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テレビ局がわが家のハードディスクを制御する?

2006/06/30 18:59
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佐々木俊尚

現役ジャーナリストが、長年培ってきた取材経験などを通して、IT業界のビジネス動向から事件まで、その真相をえぐり出します。
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 1か月ほど古い話になるが、『山崎潤一郎のネットで流行るものII』の『NHKの技研公開を見学してきた〜ユーザー軽視のサーバー型放送』というエントリーで、サーバ型放送に対する不信感が語られていた。

 <それにしても、サーバー型放送のデモを見ていてつくづく思ったのだが、メーカーと放送事業者で集まって密室で規格を作っている、というのはまさにその通りだと感じた>

 山崎さんはこのエントリーの中で、HDDで録画した番組を外部に転送する際のメディアがSDカードになっている点を取り上げ、<松下が深く絡んでいるので、政治的な思惑で、なにがなんでもSDカードを使わなければならないのはミエミエな感じだが、自分たちの思惑だけでそんな不便なものをユーザーに押しつけるなと言いたい>と怒りを表明されている。

 さらにこのエントリーからトラックバックされている、池田信夫さんの『サーバー型放送』という今年1月の記事。

 <けさの日経新聞によれば、「サーバー型放送」が2007年度から始まるそうだ。不可解なのは、これがHDDレコーダーに番組を蓄積して見るのとどこが違うのかということだ。記事に出ている表でも、違うのは「メタデータ」をつけるかどうかだけである>

 「けさの日経新聞」というのは今年1月24日、NHKが2006年からの3か年経営計画を発表し、その中でサーバ型放送への参入を正式に表明したという記事だ。サーバ型放送の実施にあたっては、従来放送とは別に有料課金方式を検討するという。

 池田さんはこのサーバ型放送について、HDDレコーダーとどこが違うのか?という疑問を呈している。

 <メタデータなんかなくても、今のHDDレコーダーがやっているように、テレビの番組表をデータとして持っていれば、番組予約も検索も容易にできる。すべての番組をサーバで一括して録画し、あとから再生するというしくみは、録画ネットやクロムサイズのシステムと同じだ。彼らを違法だと訴えたテレビ局が、みずから同じビジネスを始めるとはどういうことなのか>

 池田さんが指摘するとおり、サーバ型放送についてテレビ業界の側はきちんと情報を公開していない。いや公開しているつもりなのかもしれないが、その情報は少なくともネット業界には正確に伝わっていないように思われる。

サーバ型放送の不思議な仕組み

 そもそもサーバ型放送というのは、どのようなものなのか。簡単に言えば、ハードディスクレコーダーのような機器を使って番組を蓄積し、視聴者が好きな時間に番組を呼び出して見ることができるというサービスだ。まだサービス自体はスタートしていないが、放送関連のセミナーや研究会などではさかんにその内容が語られ、テレビの近未来像として期待がかけられている。

 しかしそれは、要するにHDDレコーダーと同じじゃないのか?という疑問は、多くの人が抱く印象だろう。実のところ、サーバ型放送と製品としてのハードディスクレコーダーを分けるのは、次の2点である

(1)サーバ型放送では、HDDに蓄積された映像コンテンツが放送局に制御されている。
(2)HDDレコーダーがEPGによって番組ごとの管理しか行えないのに対し、サーバ型放送では場面ごとに細かなタグ(メタデータ)を付与し、より細かく番組を利用することができる。

 重要なのは、(1)の違いだ。HDDレコーダーの中身(=ハードディスク)は完全にユーザーの所有物であり、その中身をどう扱い、何をコピーして何を削除し、何を視聴するかはユーザーに任されている。ところがサーバ型放送の機器に実装されているHDDは、ユーザー(視聴者)のものではなく、テレビ局の所有物なのである。だからサーバ型放送での映像コンテンツの扱いはかなり特殊で、ふつうのVOD(ビデオ・オン・デマンド)とも異なっている。VODがユーザーの自発的意志でサーバからコンテンツをダウンロードしてくるのに対し、サーバ型放送の場合は、放送局側が視聴者のハードディスク内蔵受信機にコンテンツをプッシュする。プッシュする時間帯は、受信機が放送スケジュールの中から自動的に選択し、必要に応じて番組をダウンロードする仕組みだ。このためVODのように、膨大な品揃えの中から自由に番組をダウンロードするというサービスにはならず、放送局側が選んだ特定の映画や番組が知らないうちに受信機に蓄積され、ユーザーはその中から選んで視聴するというようになる。

 インターネット文化に慣れた人には違和感も感じる手法といえるだろう。そしてこのあたりに、「コンテンツは放送局が管理する」というテレビ業界独特の哲学がある。

 あるテレビ局関係者も、次のように話している。

 「HDDレコーダーの場合は、録画された番組はユーザーの管理下にある。しかしサーバ型放送では、受信機に蓄積されている番組は放送局が管理する」

 しかしサーバ型放送はオープン規格で、受信機は各電機メーカーから一般に販売される予定だ。となると受信機のHDDはユーザーの所有物なのに、その中のコンテンツは放送局の所有物という不思議なことになる。前出の関係者の話。

 「放送局の側が勝手に視聴者のHDDの一部を使わせてもらうということになる。だから放送局と視聴者の間で何らかの契約・同意を取ってもらい、『このサーバ型放送サービスを受けるのであれば、HDDの一部をサービスのために占有させることに同意します』といった許可をしていただくことになる。単なるプッシュではなく、ユーザーの同意に基づいたプッシュということ」

 この不思議なしくみは、本当にユーザーに受け入れてもらえるのだろうか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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