最終更新時刻:2008年10月6日(月) 19時43分

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私がオーマイニュースに批判を書いた理由

公開日時:
2006/08/27 18:45
著者:
佐々木俊尚

 オーマイニュース日本語版の編集委員になった。その上で、「オーマイニュースへの疑問」という原稿を書き、この原稿は2回に分けてohmynews開店準備中ブログに掲載された。

 私がオーマイニュースに関係するようになったのは今年春からで、オ・ヨンホ代表には再三、日本では新旧と左右のねじれ関係があって、そのあたりを踏まえずにネットメディアを作ってしまうことは危険だというようなことを言った。だが結局、準備ブログが立ち上がってみれば、危惧された通りになった。

 私は鳥越編集長は人間として尊敬しているし(そもそも前の会社の先輩だ)、鳥越編集長のようなスタンスの言論はおそらく今の50代から60代あたりの団塊世代を中心にした層を代弁しているように感じるから、それに対して異論を唱えようという気持ちはまったくない。だがそうした言論は、いまの20代から30代を中心にしたネットの世界の言論とはかなり異なっているし、それはそのまま新旧だけではなく、左右の対立にまで巻き込まれてしまって、終わりなきイデオロギー論争を繰り広げなければならなくなってしまう――そう考えて、私は「編集部内部に対立軸を作り、それを読者に表出させていくべきではないか」と編集部にアドバイスしてみたりもした。

 だがそう簡単には対立軸なんてものは生まれてこないし、そうこうしているうちにどんどんオーマイニュースの正式スタート日(明日、8月28日だ)は近づいてくる。こうなったらしかたない……と私は、みずから対立軸になることを編集部の判断とは関係なしに勝手に決めて、そうしてあのような原稿を書いたのだった。自分が道化のような立場に立たなければならないとは、まさかオーマイニュースに関係し始めたときには想像もしていなかったのだが……。

 なぜ対立軸が必要かというと、その件については「オーマイニュースへの疑問」のエントリーのコメント欄で書いた。ここにもう一度、書いたコメントの一部を再掲しておこうと思う。

私が「オーマイニュースへの疑問」というエントリーをあえて書いたのは、内部での意見対立をブラックボックス化すべきではないと考えているからです。

従来のメディアでは、内部で起きた意見対立や議論についてはすべて内部で処理し、仮にその議論の過程でさまざまな興味深い意見や反論が出ていたとしても、それらはいっさい外部に表出させてきませんでした。外部に対しては、「これがわれわれメディアの提供する記事です」と一〇〇パーセント完成された(と少なくとも中の人間が信じている)ものだけを提供してきたのです。

ある種、メディアのブラックボックス化とでも言える構造であって、それは少数精鋭の編集者、編集記者で構成されているプロフェッショナルメディアであれば成り立つのかもしれません。

しかしオーマイニュースは、市民参加メディアです。そうであれば、内部の意見対立をブラックボックス化すべきではないと思っています。編集部内部の対立をすべて丸め込んでしまって外部に完成品だけを提供するというのでは、それは編集部が外部の市民をシャットアウトし、編集部と外部との間に「壁」を作ってしまっているということになりませんか。

そもそも市民参加メディアというのが、どのようなメディアであるべきなのかを考えるべき時期に来ているのではないかと来ています。善良な市民が寄せてきた善良(のように見える)記事を編集部がフィルタリングして掲載していく――というようなプロセスを取るのであれば、それは古い読者投稿型の雑誌や新聞の読者投稿欄と何ら変わるところはないように思えます。

そのような鉄壁プロセス型編集ではなく、ひとつの「場」「圏域」を作りだし、その場をプラットフォームとして維持していくようなメディアのあり方が、いまこの時代に期待されている市民参加型メディアじゃないかと思うのです。それはまさしく、いまインターネット業界で語られているWeb2.0というパラダイムと同じものです。

混沌とその圏域の中で、さまざまな意見や情報が渦巻いているようなメディア――だからこそ私は先のエントリーで「ブロゴスフィア」(ブログ圏域)といったような言葉を使いました。プロセスによって編集されたメディアではなく、生態系のようなメディアがネット上でできあがりつつあると思っているからです。

しかしオーマイニュースはこれまでの準備ブログや編集部内部の議論を見る限りでは、そうしたスフィア化を志向するのではなく、ブロゴスフィアとは一線を画して旧来の鉄壁プロセス型編集を作っているように思えました――私には少なくとも。

しかし鉄壁プロセス型編集と市民参加メディアって、それは自己矛盾しているんじゃないの?――という疑問が強く、そこであえて上記のようなエントリーを公開したのです。もちろんそこには、あえてブラックボックス化を打破するという意図もあったのも事実です。

 さて、私が書いたエントリーに対して、la_causetteさんが日本版オーマイニュースというエントリーで以下のように指摘されている。

そもそも現在のブロゴスフィアに問題点があると思っているからこそ新たなサービスを開始するわけだから、それはあたっていないように思います。実際、現在のブログシステムの欠点の一つは、記事投稿者とその読者とのコメント欄を通じてのコミュニティがわずか数人の「悪意のある人々」によって壊されるのを回避する手段がない点および自分の言説に一切の責任を負えない人々のプロパガンダの場に活用されることを回避する手段がない点にある点にあり、「仮面を被ることによって羞恥心をかなぐり捨てた暇人」に物量的に制圧されることを回避するためには、コメント投稿者にも一種の個別ID登録を義務づけるのは一つのあり得る解決策だと思います。

 これは仰るとおりであって、もちろん言論そのものの質と匿名/実名の質の差はないにしろ、しかし実名をうまく導入するような何らかの仕掛けを加えていくことによって、新たな言論空間が生まれてくるかもしれない。それはパソコン通信(実名的Identified)―2ちゃんねる(匿名)―ブログ(匿名的Identified)と続いてきたインターネットのコミュニティの流れに、新たな潮流をひとつ加えることも可能なのではないか? そういう実験になるんじゃないかという気持ちから、オーマイニュースに関わることを決めたのだった。

 しかし私が上記のコメントで書いたように、そうした新たな「場」「空間」を作り出すためには、そのプラットフォームに徹底した中立性が求められる。中立性のないプラットフォームには、そのプラットフォーム管理者の好みに偏った人たちしか集まらない。検索エンジンという巨大なプラットフォームを持ち、既存のシステムを破壊しているGoogleが圧倒的な支持を得ているのは、彼らがアルゴリズムという非人間的中立性を軸に据えることで、左右、新旧、文系理系、男女、貧富といったあらゆる面において徹底的に中立を担保しているからだ。

 Web2.0の世界では、プラットフォームは中立でなければならないのである。

 オーマイニュースはそのプラットフォーム自体は興味深いと思ったけれども、プラットフォームを構成している人たちが中立ではないように感じたし、そうであれば中立なプラットフォームにはならず、多くの人たちが集まる場所にはならない。私はオーマイニュース編集部が何とかGoogleのようにならないかと思って(いや、それはあまりに傲慢な高望みで、人に笑われるのは承知の上なのだけれども)、あのようなボールを投げ込むことにしたのだった。

 ところでこのボールの第二弾として、すでにガ島通信くりおね あくえりあむでも紹介されているが、オーマイニュース編集部とブロガーが討論するシンポジウムを9月2日に開くことになった。どういう結論になるのかわからないというか、Parsleyさんは「ただ。『H-Yamaguchi.net』様はアカデミアのひとだし、佐々木俊尚氏はいたって常識人だし、「相互理解」を図るだけになってしまいそうで心配。殺伐とした空気を纏ったブロガーの参加を期待せず期待したい」と書いていて、確かにそうかもしれないと思いつつ、討論時間の半分以上は会場とのやりとりに当てる予定なので、ぜひ論戦に参加するために多くの人に来ていただければと思っている。

ブロガー×オーマイニュース「市民メディアの可能性」

市民参加型ジャーナリズムを実現し、韓国でマスメディアと比肩する存在となったオーマイニュース。その「実名に基づいた市民記者」という理念は、果たしてこの日本のネット空間でも実現可能なのか? ネットの世界で論陣を張るブロガーたちと、鳥越俊太郎編集長らオーマイニュース編集局スタッフが、その実現可能性について徹底討論します。

【日時】9月2日・土曜日、午後1時から(約3時間を予定)

【場所】早稲田大学・西早稲田キャンパス8号館412番教室

【出席者】
オーマイニュース・鳥越俊太郎編集長、佐々木俊尚編集委員、平野日出木編集次長、中台達也編集スタッフ兼記者
ブロガー・山口浩@H-Yamaguchi.net(駒澤大学グローバル・メディアスタディーズ学部助教授)、磯野彰彦@竹橋発(毎日新聞社東京本社編集局)、いちる@小鳥ピヨピヨ(Gizmodo Japanゲスト編集長)、藤代裕之@ガ島通信

【主催・協力】オーマイニュースインターナショナル、早稲田大学GITI・境研究室、FPN、ブロガー有志、など

【定員】約90人

【料金】無料(名刺をご用意ください。名刺をお持ちでない方は名前、所属などを書いたカードをお持ちいただくか、会場で記入をお願いします)

【申し込み】FPNのイベント申し込みフォームからお願いします

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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