滝本先生、佐々木俊尚です。
先生のトラックバックに対して、ご返事が遅れたことをお許しください。
滝本先生のおっしゃる「オウムと大日本帝国を同一視すべきではない」という言葉を、私としても真摯に受け止めたく存じます。
しかしながら私は、オウム真理教信者の責任と、大日本帝国の国民だったわれわれ日本人の責任を同じに考えるべきだと言っているのではなかった、ということをまずご理解ください。
私が先のエントリーで書こうとしたのは、オウム真理教と日本人の類似性ではなく、「オウム真理教に被害を受けたと感じている日本人」と、「大日本帝国に被害を受けたと感じている中韓の国民」の類似性についてでした。
もちろんそこには、被害の内容の違いはありますし、「オウムの信者であること」という自律的な巻き込まれ方と、日本人であるという強制的な巻き込まれ方の圧倒的な差違というのがあることは理解しているつもりです。そしてそれらを同一視してしまうことによって、そういう言辞を発することによって、オウム真理教の罪を希釈してしまいかねない危険性があることは、私としても承知しているつもりです。
しかしながら、「被害者からの視点」という意味においては、そこには何らかの類似性があるのではないかと思うのです。私が先のエントリーで言いたかったのは、この「被害者からの視点」でした。
滝本先生に誤解しないでいただければと切に願うのですが、ここで私が言う「被害者」というのは、オウム事件の直接的な被害者を指すのではありません。「オウム事件によってなにか危険にさらされたように思った」と漠然と感じた、その他大勢の日本人を指しているのです。
地下鉄サリン事件などの被害者を除いて、日本人の大半は、オウム真理教から直接的な被害を受けたわけではありません。しかし多くの日本人は、オウムに対して漠とした不安を感じ、みずからの生存を脅かされるのではないかという危機感を抱いています。その危機感、不安は生理としては妥当性はもちろんあるとは思うのですが、しかし言語として顕在化されないある種の得体の知れなさ、不気味さとして、この日本社会の中に表出している面もあるのではないかと思うのです。
日本人と中韓の国民が全面的に同じであると言っているのではありません。その認識の深い溝と、相手に対する絶望的な拒否感というただ一点において、日本人と中韓の国民の間には、ある種の共通項があるのではないかと私は思っています。
多くの日本人は、オウム事件の正確な内実や、彼らが本当に持っていた危険性に対する認識は持っていないでしょう――もちろん、私がそれを持っていたかといえばかなり心許なく、そういうことばを口にすることによって、私自身が『おまえに何がわかる』と叱られることを承知で言っているのですが。
多くの人たちは、ただ漠然とした不安から、オウムのことをこれ以上知る必要はなく、とにかく排除すべきだと考えている――つまりオウムに対する認識の再構成を拒否しているのではないかと、私は思うのです。そして私は、その考え方はある種の危険性をはらんでいるのではないかと、やはり思うのです。
そう思ってしまう私は、危険な相対主義の持ち主なのでしょうか? そういうお利口さん的な高見に立ったような偉そうな考え方は捨て、「社会のために」という旗のもとに、オウムと戦い続けるべきなのでしょうか?
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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