最終更新時刻:2008年7月25日(金) 21時03分

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ボサノバ・オープンソース

公開日時:
2004/11/24 23:50
著者:
編集部

 今日は1日休みを挟んだせいもあり、ブラウザやらセキュリティ関連を中心に、比較的たくさんの記事があがりました。そんななかで、今夜はちょっと趣向を変え、通常のニュースではなく、エキスパートの視点で取りあげたクリエイティブコモンズ関連の話題にちょっと触れてみたいと思います。

 当サイトの常連ブロガーであるL・レッシグ教授らが始められたクリエイティブコモンズに関しては、改めて説明を加えるまでもないでしょう。デジタルネットワーク時代の著作権に関する新しい法的枠組みの構築を目指して始められたこの取り組みから、幾通りかの著作物に関するライセンスが生まれてきています。そして、そのライセンスに使ってファイル共有による流通や事前の許可を必要としないサンプリングを認めるコンテンツ(音楽)を集めたCDを出そう、という試みを雑誌WIREDが行いました(同誌11月号)。コラムの文中に名前の挙がっている16曲の音楽はそのCDに収録されたものです(正直、年輩の筆者などには、David ByrneとGilberto Gil、それにコーネリアスの小山田圭吾くらいしか、すぐにそれとわかる名前がありませんでしたが、実際には思った以上に楽しめました。それはさておき)

 これに連動する形で、同誌では特集が組まれていますが、なかでも「The Open Source Nation of Brazil」という記事が強く印象に残りましたので、そのことを少しお話します。

 地球の反対側に位置するブラジルについては、なんとなく「遠い国」といった程度の認識しかない筆者ですので、すぐに思い出すイメージといえば、ボサノバにサッカー、それにテレビのニュースで年に1度は目にするリオのカーニバルと、これもやはりテレビのアマゾン流域探検・・・といった至ってステレオタイプなものばかりです。そんなこともあって、上記CDの6番目に出てくるGilbero Gilについても、ベテランのボサノバミュージシャン程度の認識しかなく、同氏の過去の活動(急進的すぎて時の軍事政権によって投獄された経験を持つ等々)も知らなければ、現在同国の文化大臣として積極的にオープンソースの普及を進める首謀者として活躍していることも知りませんでした。上記の特集記事にはそのあたりの経緯や現状が紹介されています。

 この特集記事によると、ブラジルはいま世界で最もオープンソースの普及にコミットしている(政府を擁する)国なのだそうですが、同国でコンピュータソフトを含む知的財産(IP)全般の問題に光が当たったのは、実はエイズの感染を食い止めるための医薬品に関する先進国の企業(米MerckおよびスイスのRocheという製薬大手2社)との交渉がきっかけだったとか。この時、国民に対してAIDS防止用の薬を配ろうとしていた同国政府は、供給元となる両社に対してボリュームディスカウントを求めたが、両社がパテントを盾にとってこれに応じず、結局同政府側が、非常時の措置として両社の薬のノックオフを国内メーカーにロイヤルティフリーで作らせる、と圧力をかけ、結局この条件をのませた・・・という逸話が記されています。

 このように、IPが非常に切実な問題と直接に関わる同国の事情を反映して、IT分野でのオープンソースの必要性(?)についても、実に切羽詰まった背景があり、それを物語るような次のようなコメントが記されてもいます。これは同国のFree Software Projectのコーディネータでオープンソースコミュニティと政府のリエゾンをつとめる人物のコメントですが、同氏によると「MicrosoftのWindowsとOfficeを一式揃えるための金額を得るのに、60袋の大豆を輸出しなくてはならない・・・1年もしくは1年半の間WindowsとOfficeを使うために、それだけの作業--大地を耕し、種を蒔き、借り入れ、そして海外市場に出荷する--を行わなくてはならないという話をしたら、農民はきっとぶちぎれてしまう」のだそうです。ちなみに、ブラジルは現在人口の20%=約2200万人が貧困層で飢えにあえぎながら、一方では上位10%の富裕者が全体の約半分の富をコントロールしているという、米国よりももっと富の偏在ぶりがひどい状況にもあるようです。

 こうした、かなり絶望的な状況を改善するための強力な手段としてネットやITに期待が集まるということでしょうが、ただしそうした(ソフトウェアのような)ツールに法外な値段が付けられていては、一部の手にしか入らず、ますます貧富の差を拡大する方向に作用してしまいます。また、そうしたツールを使って作り出すコンテンツについても、そのアイデアの源となる著作物が、現在の米国のような形でがちがちに固められていては、ほとんど身動きがとれなくなる・・・と、このあたりの事情はまさにレッシグ教授が自著のなかで危惧していた通りの様相を呈しているようです。

 そうしたこともあって、この特集の主人公(の1人)であるGilは、クリエイティブコモンズのフリーサンプリングライセンスを使って、自分の曲を再リリースすることにしましたが、さっそくレコード会社(Warner Music)の、しかも米国親会社(Time Warner)から横やりが入ったため、同氏は代わりにかつてインディーズレーベルから出していた曲をこのためにリリースした、という裏話も紹介されています。

 ・・・話がだいぶ長くなってしまいました。
 この特集記事と前後して、元RIAA CEOだったHilary Rosenの書いた「How I Learned to Love Larry (Lessig)」というコラム--その名の通り、かつて天敵と呼ばれていたレッシグ教授の考えをRosenがどういう経緯でやっと理解したか、という内容--もあり、このなかでRIAAが法制化の片棒を担いだCopyright Term Extension Act--ざっくりいうと、著作権の有効期限を従来より延長し、願わくば、あるいはなし崩し的に「永遠に有効」にするためのもの(?)--に関する意図について、「農民は自分の土地を子孫に残せる。ならば、音楽の作者もその曲(の権利)を子孫に残せたっていいじゃないか」という言い分が記されていた(・・・どこか腑に落ちないところがある)のも印象に残りました。これについては、また別に機会に触れられればと思います。

 今日はざっとこんなところです。ではまた明日に。

(翻訳記事デスク)

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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