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ソフトバンクの「光の道」論に全面反論する(上)

2010-04-29 18:34:49

プロフィール

佐々木俊尚

現役ジャーナリストが、長年培ってきた取材経験などを通して、IT業界のビジネス動向から事件まで、その真相をえぐり出します。
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いまさらなぜブロードバンドなのか

 

原口一博総務大臣が「光の道」という構想を提案し、それにソフトバンクが「政府案を支持」「光100%を税金ゼロで実現」とぶち上げている。2015年までに、全国の4900万世帯すべてがブロードバンドを利用できるようにしようという構想だ。

 

私は反対だ。論点は以下の3点。

 

(1)日本のブロードバンド基盤はとっくに世界最高水準に達している。今さらブロードバンド普及を政府のIT戦略の主軸に据えるべきではない。

(2)しかしブロードバンドの契約数は伸びず、利用・活用も進んでいない。これはブロードバンドの基盤が未整備だからじゃなくて、生活に直結した使いやすいサービスができあがっていないからだ。

(3)最優先するべきは、ネットが国民生活の社会的基盤となっていくような政策を推進することだ。

 

順に説明したい。まず間違えてはならないのは、ブロードバンドの「インフラ」「普及度」「利用度」はそれぞれ異なるレイヤーであるということだ。たとえば光ファイバー(FTTH)に関していえば、人口比で90%にあたる全長60万キロのFTTH網はもう整備されている。だから「インフラ」はすでに90%できあがっている。しかしFTTHを実際に使っているのは、全体の30%の世帯でしかない。これが「普及度」。つまりインフラはあるが、「FTTHに申し込むことは可能だけど、使う気がない」と思っている世帯が70%あるということだ。

 

さらにFTTHの契約を結んでいても、それがどのように使われているのかというのが「利用度」。

 

私も編集委員になっている総務省の情報通信白書2009年版では、この「インフラ」に関しては日本は世界最高水準であると誇っている。電話料金やブロードバンド料金、光ファイバー比率、ブロードバンド速度などの指標をまとめた偏差値では、2位の韓国や3位のスウェーデンを抑えて1位。これは国内のシンクタンクの評価だが、しかし海外でもオックスフォード大学のブロードバンド品質スコアで日本は1位になっているし、ITUのデジタル利用機会指数では韓国に次いで2位につけている。

 

 

インフラは凄いが利用されていないのが日本のブロードバンド

 

しかしインターネットやブロードバンドの「普及度」では、日本はさほど高くない。先ほどの偏差値でいえば、ネット普及率では1位のスウェーデン59.4に対して日本は55.4。ブロードバンド普及率は1位がデンマーク65.4で、日本はわずか49.1しかない。つまり基盤はあるが、契約している世帯が相対的に少ないのだ。

 

そして利用度はもっと低い。同じく昨年の情報通信白書で、電子商取引/教育・人材/雇用・労務/行政サービス/企業経営/文化・芸術/環境・エネルギー/交通・物流/安心・安全という10の分野での利用率の偏差値を算出したところ、調査を行ったシンガポール、デンマーク、韓国、スウェーデン、イギリス、アメリカ、日本の7か国の中で、日本の利用率はなんと下から3番目の5位にとどまっている。各分野で1位との差が大きいのは、医療・福祉が韓国41.1に対して日本は17.0。教育・人材でシンガポール57.5に対して日本は17.4。雇用・労務でデンマーク61.1に対して日本は35.0。かなり惨憺たるありさまだ。

 

たとえ話をしてみれば、世界に冠たる立派な高速道路はできあがっているが、クルマを持っている人は案外少なくて、さらにクルマを持っている人の中でもきちんと使いこなして楽しんでいる人はもの凄く少ない、というようなイメージだ。

 

だから重要なのは、「なぜクルマを使いこなせないのか」ということをきちんと検証して解決することであって、今さら高速道路を増やすことではない。そんなことは誰だって考えればわかることだ。なのにソフトバンクは「高速道路がまだ足りない! 全国の山間部や島嶼のすみずみにまで高速道路をつくれば、日本はもっと良くなる!」と声高に主張している。

 

 

ソフトバンク構想は道路公団の二の舞にならないか

 

しかもNTTから光ファイバーのアクセス回線会社を分離し、独立させれば税金ゼロで実現すると言っている。あまりにも根拠がない。このあたりは私と同じ総務省タスクフォース委員の町田徹氏が『ソフトバンク孫社長が仕掛ける「NTTの構造分離」への疑問』という記事で指摘していて、私もまったく同意見だ。

 

先ほど、光ファイバーは人口比で全国エリアの90%にまで敷設されていると書いた。残りの10%はどういう場所かといえば、山間部や島嶼など人口密度があまりにも低すぎて、光ファイバーを引いても採算が合わない地域である。しかし人口比では10%のこのエリアが、面積比にすればなんと日本列島全体の約半分にもなる。この膨大な圏域に、採算の合わない光ファイバーを100%敷設し、それでも「黒字になる」というのか。税金ゼロと言いながら、結局は政府が公的資金を注入せざるを得ない事態になる可能性はないのか。

 

そしてブロードバンドのインフラとしてはLTEなどのワイヤレスも非常に重要だし、光ファイバーも将来的には現行の100Mbpsからいずれは1Gps、10Gbpsへと高速化されていく可能性がある。ワイヤレスやギガビットなどが複合的に補完しあうようになっていくのが長期的にみたブロードバンドインフラの将来像だが、ソフトバンクの構想は「現在の銅線をすべて100Mpbsの光ファイバーに入れ替えて長い期間維持すれば黒字に」みたいな話で、長期的な展望が欠落している。

 

さらにいえば、町田氏も言うようにソフトバンクは資料も公開しない。タスクフォース委員にしか見せない「Confidetial」などと各ページに書かれた資料を提示されて、「口頭で説明しますよ」などと言われても、その資料をこのブログのような場所で公開して議論できないのでは意味がない。なぜ密室で議論を進めようとするのか。

 

(下)に続く

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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