今回の先端科学技術セミナーは成蹊大学助教授野島美保先生の講演です。
専門はITによる消費者行動とビジネスモデルの変化の研究。
もともとは B to B を研究していたそうですが、近年は B to C へ調査対象を移行し、小売、ゲーム、コミュニティサービスのオンライン化という流れの中で、業種の垣根を越えて共通するルールや特徴を探す研究に取り組んでいます。
今回のセミナーは、主にインターネットマーケティングに関する二つの調査についてのお話しでした。
まず最初に、ネット小売における情報選択と知覚リスクに関する調査、二つ目は、ネット上の口コミとオピニオンリーダーに関する研究です。
オンラインショッピングにおける知覚リスク
まずは、ネット小売における情報選択と知覚リスクに関する調査です。
どういう状況がネットでの買い物を怖いと思わせるか、どういう情報を見ると信頼感が増すのか、といった要因を知るため、アンケート調査を行い分析しました。
ネットの時間感覚ではちょっと古いのですがアンケートは2001年10月に、日本のオンラインショッピング経験者を対象に、ウェブベースでの回答入力で行われ、有効回答数は4750。
14種類の情報を提示し、それぞれをリスク削減・信頼度アップという観点でどれだけ重要視するかという「重要度」を5段階尺度で回答してもらっています。
他にもその人の属性に関する質問もしています。後の分析で使用しています。
「14種類の情報」を表に示しました。
| リスクを削減する情報 | |
| 1 | 商品・サービスが有名である |
| 2 | ショップが実店舗を持つ |
| 3 | 実店舗で現物確認できる商品 |
| 4 | 他サイト・雑誌で紹介された商品 |
| 5 | ショップがマス媒体で紹介 |
| 6 | 専門家による商品評価 |
| 7 | 消費者による商品評価(BBS) |
| 8 | 取引に対する消費者の商品評価(BBS) |
| 9 | 在庫状況表示 |
| 10 | 配送方法と納期の表示 |
| 11 | 個人情報取り扱い規定の掲載 |
| 12 | FAQ(質問集)の掲載 |
| 13 | 商品詳細情報 |
| 14 | 認証・表彰機関によるマーク |
これらをアンケートの回答結果の傾向から、グルーピングすると、以下の4つの因子に分けられます。
これらと属性データを元に分析すると、
という傾向が現れています。
消費者の傾向として考えれば当たり前なことでありますが、やはりきちんとデータとして裏付けられたというのポイントです。
詳細情報は野島先生の論文をご参照下さい。
ところで、野島先生のサイトにはこのような興味深いコンテンツもあります。
オンラインゲームと口コミ
2つ目は、ネット上の口コミとオピニオンリーダーに関する研究です。
現在進行形で研究中のテーマで、一部は野島先生の論文で紹介されています。
「口コミはすごいすごいって言われているけれどどれだけスゴイの?」
との疑問に答える定量的な研究です。
ウェブ上の口コミの形成過程を定量化し、オピニオンリーダー像を明らかにすることを目指します。
ポイントは、サービス提供の場としての「クローズスペース」と「オープンスペース」での口コミ形成プロセスを分けて考えるという点です。
クローズスペースは、企業がサービスとして提供する場であるので、高機能な情報交換手段が用意されていて、比較的濃いコミュニケーションがとられています。
一方、オープンスペースはユーザ自身が自発的に掲示板やブログなどでコミュニケーションをとる場です。
クローズスペースの設計思想として、自社サイト内で、ユーザ同士のインタラクションをどこまで可能にするかが、収益にリンクする重要なファクターとなります。
オンラインゲームなどのクローズスペースでは、全ユーザが同時にコミュケーションがとれる多人数参加型オンラインゲーム「MMO」と、他のユーザとコミュニケーションをとるには意識的な操作が必要な「MO」の違いがあると例として挙げられていました。
実際に行った調査では、クローズスペースでの活動である「ゲーム内コミュニケーション」、オープンスペースでの活動である「外部コミュニケーション」、「オンラインゲーム暦」や「プレイ時間」などの属性情報をアンケートで調べています。
ゲーム内コミュニケーションの項目では、会話をよくするか、友人らにゲームのルールなどの指導をするか、ゲームサービスそのものよりもゲーム内の付き合いを優先するか、といった傾向を測定しています。
外部コミュニケーションの項目では、ブログや掲示板での情報発信、情報収集をどの程度を行っているかを測定しています。
いろいろ知見があったのですが、一つだけ。
口コミ形成で重要な要素はオピニオンリーダーです。
リアルな世界では、目立ったリーダーがいて、外部コミュニケーションと内部コミュニケーションの両方で活躍する、というのが定説だそうですが、MMOの世界ではオープンスペースとクローズスペースとの両方で活躍する人はあまりいないようです。
ある人は外の掲示板で自分の属しているオンラインゲームを宣伝し、別の人は内側で初心者にいろいろとインストラクションしたり、と複数の人たちが役割分担をしていると考えられます。
その後、これらも踏まえて、リピート購買モデルから継続サービスモデルへという流れの話、継続サービスモデルにおける顧客満足度、および、定額制かアイテム課金か等の価格設定の話となりました。
詳細は下記の資料をご参照下さい。
セミナーを終えて
オンラインビジネスにおいて、オンラインゲームのような継続サービスモデルでは
適切な価格決定を行うことは結構難しい課題です。
野島先生による、時間経過ごとの顧客満足度の推移などの調査・分析により、適切な価格が設定できれば、取りすぎ・高すぎによる顧客離れや、取らなすぎ・安すぎによる機会損失を減らすことができそうです。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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