最終更新時刻:2008年10月8日(水) 12時27分

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現代美術とは全く無関係なアートブックガイド(4)

公開日時:
2006/08/02 08:25
著者:
尊仁

現代美術とは全く無関係なアートブックガイドその4。今回ご紹介するのは、ちょっとヘンな写真集たち。という訳で「アートと全く無関係」とは言い難いのですが写真の面白さ、醍醐味を考える上で役立ちそうな二冊です。

■非ファッション的 着飾ることの多様性

Imgp0166

『(un)FASHION』。アマゾンでユーザー評価が高かったのと、洋書のフルカラー写真集なのに1868円という値ごろ感に惹かれて購入したのですが、実際とても良い写真集でした。

ただ、これはフォトグラファーによる作品集とは作り方が全く異なっており、著者のTIBOR + MARIA KALMANは、膨大なフォトストックから「(un)FASHION」という視点で写真を選び抜くことによってこの写真集を作り上げました。いわば写真の海を泳ぎながらそのめくるめく光景を「画像のシリーズとして編集する」方法論で書籍化した訳です。

また、そのソースとしては「マグナム(世界最高峰の写真家グループ)」など、一流の写真ストックを対象としており、ある意味非常に贅沢な内容です。

Imgp0138

大変月並みな解説ですが、この写真集を観て感じたのはパリコレやミラノコレクションなど既に確立したファッション界の階層構造とは全く別の座標軸として「着飾る」ことを捉える視座というのが、その座標設定次第で幾らでもあるんだ!という発見でした。

例えば『(un)FASHION』で用いられている切り口には、ボディアート(体を直接飾ること)、部族(を表象するファッション)、制服、戦闘服、仮面、移動する家(としてのファッション)、労働服、個人移動商店としてのファッション、聖衣など、つまり日頃“モード”として馴染んでいる文脈とは異なる視点が導入されています。

もちろんそこから翻って、いわゆる“モード”を見直すことも可能ですし、消費体系としての“モード”を『(un)FASHION』の文脈からもう一度読み直すことも可能だと思います。要するに『(un)FASHION』は“モード”の否定形ではなく、より自由な視点で捉える際の発想の糸口だと考えられるのです。

ただ、いずれにしろ、言葉で幾万語費やすよりも、このユニークな写真集に張り巡らされている編集ネットワークにハマってみることの方がずっと意味がありそうです。

もちろん、だからこそ写真集として提出した価値があるのでしょうし、また、いわゆる「作品集」としてではない編集的アウトプットとしての『(un)FASHION』が持っている独特の良さはそういったFlickr的な快楽(映像を遊び泳いでいく感覚)だと思います

Imgp0127 

され、この本が上梓された2000年当時からは考えられないほどウェブ上の写真環境は豊かになりました。今ならマグナムのストックを対象としなくてもフォトシェアリングサービスをサーチするだけで、非常にパワフルでイマジネーションに満ち溢れた、新たなる『(un)FASHION』が編集可能な状況です。

ただ、その一方で、駆使する“テクノロジー”よりも駆使する“アイデア”にこそ、映像的想像力の源泉があるんだということをこの本は教えてくれるのではないかと思います。

■ブライスというファムファタル

Imgp0149

よくご存知の方にとっては「何をいまさら!」という印象だと思いますが、もはやカリスマ的アイドルになってしまった「ブライス」。日本では、パルコのコマーシャルによって一躍注目されたのが2000年。この「This is Blythe」は、恐らくそのCMのアイデアソースになった2000年発売のブライス写真集です。

著者のGINA GARANがなぜこの薄命の美少女(発売元は、1972年のリリース後たった1年で生産を打ち切った)を扱った写真集を発表しようと思ったのかはよく分からないのですが、現在数多く発行されているブライス本の中でもこの写真集はかなり異色の存在です。

簡単に言うと、ある種の抑えがたいオブセッションというか、非常にパラノイア的な衝動的執念を感じるさせるのが、この写真集の特徴です。日本で制作されているものがモード的な洗練や端整さを感じさせるのとはかなり印象が異なります。

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ドールアクションとしてはただまぶたが上下するだけ、もちろんスタイリングやライティングによって多様な表情を出すことが可能だということを差し引いても、この写真集に収められているブライスの変貌振りはなかなか凄いものがあります。

被写体がたとえ無機物、ドールという人の感情移入次第ではその印象が大きく変貌する可能性があるとは言え、物理的にはプラスティックの塊に過ぎない物が、撮影者の捉え方、扱い方次第ではこのような異様ともいえる迫力、ある種他には変えがたい空気感を持ちえるという具体的事例として、この作品集はとてもユニークだと思います。

そして、その“作家の捉え方しだいで幾らでもニュアンスが変わる視点変化の醍醐味”は、写真集の面白さであり写真術の面白さだと改めて感じます。自分の好きなものをとことん追い込んでみる、そんな撮影を日々少しでもいいから時間を取ってやってみる。そういう蓄積は結構馬鹿にならない気がします。

実際mixiなどにある濃い系のブライスコミュを観ると、そのカスタマイズの多様さとスタイリングへの執着については非常に圧倒をされます。一枚のピクチャーとしての追い込みがあるものはまだまだ少ないようですが、こういったシーンからも今後面白い写真が出てくる可能性があると思います。当たり前の物(プラスティックドール)を当たり前じゃない視点(たとえばファッションポートレート)で切り取る。そういう視点の面白さはアイデアの発展次第でもっと化けていきそうです。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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