デジタルフォトグラフィーのうごめきを最初に感じたのは、一冊の写真 集を通じてだった。
それは池袋のジュンク堂本店でたまたま刊行された直後の「Loretta Lux」を手に取ったからで、実は、その写真集は非常に好評で既に増刷もかかっているのですが、とにかく余りのインパクトに店頭で息を呑み、しばらくその場で心を奪取されてしまった。

Hidden Rooms 2 2001 Loretta Lux
彼女の写真はよく評されるように、西洋美術の正統派ともいえる見事な絵画的構成美と静溢な質感表現を有しており、「まるで絵のようだ」といわれる。私が最も近いと思ったのはスペインの画聖ベラスケスのタッチだったのですが、実際、彼女はそもそも画家としてキャリアをスタートしており、写真表現は1999年に始めたばかり。それこそ数年で世界中の著名美術館にコレクションされ高い支持を受けていることからすると、驚くほど短期間にその成功を収めたことになる。
デジタルフォトグラフィーおよび「ピクチャー」を語るにあたってロレッタラックスは恐らく欠かせない。彼女はデジタルカメラで撮影を行い、それをデジタル編集することであれらの他に変えがたい新しいイメージ群を産み出している。
それはコンセプチュアルというよりも、まさしく絵画としての美的な存在感。そのイメージそのものの清新さと強度そのものによって評価されるべき「新しい絵画」だ。東ドイツ出身であることからベッヒャースクールとの関係を考えたくなるが、どうもその見当は余り当たっている様には思えない。
なにしろ、作品を一目観た瞬間に「あぁ、こういう表現がありえるのか!?」と感じたことをよく覚えています。つまり、デジタル合成によるスーパーリアルの強調ではなく、あるいはテクスチャー操作による擬似絵画の捏造でもなく、はたまたフォトモンタージュのアイデア勝負でもなく、「新しい絵画」としてデジタルメディアが有効であることの証明を目の当たりにしたのでした。
恐らくロレッタラックスは「フォトグラファー」とは呼ばれないと思います。もちろん作品は写真美術館にも収蔵されていますし、クレジットにもイルフォクロームプリントと、写真のプリントとしての表記が掲載されていますが、日本で云う「写真」とは違う文脈で受け止められているのだろうと思っています。
それを簡潔に一言で言うと「ピクチャー」なんですね。そこではデジタル編集の可否とか適不適はもう余り関係なく(日本だと未だにデジタルカメラへの懐疑論、そしてデジタル編集の是々非々論がある)、逆にデジタル編集を過激に強調することももはや「古臭い」んじゃないかという程度に成熟していきている。そんな状況が垣間見えていると思います。
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