mixiで少し話題になっていたので気が付いたことなのですが、サントリーがこの4月18日にリニューアルしたばかりの清涼飲料水「DAKARA」の駅貼ポスターが、有名なコンテンポラリーアート作品の盗作なのではないか?と、いう指摘がされていました。
サントリー「DAKARA」
http://www.suntory.co.jp/softdrink/dakara/
Phantom-Limb
http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/review/1127/fieldwork1127.html
ふたつの作品の類似点
「DAKARA」の小泉今日子ポスターのイメージはサントリーの商品サイトではフラッシュによるイントロでちらっと表示されるだけなので大変分かりにくいのですが、地下鉄駅構内ではかなり露出しているはずなので、気をつけて見ていると発見できるはずです。
一方mixiで「アート作品の盗作なのでは?」と指摘されていた、オリジナルと目されている作品(この表現は語弊があるかもしれませんが、便宜的にそう呼びますね)は、2003年にヴェネツィア・ビエンナーレの日本館でも非常に刺激的なインスタレーションを行った小谷元彦の「Phatom-Limb」(1997発表)という作品です。
これは、5枚の写真が左右に並列的に配置された平面作品で、白いワンピースに身を包んだ実物大の美少女が頭部だけ少しづつ左右対称に角度を変えて写し出されています。
実物を見たことが無いのですがウェブの非常に荒い解像度の写真を見るだけでも、少女のボディが漂白された真っ白い空間内に浮遊しているような独特の存在感を与える作品です。そして、彼女の両の手のひらには聖痕(スティグマータ、キリストの磔の痕を表す)を喚起させる赤い血痕のような印が印されています。
一方、「DAKARA」のポスターは、白い背景と白い衣装、居心地の悪さが漂う幾分不安定なポーズ。など、共通項を探せなくもないのですが、その一方で「Phatom-Limb」の少女に比べると、既にかなり貫禄のある女優が被写体。しかも、宗教性や聖像的シンボルからはまるで無縁な「風呂上り?」的イメージ。など、共通しない部分も大いにあります。
実は、私はウェブでしか見たことが無いのに「Phatom-Limb」という作品にとても惹かれていたので、「DAKARA」のポスターが似ているというmixiでの指摘に気が付かなかったのが少し悔しかったのでした。それはともかく、マーシャリズム=広告グラフィックとファインアートとは、特にアメリカ60年代のポップアート台頭以降その境界線が非常に曖昧です。アンディウォーホルの前身が、広告グラフィックスのデザイナーだったことはよく知られています。
現代芸術は既製品芸術から始まった
そもそもコンテンポラリーアートの扉を開いたエポックメイキング的作品「泉」は、マルセルデュシャンが既製品(レディメイド)の小便器をただ美術館に展示しただけという作品なのです。余談ですが、面白いですよね!このアプローチ。大変勇気のある作品。大量生産時代のアート表現の先駆けです。もちろん作品発表時点では非難ごうごうでした。
話を戻すと、仮に明らかな剽窃的表現であったとしても、そもそも「オリジナリティ」を巡る概念そのものが近代の枠組みからは大きく揺らいでしまった今日、簡単にその是非や可否を論じきれないと思います。現実的には、広告→芸術、芸術→広告の双方が常に交換可能だといっても良いのが今日的現状だと思います。考えようによっては真似られることは、それだけ参照価値があるということでもあります。
そういった文脈で考えるとナルミヤと村上隆の和解というニュースはなかなか微妙な事件だと思いました。村上隆の作品そのものが様々なキャラクター文化やアニメ文化の意識的剽窃=積極的パクリだと思うので、それが企業およびその営利活動に使われたとしても、それはじゃあ決定的にどこが違うのか?というと本質的な部分で違いは無いように感じます。であれば、こういった企業による意匠のコピーという現象を表現によって切り返すようなカウンターによる新しい提案もあり得たのでは?と、思います。
村上隆 DOB君
http://www.parco-city.co.jp/dob/
ナルミヤインターナショナル
http://www.narumiya-net.co.jp/
現代美術家 村上隆が訴訟提起した著作権侵害事件の和解による終了について
http://www.kaikaikiki.co.jp/news/list/murakamis_lawsuit/
ESEミッキーズ
http://wtbw.blog50.fc2.com/blog-entry-16.html
あと、ラップユニットHALI CALIのジャケット(音楽のススメ、2004年作品)がアーティスト 会田誠の絵画作品の盗用ではないか?と、いう議論は一時期ネットを賑わせました。ただ、このケースでは、会田誠自身が「気にしていない」ということですぐに沈静化しました。こういう場合、なぜか当事者よりも全く関係の無い第三者の方が盛り上がってしまう傾向があるようです。
また、その位置づけや対応関係は全く違うとはいえ、ここで問題になった会田誠の「あぜ道(1991年作品)」も東山魁夷の「道」からの引用という評価もあるので、やはり純粋なオリジナルという考え方自体がどうも余りにピュア過ぎて現実的ではないという印象を覚えます。
視覚表現は遺伝する!
もう少し長いスパンで考えると、商業的かどうかという狭い区別を超えてさまざまな表現に引用をされ生き延びていく「遺伝子」を持った表現というのはあるので(レオナルドダヴィンチや写楽、北斎などを挙げると分かりやすいのでは?)、視覚表現の遺伝的ネットワークのようなものを想像してみたりするほうが実際面白いと思います。
「DAKARA」のオリジナルとされている「Phatom-Limb」についても、キリスト教のイコンを参照しているという点では、ある意味その視覚表現のネットワーク網の中に存在しているからこそ意味と価値が浮かび上がってくる表現だとも言えます。
キリストの誕生→受難→磔→復活というのは、西欧においてはともかく膨大な画像ネットワークを形成していますからね。
でも、目前の現象だけ捉えると、このパクリ疑惑についてはmixiでも議論を呼んでちょっとした問題に発展する可能性がありそうです。確かに似ているのです。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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