最終更新時刻:2008年10月8日(水) 19時27分

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「jpeg girls」 ロングノーズモデルの現在進行形

公開日時:
2006/05/21 22:38
著者:
尊仁

ロングノーズ」論を掘り下げる前に、「ロングテール」論のおさらいを....

ロングテール理論に寄せて述べれば、ニッチなコンテンツであっても一定のティッピングポイントに達する支持を獲得すれば、それは先行指標となって、資金回収可能性を高め、それどころか金の卵として確度の高いキラーを手に入れることと同義となりうる。ひとえにこれまで注目されず、人知れず消えていったコンテンツであっても、そのコンテンツにたどり着く機会がインターネットやデジタルコンバージェンスによって拡大し、しかも低コストで一定の閾値を超える視聴量を獲得することとなる。

(「ロングテールの複層構造にみる新たなコンテンツ流通と回収モデル 花田卓也の日記より)

物理的に売り場面積が限られていることにより認知機会が無かった過去の膨大なアーカイブ。たとえば出版物とか音楽パッケージなど、「個人的な嗜好性との関連性が非常に強い」が「物理的な製造および流通のコストが掛かる」アーカイブに於いては、ロングテール論はまさに福音と言える。

「時間と場所を超える」から「機会の普遍化」へ

少し前までのオンラインコマースへの評価とは、「時間と場所を越える」という機能面への評価だったのだが、ロングテール論により「ネットそのものが総体としてマーケットプレイスを実現している」という視点にシフトしていっている。

グーグルの提供しているAdSence/AdWordsに限らず、情報のネットワークとは要するに価値のネットワークであり、インフォメーションは「経済循環」と可視・不可視に関わらず常にリンクしている。「ブログを読むこととエコノミーとは無関係では?」とのご指摘もあろうかと思います。だが、私がこのブログを書いているということは、つまり、この「現在時間」を投資しているということであって、あなたがこのブログを読んでいるということは、要するにその間の「時間」を投資していただいているということだ。

Web 1.0時代に「時間と場所」から解放され、Web 2.0時代に「検索性(ファインダビリティ)」という自由を得た我々にとっては、もはやそれがデジタルであるか否か、あるいはそれがネットワークされているのかいないのか?といったことは、もはやそれほど重要ではないように思える。

最後に残るのは「時間概念」

物理的制約が捨象されるとかえってその制約条件は不可視になってしまう。だからこそ、「アトムとビット」という二項対立は無意味化する。だが、そうなった今でも捨象しきれない重要なファクターがある。それが「時間」だ。

実は「ロングテール」論も、「時間」概念ととても深く結びついている。例えば、一例としてAppleのiTMSでは、楽曲が細切れに収録されており、当然購入単位も一曲ごとだ。

しかも、その評価システムなど含めたトータルなファインダビリティに於いても、できるだけ効率よくニーズに合致した楽曲にアクセスできるようお膳立てすることで、「細切れのニッチ時間」を活用できるよう丁寧にデザインされている。

アトムの側からビットを見ると、そういった効率性が非常に非人間的で殺伐とした印象を与えるようだが、どちらかというと「効率性により豊かな時間を取り戻す」ための仕組みとして考えた場合よく出来ているのでは?と、感じる機会が多い。

Webには、「ロングテール」以前に「ロングノーズ」がある。

だから、ここで無理やり整理すると、「ロングテール」は、コンテンツを利用・活用する際の時間概念であり、「ロングノーズ」はコンテンツを制作・公開する際の時間概念と言える。

例えば音楽レーベルや書籍出版社が、音源や原稿にファイナンスし、それらをマネタイズするための経済システムだと考えればブログ的な「ロングノーズ」モデルはそれらの経済システムにとってのプリプロセッサーとして有効活用できる筈だし、ブロガーの側にも既にそういう意識や関心が、かなり明確に浮かび上がってきているのでは?と、考える。

また、アフィリエイトやはてなポイントなどの比較的ダイレクトなマネタイズ・サービス以外にも、ブログその他のCGMにより育成・回収することのできるコンテンツおよびエコシステムは、少しずつ増えてきている。

一時期もてはやされたブログ系出版社がそうだし、このCNETで連載され、はてなによるプロモーションによって一躍クローズアップされた「ウェブ進化論」も「ロングノーズ」作品だ。この場合、執筆期間だけをカウントしても26ヶ月掛かっており、そのロングタームの中で貴重なアーカイブと著者の信頼性とがしっかりと蓄積されている。もちろん、「英語で読むITトレンド」と「ウェブ進化論」は同一コンテンツではないが、この「ロングノーズ」期間が有形無形に「ウェブ進化論」に結実していったように感じる。

こういった流れの中では「ウェブ全体をマーケットプレイスとして考える」考え方は有効だし、さらに視点を広げると「リアルの媒体や市場も包括して考えるウェブマーケティング」のような視点も有益だと思う。例えば、一言で「バズマーケティング」と言っても、そのステージは必ずしもウェブ空間内のみには封じ込められない。

「jpeg girls」というロングノーズ

先日の「ロングノーズ現象 mixiがインキュベートした本『ぞりん』」でも少しだけ触れたデジタルフォトグラフィーのプロジェクト「jpeg girls」も同様に「ロングノーズ」だ。これもmixiを最大限活用することで成り立っている。

そこには経済原則に即して言うと、まずは「ニッチ時間を寄せ集めて制作プロセスを運営する」というとても明快なメリットがあって(そもそも、そういう制作方法を採らない限り運営できない)、そういう意味ではロングノーズは必然だ。ただ、その一方で、「より深くそれについて思考を巡らしたり、世の中や関係者達とやりとりしながらじっくり作品を掘り下げられる」という副次的な恩恵があることにも気付いた。

まだまだ作品としてカタチになるまでには時間が掛かりそうですが、そもそもある時代に生きていることの具体的なプレゼンテーションとして考えると、その成立の経緯や思考のランダムウォークなども含めて、制作プロセス記録が残っているのは面白いのではないかと思っています。

ちょっと前まではこういう試みはメディアアートの文脈で語られることが多かったと思うのですが、そもそも現代美術そのものが「美」というものに対して非常に懐疑的・批判的な分野なので、常に時代性やその置かれた環境によって「価値評価、価値基準」そのものが大きく変化しています。特に絵画と写真を巡る「ピクチャー」を扱う批評言語は、今とても大きく揺れ動いているように感じています。

そういった時代だからこそ、余り確信や確証が無いままですが、勇気を持って余り事例の無いコトをやってみようと思っています。

画像は、現在製作中の『jpeg girls』1号作品のベータ版です。コンセプトは現代日本から送り出す「新しいゲイシャガール」です。

Jpg_01_01_01_3

「jpeg girls beta」 copyright 2006 takahito iguchi

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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