての提案が込められています。
・日本画から、コミック、アニメ、フィギュアなど、現代の視覚表現に至る基本スタイルは、実は連続している(つまり視覚的にフラットである)。
・日本人の美意識に於いては、“ハイカルチャー”も“サブカルチャー”もフルフラットである。
と、いう考え方です。ですから、この考え方に立つ場合、
・テクニカルな側面から考えても相互(伝統と現代、ハイ&ロー)をセパレートすることは困難だ。
・生活術と美術の境界線はとても曖昧。どころか相互に浸透しあっている。
のように言い換えることが可能です。
■フルフラット思考は生活とアートを連続体として捉える
よって、SUPER FLAT的スタンスは、単に視覚表現のフラットネスを再発見することで、その表現上の連続性を明らかにするだけでなく、アートとライフをボーダレスに接続可能なものとして捉える捉え方、価値判断を提案するものといえます。
このように考えると、従来日本のカルチャーシーンが、
・余り積極的にハイカルチャーを育ててこなかった(=ジャンクしか生んでこなかった)
・伝統芸術のメソドロジーが、現代的な美的価値観、表現手法として活されてこなかった(=歴史的に断絶し続けてきた)
というウィークポイントを抱えてきたことが逆転し、むしろ、
・純粋なアート市場を越えた、より広範囲の美的応用、転用が当たり前にできていること
・生活に於けるアート感覚の洗練が日常的に行われていること(美術のフルフラット化)
といったアドバンテージとして、新たに捉えなおすことができると考えられます。そのようなパースペクティブで、8月9日配信のニュース記事、『村上隆 無血革命宣言 日本の芸術いま最高価値』を読んでみると大変面白いのです。
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