GoogleがTime Warnerに10億ドルを支払い、AOLの株主となることが決まったが、まだ不明な点も多いこの提携の意味合いについて少し考えてみたい。
まず、最初に(念のために)記しておきたいのは、AOLが最早かつての「ISP最大手」ではないということである。つまり、ブロードバンド化への波に乗り遅れた--大手のケーブルTVや電話会社に後れを取ったAOLは、かつての豊富なコンテンツをえさにISP契約者を増やし同時に広告収入を伸ばす、というビジネスモデルが成立しなくなった(契約者の数はピーク時の2600万人から2000万人まで減少している)結果、2004年頃から通常の検索/ポータルサイトへの転身 を強力に進めてきており、その成果が今年になって表れてきたという状況にある(月間のユニークビジター数は1億1000万人まで増加している)。しばらく前に、Time WarnerのCEO、Richard Parsonsが「AOLは、Time Warnerの期待の星」という旨の発言を行ったことがニュースになっていたが、雑誌部門の広告の伸び止まりや、音楽部門の低迷などが相次ぐ同社にとって、将来の「金の卵」への期待がかかるAOLは、かつての「乗っ取り王」Carl Icahnの言いなりになって、(IPOで得られる)現金と引き換えに手放せる存在ではなかった、との事情がある。
さて。この数日間に公開してきた 記事にもあるように、米検索広告市場における各社のシェア(10月時点)は、Googleが48%、Yahooが22%、MicrosoftのMSNが11%、そしてAOLが7.2%となっている。今年になって自前の広告販売/配信システム 「MSN adCenter」を立ち上げたMicrosoftとしては、この「11+7.2=18.2」で一気にYahooに迫ろう、あるいはそれを超えて、さらにGoogleを射程距離に・・・との考えから、AOLとの提携を持ちかけていたはずだ。
締結寸前まで進んでいた交渉が土壇場になって引っ繰りかえされ、しかもAOLをさらわれた相手が宿敵Googleとあっては、「Windows Live」「Office Live」 を皮切りに、Ray Ozzieの下で オンラインサービス分野への進出を最優先で進めているMicrosoftが黙ってこのまま引き下がる可能性は少ない。具体的にどんな戦術をとるかは不明だが、たとえば、やはり今年になってネットビジネスへのてこ入れを積極的に進めているFoxなどの動きも絡めて、当然注目が集まるところと思われる。
ちなみに、いわゆるオールドメディアのプロパティばかりが目立つFoxのなかで、「Fox Sports」のウェブ はネットビジネス分野のホープと見られているそうだが、このサイトはMSNの一部として運営されている。そうしてまた、このFox Sportsサイト躍進の立役者といわれるRoss Levinsohnが率いるインタラクティブ部門には、2000万人を超えるユーザーを持ち、広告主にとっては非常に気になる若者層に絶大な人気を誇る最大手のSNSサイト「MySpace」がある。
一方、Googleにとって、この提携は米市場で4番目に大きいポータル--すなわち、それだけ大きな「検索広告の在庫」をMicrosoftに奪われずに済んだというだけでは済まなそうだ。まず、これまで芳しくなかったディスプレイ(ブランド)広告の分野でAOLの協力が得られれば、現状で推定23億ドル規模とされるこの分野で有力な収入源を手に入れる可能性が出てくる(ちなみに、テキスト主体の検索広告市場の規模は今年54億ドルになると推定されている)。
この影響を直接的に受けるのはYahooで、同社は今年すでにディスプレイ広告で3億3000万ドルの収入を得ており、またハリウッド出身のCEO、 Terry Semelの下でポータルからメディア企業への軸足の移動(もしくは業務の拡大)を進めているが、GoogleがAOLのメディアプロパティ--映画、音楽、活字の各分野の膨大なコンテンツがある--を使えるようになれば、Yahooのこうしたアドバンテージも失われてしまう可能性がある。
以上のような次第で、今回の提携が引き金となってメディア/ネット業界全体で大きな地殻変動が始まる可能性が十分にある。(とくにAOLの存在感がほぼ皆無の)日本のネットユーザーにとっては、いずれも縁遠い話題にしか感じられないが、そうした大変動の影響が我が国のメディアスペースに波及するのも時間の問題と思われる。
坂和敏(編集部)
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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