最終更新時刻:2008年8月30日(土) 2時12分

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「永遠に女性的なる現代美術」を読む。

公開日時:
2006/06/05 20:48
著者:
尊仁

■永遠に女性的なる現代美術

Helen van Meeneの『PORTRAITS』と同じ便でアマゾンから届いた『永遠に女性的なる現代美術』をさっき読み終えた。この論考は非常に秀逸で、日本のコンテンポラリーアートを巡って述べられた幾多ある考察の中で、これほど説得力のあるものは稀有だと言っていい。

物凄く乱暴に内容を要約すると、『日本のカルチャーおばさんに相手にされない日本現代美術とは?もしかするとおばさんそのものが現代美術なのでは?』論なのです。

この限りなくパンクな論考は、こと現代美術とか批評言語とかポストモダンとかが大好きな良識ある知識層にはまるで受け入れられない破天荒な難癖に聞こえるのではないかと推察する。

ただ、一時期、まさにそのカルチャーおばさんとの接触が非常に多く、自分自身のビジネスとしてもある程度深く関わらざるを得なかった時期のその体験・体感から考えても、この仮説は事態のかなり深層を穿っている。

少なくとも自分自身が日本のコンテンポラリーアートを巡る状況に対して感じる、独特の違和感のようなものを言い表す仮説としては、それこそ「迫真の描写」と言っても良い。

まず現代美術批評を考える上での違和感の在り処を自分なりに整理をすると、

1)幾ら内省的、心理学的、認知論的、歴史学的、美学的に研ぎ澄まされた美術批評であっても、その芸術表現の深耕(深奥の探求)にベクトルの向かった批評は、突き詰めれば「好きか嫌いか」の二分法に陥る可能性が高い。

2)その表現が市場的にも認知的(実は同じことだけど)にも、受容され、吟味され、評価されるその構造を、その土地や時代に即して捉えなおさないと、その表現の持つ価値体系を洗い出すことは難しい。

 つまり、ヨーロッパやアメリカにある商品市場や鑑賞空間、価値体系などをそのまま移し変えても意味をなさない可能性が高い。アートの受容形式は社会や市場と強く結びついている

3)商品市場主義は、まず普通に生存する上でも避けて通れない筈。また、それを批評的に捉える試みにしても商品市場のマトリックスの内部に取り込まれる「商品」に過ぎないという認識も不可欠ではないか?

 たとえば市場性の外にある批評は果たして存在するのか?まず、その表現は(市場の外にあるという場合)認知可能なのか?あるいは、それは(表現として)持続可能なのか?はたまた、それらは批評した時点に於いて既に言語市場化していないのか?

永遠に女性的なる・・」を読んで上のようなことを考えたのですが、確かにカルチャーおばさんに見向きもされない日本のコンテンポラリーアートというのは、本格的に駄目なのかもしれない。

■カルチャーおばさんをナメてはいけない!

例えばこの本のジャケットに使われているティルマンスなどは確実にカルチャーおばさん達から的確に評され、しっかりと支持をされるだろうし(この本で取り上げられている作家に即して言うと)、メイプルソープリヒターなども一流どころとして適正な取り扱いを受けるだろうと思う。

その表現が外部に開かれており、ビジネスとしても一定のレベルで競争が成り立っている場合には、その市場性や事業性が「不穏当」なこととか「不健全」なこととして扱われることは余り無いように思う。

それが、なぜかコンテンポラリーアートの場合はそういう風ではなく、そもそも「それはビジネスなのか?」というレベルで出口が見出せないまま、内に向かってひたすら概念や言語ばかりが内省的にどんどんと深化しているように見える。

でも、本当はカルチャーおばさんたちの洗練された日常会話のなかで普通にネタになる程度には「成長」をしない限り、「表現としての」将来はないのでは?と本気で思う。それほどおばさんたちは先鋭的だし、明らかに見識があるのだ。

また、そういったおばさんたちの見識にさえリンクすることのできない批評言語では全然駄目だと思うのだ。それに統計データは恐らく無いと思うのだが、カルチャーおばさん市場はかなりの経済規模に膨れ上がっていることが容易に想像できるので、そことリンクできないことの損失はかなり大きいのでは?

※ちなみにこの「永遠に女性的なる・・」の著者清水譲氏は、リヒターの「写真論/絵画論」の翻訳者。また、版元の淡交社は京都の鞍馬口にある茶道関連の書籍を得意とする出版社。そういった背景も踏まえて読むと、またさらに味わいのある一冊なのです。

「永遠に女性的なる現代美術」 清水穣著 淡交社刊

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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