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イノベートアメリカ・米国の次世代技術戦略--Part1:ヤングレポートからパル

2005/09/27 21:54
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 昨年12月に米国の非営利組織である「競争力評議会」は「イノベートアメリカ(Innovate America)」という報告書を発表しました。報告書を作成した委員会の委員長でIBM社のCEOであるサミュエル・パルミサーノの名前をとって「パルミサーノレポート」と呼ばれているこの報告書には、米国の次世代技術戦略を理解する上で重要な内容が含まれています。日米は、少子高齢化、国際競争力の低下など、国家レベルで似通った状況に直面しています。特にエマージングタイガーといわれる、中国などの新興イノベーション地域との競争激化への対策は両国にとって重要な課題となっています。本レポートは、現在の国際競争環境の中で作られた、米国の技術戦略を表した報告書であり、今後の日本の技術戦略策定において参考となると考えられます。

 今回と次回は、1985年に発表された「パルミサーノレポート」からの流れ、「イノベートアメリカ」の概要、MOTや日本との関係について述べます。

ヤングレポート

 「パルミサーノレポート」に入る前に、1985年に提言された「ヤングレポート」について説明をします。

 「ヤングレポート」は「パルミサーノレポート」と同様、米国の国際競争力強化を目的として、当日のレーガン大統領に提出をされたレポートです。当時の米国は、1970年代後半より起きていたスタグフレーションによって深刻な不況に見舞われていました。「ヤングレポート」が作られた1980年代に入ると、米国の不況はさらに深刻化し、いわゆる「双子の赤字」がみられ、産業競争力の低下による経済低迷に対する問題意識が明確なものとなってきました。

 こういった状況の中で作成されたのが「ヤングレポート」です。1983年にレーガン政権は、当時ヒューレット・パッカード社の社長だったJ.A.ヤング氏を委員長とする「産業競争力委員会(President’s Commission on Industrial Competitiveness)」を設立しました。ここで作られた報告書が「世界的競争 新しい現実(Global Competition – The New Reality)」、いわゆる「ヤングレポート」です。

 「ヤングレポート」では国際競争力として、
  ・伝統的な輸出力の力で測った貿易の競争力
  ・国際経済に限定して、国民の生活水準をどう向上させるかという生活水準での競争力
  ・企業の世界的広がりを視野においた多国籍における競争力
 があるとしています。

 さらに競争力を「一国が国際市場の試練に供する財とサービスをどの程度生産でき、同時にその国民の実質収入をどの程度維持または増大できるか」と定義しています。下記は「ヤングレポート」の要約です。


・競争力の定義:
 一国が国際市場の試練に供する財とサービスをどの程度生産でき、同時にその国民の実質収入をどの程度維持または増大できるか
・現状認識:
 生産性、生活水準、貿易収支等から米国の競争力が低下しており、その原因は為替等ではなく製造業の競争力低下にある
・提言分野(4分野):
  1、新技術の創造・実用化・保護
  2、資本コストの低減(生産資本の供給増大)
  3、人的資源開発(労働力の技能・順応性・意欲の向上)
  4、通商政策(国際貿易)の重視

 さらに本レポートでは、米国の技術水準は最高であるが、それが製品貿易の結果に反映されてなく、「双子の赤字」が発生しているのは、知的財産の保護が不十分だとしています。

 このレポートでの提言の多くは「小さな政府」を指向する当時の政策もあり、レーガン・ブッシュ政権ではほとんど実行されませんでした。しかし、「知的財産の保護」という点は、その後の米国の知的財産政策(1986年)に反映され、現在の米国企業、特にIT分野での繁栄を後押ししてきたと考えられます。

ヤングレポートからパルミサーノレポートへ

 「ヤングレポート」を作成した産業競争力委員会は1986年に競争力評議会を民間組織として創設しました。その後「パルミサーノレポート(2004年)」までに、同組織は多くの提言を行ってきました。下記はその中の主な提言です。

「America’s Competitive Crisis : Confronting The New Reality」1987年
競争力の定義、生活水準・生産性・貿易収支・技術・人的資源・資本形成に基づく競争状態の評   価、財政赤字削減・貿易環境改善・貿易及び技術政策・人的資源対策からなる連邦政府への提   言(ニュー・ヤングレポート)

「Picking Up The Pace : The Commercial Challenge to American Innovation」1988年
「ニュー・ヤングレポート」が全般的な問題を取り扱っていたのに対し、技術の問題に焦点を絞り、民間主導の技術促進に向けた政府の役割を提言

「Industry as a Customer of The Federal Laboratories」1992年
国立研究所の顧客である産業界のニーズに合致した技術移転の必要性を提示

「The New Challenge to America’s Prosperity - Findings from The Innovation Index -」1999年
25カ国について1980年以降及び2005年の技術革新力を比較

「U.S. Competitiveness 2001 : Strengths, Vulnerabilities and Long-term Priorities」2001年
長期的な繁栄を視野に居れ、1990年代の生産性向上を指摘する一方で低貯蓄率、経常赤字、基礎研究の欠如等の問題点を指摘し、技術、教育、地域クラスター等の重要性を提言

 1992年にクリントン大統領が選出されると、同政権はこれらの提言に沿って、ハイテク重視の競争力強化に取り組むことになりました。なお、競争力評議会は1991年に非営利組織になり現在に至ります。

 これら多くの提言を見ても、米国が知的財産を中心とした技術戦略により1990年代の技術的な繁栄を作り出したのが明確です。IT分野については特にそのことが言えるのではないでしょうか。

 今回は「ヤングレポート」と「パルサミーノレポート」までの内容になりましたが、次回は主題である「パルミサーノレポート」について触れたいと思います。

参考資料
日本政策投資銀行 「産業競争力強化に向けた米国動向と日本の課題」

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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