最終更新時刻:2008年10月6日(月) 19時43分

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オンナコドモアート再考 フォトシェアリングは“複製”芸術ではない

公開日時:
2006/07/05 00:40
著者:
尊仁

fotolog.book』という書籍の存在と、それを“体験”したことによって変化したデジタル画像への視点。また、そのことを通じて捉え方の変わったFlickr.com。以上を『オンナコドモアート』という切り口で再考してみる。

■もはや「複製芸術」ですらないフォトシェアリング

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Flickr.comに代表されるフォトシェアリングサービスが日々ハンドリングしている画像データの膨大なストックは、かつてなかった視覚的体験をもたらしつつある。そして、それはもはや複製芸術ですらない。複製技術がもたらすのは大量にコピーされたアナログ・マテリアルであり、Flickrがもたらしているのは大量にデリバリーされたデジタル・コードなのだ。

またFlickrでは、それらのデジタルフォトは様々な方法によって意味情報を付与された状態でシェアされるため、まるでオブジェクト指向プログラミング的な文脈に於ける「オブジェクト」のように、それ自体が自らの成り立ちやプロフィールを有した状態でデリバリーされる。

それは端的に言えばコミュニケーションのローコスト化に直結したファンクションであるだろうし、またさらにそれを敷衍するとすれば、新しい共感状態、新しい物語共有状態を醸造するためのセマンティックネットワークの萌芽とも言い換えることができるかも知れない。

そういう見立てで言うと、Flickr.comが育成しているような視覚環境は、意味ネットワークの多層的な交感状態が作り出すであろう「小さな物語」がその膨大なデジタルデータに寄り添いながら輝きを増していく新しいアウラの出現と獲得を予感させる。

■オンナコドモアートの可能態を考えるとすれば

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以前のエントリーでFlickr.com(に代表されるフォトシェアリングサービス)が輩出するかもしれないアート表現の担い手層を敢えて『オンナコドモ』という表現で括った。

ただそれにはきっかけがあって、まず家庭用スナップに必ず登場する『子供の写真』(というよりこれが主役といってもおかしくはない)。これはかつては単純に“成長の記録”を写し撮るという目的に奉仕するものでしかなかった。しかし、Flickrを検索してみると一目瞭然なのだが、ここに投稿されている多くの子供写真はその領域を軽々と超えている。

つまり、デジカメの普及という社会現象は、単にカメラの使用機会が増えたというだけではなく、被写体を写し撮るという行為そのものの深化をもたらしたのではないかと思える。

そもそも「母親が子供という被写体に愛情を持って接する」という態度は日常的な文脈の範囲内に収まりきるのだが、Flickr.comをサーチしてみて感じるのは、その愛情の表現がデジタルツールのローコスト化によってより深化したことと(フィルム代や現像代が掛からないのでトライアンドエラーがほぼ無制限に可能になった)その大衆化が進んでいること(機材=ハードおよび技術=ソフトの大量流通)。さらに、コミュニケーションコスト低減によって伝達可能性が飛躍的に高まったことである。

少なくとも現代のママたち(実際にはパパも含まれる)が写し撮って公開している子供の写真群は、ただの“微笑ましいスナップ”であり続けてはいない。

■コドモカメラの特徴とは?

さて、そして「コドモ」である。まず子供の写真を見て最初に感じるのは、その大胆な「無思慮」振りだ。まず彼らの写真には「作品」とか「美術」といったフレームワークが存在しない(キレイに撮ることへの欲求とか、被写体への興味などは存分に見て取れる)。

だからそもそも非常にランダムな側面があるし、かと思えば実に即物的に特定の被写体に対してのこだわりを示したりもする。そしてその対象に固着しない軽やかさや視点を選び取る際にあらかじめある美的慣用句が登場してこない自由を見るに付け、それは「ミニマリズム」や「オートマティズム」といった今となってはかなり陳腐化してしまったコンセプトの本来あるべき姿なのかも知れないと感じる。

さらに言うと、ウォーホルからクーンズに至るポップ?ネオポップの流れが意図していたことが“アートそのものの幻想性の否定”というポイントにあったとすれば、「コドモのカメラ」はまさにその正統な後継者!と言ってしまっても言い過ぎではないように思う。

■アート市場にゲートウェイすることの価値とは?

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ただ、ここで敢えて反復しないといけないのは狭義のアート市場に於いては「オンナコドモ」どころかフォトシェアリングサービスがもたらす新しいデジタル画像の流通ネットワークはまるで存在価値を有していないということだ。と言うことは、もし狭義のアート市場にアクセスするのであれば、そのマーケットに接続するためにある一定のプロトコルを取り入れる、つまりギャラリーシステムとの接続を果たすことが不可欠になる。それを非常に単純化すると、

 ・作家に固有の表現(記名性のある表現)

 ・連続性のある表現(シリーズであること)

 ・物質性を帯びた表現(オリジナルを特定できること)

 ・複製が制限された表現(エディションが管理できること)

これらのいずれかを満たした状態で作品(商品)をリリースする必要があると言うことである。

■コピー(複製)ではなくデリバリー(配布)

ただしこれも実は15世紀の油彩とタブローの開発以降(ヤン・ファン・エイクがその大成者とされる)500年の変遷を通じて、また19世紀のダゲレオタイプ発明を経てモディファイされた美術史および美術商品取り扱い慣習のなかで育まれた一形態に過ぎないのでコピーではなくデリバリー、マテリアルからコードへと変貌を遂げていっている複製技術の様相から考えれば必ずしも前提条件ではあり続けない。

ただ、マーケティングの観点から言えば、顧客へのアクセスとニーズの充足という点だけで考えた場合、既に確立している複製(マルチプル)市場にゲートウェイすることは決して否定するべきではないと思う。そこにニーズがあり、アクセス可能なのであれば、それは機会として捉えるべきだ。

また、新しいタイプのギャラリーであれば、そういったチャレンジを通じてウェブスペースの新しい価値観をアート市場の最前線に提案していく機会を有しているという考え方だってできる。

また、マーケットというとき、それは一過性の売り切り型ビジネスではなく、むしろ作家の生涯価値及び顧客の生涯価値をこそ考えるべきなので、そういった既存の価値体系=アート市場の有するメカニズムおよび行動規範を活用する姿勢はある意味妥当なのかも知れない。もしアート的な視点が本来自由で捉われない視点をこそ標榜するのであれば市場メカニズムへの態度も同様にオープンであって構わない。またそれを排除するものは何もないと思う。

関連リンク:

 『複製技術時代の芸術作品 ベンヤミン』

 http://www.dnp.co.jp/artscape/reference/artwords/a_j/kunstwerk.html

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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