最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

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アーティストにこそ薦めたいアート・ビジネス本ガイドブック(1)

公開日時:
2006/07/24 22:13
著者:
尊仁

■アーティストにこそ薦めたいアート・ビジネス本ガイドブックとは?

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村上隆のアプローチに対する批判は数々ありますが、作品の好き嫌いとか人としての好き嫌いとかそういったある種議論しても仕方が無いようなことはともかくとして、そもそも「ビジネスとしてアートを捉えることへの拒絶反応」というのは結構大きいと思います。それとは別に「オタクカルチャーの剽窃を問題視する」批判もあるのですが、これも捉えようによっては「パブリックドメイン(的なオタクカルチャー)を現金化することへの違和感」とも言えるので、その根っこ部分にある生理的嫌悪感だけを取り出すとすればもしかすると近縁関係にあるのかも知れません。

ただ、そういった拒絶反応的なリアクションにばかり捉われず、アートを生業として積極的に捉えていく考え方をしてみることには一定の価値があるのではと思います。まず、やりがいのある仕事を生業にすることはなんら恥じることではなく、また、それが金銭的に報われることはむしろ前向きに評価すべき、非常に大切な事柄であると思うわけです。

ただ伝統的に日本の教育システムがそういったスタンスを支持してこなかった。また教育に限らず、メディアの側にしてもそういうアプローチを取ってこなかった(既存媒体が美術教育サービスを顧客としてきた当然の帰結として)ので、慣習的に受け入れ辛くなってしまっているのではと思います。

そこで、というには余りにささやかなアプローチですが、アーティストだからこそ読むと役立つ(と、思われる)ビジネス書を何点か取り上げてみたいと思います。

■エコノミーシステムについて

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まず、最初に、「マーケットって何?」というアプローチからお薦めの本を取り上げたいのですが、やはり経済学そのものを修めることが目的ではないので「市場を理解するだけでなく、そこにアートの可能性を見出す」というポイントに絞ってご紹介したいのが「不道徳教育 擁護できないものを擁護する ウォルター・ブロック著 講談社刊」です。

これは要するに「市場原理主義」の立場から数々の「擁護しがたいビジネスを生業としている人たちを擁護する」破天荒な本です。市場原理主義というとハゲタカファンドとかアングロサクソン的弱肉強食の世界観に貫かれた強者の理論を想像しがちですが、全くそういった内容ではありません。そのラディカルな論理展開にどんどん引っ張られて読み進める内にマーケットという「生態系」の面白味がリアルに迫ってきます。

なかでも、「ニセ札つくり」の章は、本来現代アートが抱えている価値の転換、「価値創造の土台を問題にしつつも新しい価値体系を創造する」というミッションを考える上でも示唆的な内容だと思います。少なくともマーケットというものを単に善悪とか是非とかそういう静的で余り面白みのない観点から問うことではなく、もっとバイタルで格闘するに足る存在として捉えることを助けてくれるのではないかと思います。

これを読んで面白いと思った方にはこの本の序文も書いているハイエク(1974年ノーベル経済学賞受賞)の著した「貨幣発行自由化論」がお薦めです。

■アイデアのつくり方

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ひとむかし前までのビジネス概念ではアート的な感性の洗練や遊戯性、価値概念の転倒や塗り替えといったアプローチは決して馴染まず、むしろもっと定型的な手法の積み重ねやチームワーク重視的な意思決定が好まれていました。

ただ、生産拠点の効率を押し上げていく方法論や今までの合議的組織論に留まっているばかりでは今後ますます進んでいくであろうソフト化社会に適合していくことは困難になるのでは?と、いう問題意識がかなりはっきりよ浮かび上がってきているように感じます。

直感や感覚的判断を重んじるスタンスや、より自由に価値判断方法を組み替えていくような手法がビジネス書の棚でもかなり目立つようになってきました。つまり、アーティスト的な価値観の持ち方、活かし方が案外現実のビジネスに於いても実効性を持ちつつあるのでは?と、いうことです。そうすると、ビジネス→アートの方向でも、アート→ビジネスの方向でも、それぞれ双方向に考え方や価値の捉え方、組み替え方を交換できるのでは?と、思っています。

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人はみなビジネスの天才として生まれる アラン・グレンジャーマン著 小学館刊」は、子供の問題解決能力を「子供力」として取り出し、ビジネスのブレイクスルーに活用できないかという視点で著された本です。

月並みな言い方ですが「子供力」の持つ創造性や集中力が企業経営、特にそのブレイクスルーに活かせるとすれば、アーティストはアート表現に於いてと同じく自らの抱えるビジネスの解決能力に於いても優秀である可能性が高い。と、いうことです。特に「視点の切り替え」や「他にない価値観の構築・提案」といったポイントに限ればアーティストの潜在的能力は普通のビジネスマンよりも数段優れている可能性があるのです。

また、「アイデアのつくり方 ジェームス・W・ヤング著 阪急コミュニケーションズ刊」を読むと、作品製作時のアーティストの脳の働かせ方がいかにビジネスアイデアの着想時のプロセスといかに近いのか?と、いう点に気づかせてくれます。もちろん資金繰り表を作成したりするのはアーティストは苦手かもしれませんが、現実に事業計画書を書いたり銀行と交渉したりする際に於いても肝心なのは、結果としての収支予測だけではなく、新しい価値を創造する意欲と構想である訳ですからアーティストには起業家としての気質や適性がそもそも備わっている面があると思います。

■知的財産権を味方につける

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特にブロゴスフィアやウェブ2.0を巡る議論ではクリエーティブコモンズに関しての議論を聞く機会が事情に多いようです。でも、その一方で著作権や意匠権など、知的財産権に関してのベーシックを踏まえた議論というのはなかなか難しいようです。でも、芸術に限らず、知的創造物を用いてビジネスを手がける場合、そのライツを考えていく上でのツールを持っているかどうかという点は非常に大切な点です。

そもそも法律というのは問題解決のためのツールだと思うのですが、日本人の法意識は、どうしても何か不可侵の法体系が透明かつ抽象的なドグマとして存在しており、法を自己のツールとして使いこなすという概念は非常に育ちにくかったように思います。

エンタテインメント契約法 内藤篤著 商事法務刊」は、出版、上映、放送、ゲームなどのコンテンツ取引契約について個別具体的に踏み込んだ法解釈をまとめた本です。

文体もフランクで、しかも実例が多数引かれているので読み進めやすいです。また、日本ドメスティックの商習慣も踏まえているので、それもとても好感できます。

コンテンツ契約が決して静的にフリーズされたものではなく、時代の動静に応じて変化していくものであること。個別の条文や判例を丸暗記しなくても、そのコンセプトを咀嚼することで自らのライツマネージメントに活用可能であることをしっかり掴むことができます。もしかするとアーティストが契約交渉に対して前向きに取り組みことの価値を再認識できるかもしれません。

■マネーやローを避ける必要はない

経済や法律に主体的に触れないままなんとなく(好き嫌いやポーズだけで)敵視してしまうのはひじょうにもったいないことのように思います。必ずしも経済学や法学の大家になる必要はないと思うのですがアーティストが自らの精神的自由をより高度に維持し、またより広範な視点で自らの表現レベルを押し上げていくうえでも、マネーとローという究極的かつ普遍的な問題解決ツールを前向きに捉えるのは決して無意味だとは思わないのです。

ここに挙げた本は私の限られた視点、価値観でセレクトしたものですが、まだまだ刺激的で役に立つ本はたくさんあるだろうと思います。ただ、もし、アートを生業として意識的に研ぎ澄ましていこうという志向性をお持ちの方が、そのとっつき難さからビジネスとかマーケティングに対して抵抗感を持ち続けているのだとすれば、その固定概念をブレイクスルーするためのビタミン剤として試しに服用してみては?とお薦めします。

参考リンク:

 アーティストにこそ薦めたいアート・ビジネス本ガイドブック(2)

 http://rblog-biz.japan.cnet.com/takahito/2006/07/post_a299_1.html

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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