■自分を「楽器として鳴らす」とは?
茂木健一郎さんの「クオリア日記」を読んで、「楽器性」という概念に惹かれた。ここでいう「楽器」とは、「言葉にしがたい美しさに触れたときに、人間が発する言葉」に対応している。また、その「楽器」の奏でる美への共感・共鳴への対極に「方法」の優位という態度が挙げられている。
確かに現代美術では、その「方法」そのものの新しさやユニークさがある一定の価値軸として機能しているから、それが前面に出すぎることの貧困は十分に想像することができる。
ただ、ここで敢えて(多少無理やりに)適用範囲を拡張するとコンピューティングやウェブサービスの世界は、そもそも「方法」の競争とも言い換えられる。
でもその一方で、じゃあ同じ方法を選択した場合でも、「より受け入れられる場合と」「余り受け入れられずに細っていく場合と」がそれぞれあるよなあ・・と当たり前のことに気づくので、恐らく「方法」に於いても、それを選択し、磨き、届けていく上での美学、いわば「楽器性」と言い換えてもよい面があることに思い至る。
■「方法」に於ける「楽器性」
特にコンシューマー向けに直接デリバリーされているサービスにはそれが顕著だ。きっと「方法」を磨き上げていくプロセスに於いても、結局はエンドユーザーの声(それはなかなか捉えにくい、声にならない声のようなモノかもしれない)を受けて美しく響く楽器性がなければ、結局それは利用者の琴線に触れないだろうし、ハートを捉えることができない。そのことは恐らく利用者にとっては自明の理なのだろう。
利用者はそのサービスの快適性や利便性を微妙な差異を通じて敏感に感じ取る。「楽器」が軽やかに鳴動しているとき(ユーザーの声を受け止めしっかり反応しているとき)には「より受容され」、反対にうまく鳴り響かない場合(声を聞かず、共鳴できていないとき)には「排除されやせ細っていく」。また、そういった現象が現れやすい領域については、そこで市場性が正しく働いているとみなせるのではと思う。
じゃあ、安易な「方法の強調」が「豊かな楽器性」を排除してしまうとされる現代美術に於いては(非常にワイルドな二項対立ですが)、その市場性が正しく働いていないのか?と言えば、まさしくそうなのかも知れない。
※日本の現代美術市場の特殊性については「永遠に女性的なる現代美術を読む」もご参照ください。
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