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コンテナーの限界なのか、コンテンツの限界なのか
ブログなんて、しょせんはひとつの表現コンテナー(メディア)に過ぎない。Web2.0の時代において最も大切なのはコンテナーではなく、コンテンツそのものだ。オピニオンや感情を外部に表出したいと思い、それを実行に移すというその行為こそに意味がある。パソコン通信のフォーラムが匿名掲示板に取って代わられ、さらにはブログが流行し、そしてまたSNSの日記やケータイ小説へとコンテナーはさまざまに移り変わっていく。
もちろんコンテナーの性質によって、書かれる内容は変わってくる。パソコン通信という閉鎖的で礼儀にうるさいメディアで書かれた言説と、2ちゃんねるで書かれる言説は異なる。ブログで書かれる内容と、SNSの日記で書かれる内容も異なる。マクルーハンが言ったように、「メディアはメッセージである」からだ。とはいえーーそこで自己を表現するという行為そのものの衝動には、何ら変わりはない。
だから「ブログ限界論」を語ろうとするのであれば、それが「ブログというコンテナーの限界」なのか、それとも「インターネットにおける自己表現というコンテンツの限界」なのかをきちんと切り分ける必要がある。
ケータイに自己表現が飲み込まれている
11月23日のRTCカンファレンス『ブログ限界論』で上原仁さんは、各社のブログサービスを利用している人の数が減少傾向にあることを取り上げた。情報のソースはここにある。確かに集計された表を見ると、ライブドアブログや楽天ブログ、はてなダイアリーなどは利用者数が減っているし、急増しているのはFC2ブログとアメーバブログぐらいしかない。このうちFC2ブログに関して言えば、RTCカンファレンスでも問題になったスパムブログに主に利用されていると見られており、これが利用者数の押し上げにつながっているのではないかと考えられる(この件については、別のエントリーで述べたい)。こうしたノイズは別にすれば、全体としては確かにブロガーの数が停滞しているように見える。
とはいえ、この停滞がそのまま「インターネットにおける自己表現」の停滞につながっているのかといえば、実のところそうとは思えない。もうひとつの情報ソースを提示しよう。ネットレイティングスが昨年11月に発表したデータクロニクル2006・ファクトシートだ。2000年4月から2006年3月までの6年間で、パソコンを使ったインターネットの利用者の年齢構成比を調べた統計である。それによれば20代の比率は劇的に下降線をたどり、直近では全世代の11.9%にまで下落。ネットの利用度が比較的低いと考えられている50代の11.8%と肩を並べてしまっている。このファクトシートの解説で、ネットレイティングスの萩原雅之社長は、以下のようなコメントを加えている。
「若い世代で先行していたウェブ利用は、この6年間で着実に中高年齢層に普及しています。また、同時に女性にも普及している様子が見て取れます。一方で、20歳代の比率が減少しているのは、ウェブ利用が全世代にわたり一般化したことによるものですが、携帯電話端末の機能やサービスが劇的に向上し、ECやSNSなどの携帯電話による利用増も要因と考えられます」
結局のところ、プラットフォームが移行しているというわけだ。これは単なるトレンドの移り変わりである。
日本のネット自己表現の歴史
コンピュータネットワークにおける最初の自己表現プラットフォームは、パソコン通信だった。1980〜90年代のNifty-ServeやPC-VANなどのパソコン通信である。この時代のネット文化を担ったのは、私のような40代から50代の人たちである。またほぼ同じ時期、インターネット上のニューズグループ「fj」でも活発な議論が繰り広げられており、言論空間を構成していた。
しかしウェブの普及とともにパソコン通信は衰退した。
1990年代末に「あめぞう」そして2ちゃんねるが登場し、匿名掲示板の時代がやってきた。この2ちゃんねるの興隆によって、fjはすっかり影を薄くしてしまい、パソコン通信と同じ道をたどる。そして2ちゃんねる文化はいまも盛んだが、社団法人日本広告主協会Web広告研究会のリポート「消費者メディア調査」【リンク先はpdf】にもあるとおり、2ちゃんねるの主な利用者層は35〜45歳の人たちである。この層が2ちゃんねるユーザー全体の38.3%を占めている。
ブログの文化は世代的に言えば、おそらくは2ちゃんねるユーザーの少し下にあたる。25〜35歳ぐらいのいわゆるロストジェネレーション層だ。団塊ジュニアと言い換えてもいいかもしれない。日本国内ではブログは2002年ごろからスタートした。当初はニュースのリンクを集めた日記が多数を占めていたが、徐々に論考が加わるようになり、そして2005年ごろからは非技術系のブログも急増して、論断系やエンタメ系、身辺雑記系、タレント系など多数のブロゴスフィアが生み出された。上原さんや徳力さんはこうした文化の中央付近に立っていて、ブログが個人をエンパワーする時代の象徴といえる人たちだ。
ブログからSNSへ
しかし、彼らロストジェネレーションよりもさらに下の世代は、ブログにそれほどの思い入れを抱いてない。ブログよりもミクシィに親和性を感じていて、「ブログは書いていないけれども、ミクシィの日記は書いてる」という人は少なくない。それを指して「オープンなブログではなく、クローズドなSNSを指向するのは、言論を閉鎖空間に追いやってしまう」という批判もある(私も少し前までそう思っていたし、あちこちでSNSをそう批判した)が、問題はそう単純ではない。
たとえばアーティストの安斎利洋さんは、ミクシィの日記のアクセス制限を「友人まで公開」「友人の友人まで公開」「全体に公開」だけでなく、「インターネットに公開」というオプションも加えるべきだと指摘している。彼は実際、このような試みもしている。私は今夏に出した『フラット革命』(講談社)という本で、安斎さんのミクシィ体験を軸にしてSNS上で言論を展開する可能性について書いた。詳しくは同書を参照していただければと思うけれども、人間関係に紐付けされたソーシャルメディアはオープン化されていけば、言論空間のプラットフォームとしては多くの可能性を秘めている。
最近GoogleがOpenSocialのというSNSのプラットフォームを発表して話題になったけれども、これはSNSのオープン化にとって大きなターニングポイントとなる可能性がある。世の中のすべてのデータを可視化し、検索可能にしていくのがGoogleのミッションだが、SNSをオープン化し、人間関係情報やコンテンツを異なるSNS間で共有できるOpenSocialの仕組みは、このミッションを補強するものとなる。それは同時に、オープンな言論空間をSNS世界の中に作り出す可能性を生み出す。
そう考えると、ブログというプラットフォームが徐々に衰退し、SNSに移っていく可能性は十分に考えられる。特に現在のブログのプラットフォームは、コメント欄のノイズを排除しにくい構造になっており、この問題がブログからSNSへの移行を促すことになるかもしれない。しかしこの方向への進化は、まだこれからだ。
ケータイ言論の可能性
もうひとつの方向性としては、携帯電話というデバイスの普及がある。これは先のネットレイティングスの調査でも指摘されているように、日本のウェブの空間を今後飲み込んでいくかもしれない。同じウェブの空間をPCでもスマートフォンでも閲覧しているアメリカの流儀とは違って、日本ではケータイの空間とPCのインターネット空間は別ドメインになってしまっている。これをケータイの「ガラパゴス進化ではないか」と危惧する声もあるが、しかし一方でこの偏向進化は興味深いケータイウェブの世界を創出しつつある。
最大のポイントは、つい最近までメールでのやりとりが中心で「1対1」だったケータイのコミュニケーションが、2006年ごろからWeb2.0化が進んだ結果、「多対多」のコミュニティモデルへと移行してきたことだ。モバゲータウンがその好例だが、しかしもっと興味深いコンテンツとしては、ケータイ小説がある。
次回のエントリーは、このケータイ小説が生み出す言論空間について考えてみたいと思います。
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