13才にとってのアーティストの定義
どんな難しいことでも、コドモ向けに説明を試みようとするとそれなりに知恵を絞って噛み砕くものだ。
それでも小学生相手とかだと理解の枠組みそのものがまだ未整備だったりするので、少し対象年齢を上げて中学生相手に説明するという前提でアイデアを整理をしてみるという方法は有効だ・・。と、もっともらしい前振りで切り出そうとしているのは、「画家」という職業について「13才のハローワーク」に於いて説明されていた項目がなかなかリアルで笑えなかったからだ(いや、むしろリアルすぎて笑える!と言うべきか!?)。
美術系の大学や、専門学校に行って、基礎のデッサンから学ぶのが一般的だが、学校を出たからといって画家として認められるわけではない。学校や美術教育とは無縁の画家の作品が脚光を浴びることはしばしばある。日本には画壇というものがあり、絵の団体の公募展に応募し、何度か入選すると、とりあえず画壇に入ることができる。しかし、絵画というアートの本質と、画壇とは何の関係もない。画家にとって、もっとも大切なことは、絵を描き続けることである。学校の美術教師や絵画教室の先生などをしながら、あるいはほかに美術とは関係のない仕事を持ったり、アルバイトをしながら、親や恋人の支援を受けながら、何でもいいから、とにかく描き続けることだ。絵が売れても、売れなくても、絵画表現の意欲と喜びとともに、何年も何十年も絵を描き続けることができれば、その人は画家である。
少なからず画業を志している方々は、敢えてここまで明言しないまでも、このような気概を持って取り組まれているのではないか?と、思う。
また、なんとなく芸術家という職業に対して「聖なる役割」を求めている方々の場合についても、アーティストの理想像としてはこういった「精神的求道者としての取り組みを人生の中心に据えた」それこそ目先の生活については「敢えて清貧に甘んじることを潔しとする」ような「無欲の人物」を想像するのではないか?と、いう気がする。
ただ、私にはこういう社会的ポジショニングが普遍的なものだとはとても思えない。少なくとも一流の表現者(これを一般的な意味合いで職業と呼んでいいのかどうかは微妙だが)が経済的成功とは全く無縁に、ただただ表現をのみ追い求めるべきというイリュージョンには共感を覚えない。
アーティスト価値の最大化とは?
また、「花田卓也の日記」から引用をさせていただくが、「アーティストの価値の最大化」というエントリーで、海外のエージェントが取り扱いアーティストの「商品概要」を花田氏宛てに送ってきたという記事があった。簡潔だが非常に明快な要旨なので、そこに掲載されていた「商品概要書」の一部を転載します。
[概要]
アーティストヴォイ・ソボン氏のマネージメントを務めるMystic Lizard Entertainment社(氏が実質的なオーナーであろう)の自社製造販売商品として外科用のステールワイヤーを使用し、色ビーズを施した製品「マンダーラ」を開発し、アメリカ、イギリス、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、スイス、フランス、日本において1ヶ月間にわたる試験販売を行ったところ各地において、1800個以上の販売に成功。
[商品販促]
現在「マンダーラ」の販売方法は、インターネットとTVコマーシャルに限定。
[知的財産権関連]
「マンダーラ」そのものは約3000年前のインドのモンク僧によって作られた作品で特許は取得できないが、Mystic Lizard Entertainment社は教典のようなマニュアル書籍の著作権を有する。
[ターゲット]
試験販売国では子供から大人まで幅広い支持を得ており、基本8歳以上のすべての年齢に受け入れられる商品だが、特に若年層にフォーカス。
[効用]
ストレス発散のみならず、自己学習、自己訓練に適している。
[競合]
中小企業メーカーが参入し、「セレステアルオーブ」や「ブレインチューサー」などが存在
[価格帯]
$29.95(競争優位性のある価格帯に設定)
[今後の展開]
年間5000個の販売目標を設定。
どうでしょうか?いわゆるマーケティングに関わるお仕事に就かれている方にとってはどうってことのないありふれたドキュメントだと思うのですが、もしかすると芸術畑に身を投じている方にとっては「ありえない」内容なのかもしれません。
ブロゴスフィアに「市場原理」はあるのか?
ここでいきなり話は飛ぶのですが、そもそも「経済」とか「市場」については、それを捉える側の捉え方によって非常に大きく様相が変わります。ここでも「13才のハローワーク」のようなシンプルで的確な説明があるといいのですが、例えば「市場原理」に関してしっくり来る説明といえば例えばこんな感じです。
こういう人の頭にある「市場原理」というのは、公共性と無縁なエゴとカネの世界なのだろう。しかし経済学のもっとも重要な発見は、市場原理は公共的な意思決定を分権的に行うメカニズムだ、ということである。取引は一見、個人が私的に行う活動だが、それが一定の条件のもとで市場で集計されると、社会的にも(政府による集権的な決定よりも)効率的な結果をもたらすのである。
(「新聞は公共財?」 池田信夫blogより)
いわゆる「神のみえざる手」というコンセプトですね。そして、私にとってブロゴスフィアとは、市場原理のメカニズムとパラレルな「情報と付加価値を結びつけるダイナミックな生態系」のように見える。
ただし、ブロゴスフィアとかロングテールとか言っても、個々のブログやブックマークを一生懸命目を逸らさずに追いかけたとしても、なかなかこういった「市場性」の側面は見えてこない。もちろんブログ圏で膨大に発生しているコミュニケーションは「市場」に於ける「取引(=トランザクション)」と「=」ではないので、いまのところはアナロジーに過ぎない。
だが、そうは言ってもAdWords/AdSenceなどの取引プラットフォームの浸透と共に、双方はただのアナロジーを超えてますます近づいている(CNETのレッシグブログにてCass Sunstein氏が書かれている「ブロゴスフィア(ブログ圏)」では、市場的価格のメカニズムはブロゴスフィアには認められないとしている。これはじゅうぶん検討に足る指摘だと思う。
ただし、ここで取り上げられているPoint of viewはハーバーマス対ハイエクの政治学論争なので、ウェブエコノミーを巡る論点とはまた異なる論点なのだろう)。
例えば「TuneCore」のような(TuneCoreはApple iTunes Music Storeとミュージシャンを結びつけるエージェンシー的サービス)続々登場しているウェブ上のマネタイズを支える様々なプラットフォームの進化次第では、ブロゴスフィアの相互評価ネットワークが結果的にはひとつの大きなマーケットプレイスを形成する。そんな可能性がじゅうぶんにあると考えている。
コンテンポラリーアーティストと市場原理
特にコンテンポラリーアートのような非定型で嗜好選択性の高い商品の場合は、特にこのようなメカニズムが有効に機能するのではないかと考えている。
これは私のイメージしているモデルに過ぎないのですが、ことアーティストに限らず「市場に於けるプレイヤーは様々な役割、持ち場を担って」おり、その「最適化された生産と評価のメカニズムとして市場原理が機能を果たす」と考えてみれば、あなたがブロゴスフィアに限らずこの「市場経済システム」の中で何かを為す事には「必ず他者より優れた何か」が求められ、またその対価としての「報酬が得られることで、さらなる投資そして鍛錬等を通じて、質的あるいは量的な向上が可能」と考えられると思うのです。
アーティストという「非定型」、「自己による定義の書き換えが不可欠」な職業であるからこそ、その「市場経済」の枠組みそのものを常に組み替えていけるイノベーティブな役割を担っている。
私にとってのアーティストの定義とは、例えばこのようなモデルとして説明できます。いつか「13才にとってのアーティスト像」が今とはまるで異なったものになるといいと思っています。
関連エントリー:
「iTMSオデッセィ 歴史の非連続性についての考察」
http://rblog-biz.japan.cnet.com/takahito/2006/05/itms_65fb.html
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