ここに来てJUSTSYSTEMS社がxfy事業に26億円規模の増資だそうで。確か去年も28億ほど増資していたような。まあ、他社様のご判断ですからそれは別にいいのですが。
ただ、ドキュメント類の委託制作を生業にしている者の立場からすると、このxfyには多大なる危うさを感じます。何と言うか、「ユーザーの目的を達成させるための手段を提供する」のではなく、「自分たちが開発したものを使わせんがために、ユーザーのニーズの方を適合させようとしている」といった印象を受けるからです。
例えばこちらなど。そうですか。製造業の既存のドキュメンテーション環境は「重大なトラブルを引き起こす原因となり、社会的な責任を問われる大きな問題となる場合が...」ですか。確かにそのような側面もありましょう。でも、それが恒常的な事象なら、その会社の商売は成り立とうはずもないわけですから、どうにも「この壺を買わないと...」的な違和感を感じてしまいます。あるいはその逆に「XMLという魔法の呪文を唱えれば、あなたのビジネスが飛躍的に良くなります」でしょうか。
xfy製造業向けソリューションは、技術文書作成部門、開発部門から提供された技術情報を文書化し、業務マニュアルとして再構成して配布、それを基にした追加、修正が簡単に一括で行えるソリューションです。「xfy Document Solution Core 1.0」上で動作し、ドキュメントの徹底した再活用が行え、組織的な作成・編集作業と成果物の一括管理ができます。これにより、製造業における技術ドキュメント活用の抜本的な業務改善を実現します。
もちろん、これが言葉通りの実用度を達成していれば文句はありません。そうしてドキュメンテーションの世界に革新がもたらされるなら大歓迎ですし、私も積極的に導入を説いて回ります。厄介なドキュメント作成案件がクライアント企業内で完結して、我々にまで火の粉が降り注いでこなくなるならどんなに良いことか。
でも、これまで私が見聞きしてきた経験から言うと、最初から大風呂敷を広げたドキュメンテーションシステムは、往々にしてどこかで破綻するケースが多いものです。しかも、そこにXMLがからんでくると要警戒度は更にUPします。なにしろ商用ドキュメンテーションの現場には、数年前の「XML自動組版ブーム」で痛い目に遭った経験がありますので。当時「XMLを使えば、カタログ類の他にも、取扱説明書やサービスマニュアルの類いがDTPオペレータ要らずで自動生成できるはず」という期待感に後押しされて多くの企業が研究開発に取り組んだものの、結果的に得られたのは、模範的なモデルケースにのみ適用できる専用システムの残骸と、「予想に反してXMLや機械処理はマニュアル類には不向き」という手痛い教訓でした。まったく使えないわけではないものの、どうしても旧来のやり方よりも運用コストが上がってしまうのです。
また、これは一般論ですが、ソフトウェア製品のカタログやニュースリリースに書かれている「簡単に」や「使いやすい」といった謳い文句は単なる努力目標に過ぎず、「さまざまなニーズに柔軟に対応可能」は「カスタマイズ費用がたくさん掛かります」を体よく言い換えたものだったりします。今回も「製造業向け」という曖昧な定義からして、「買った次の日からテスト運用できますよ」という類いのものではなさそうですし、「徹底した再活用」の一文から連想されるのはDBとの連携なので、メンテナンスを含めた運用のコストも相当大きくなりそうな気がします。ひょっとしたら違うのかもしれませんが。
今回の増資で強化された営業体制のもと、アライアンスを組んだSIerの巧みなセールストークに魅かれて導入してみたものの、どれほども使いこなせずにお蔵入り、時間と大金を失ったあげく、結局は手に馴染んだWordで文書を作り続ける...、といった顧客を出さないことを願います。まあ、そこは天下のJUSTSYSTEMS社のことですから大丈夫だと思いたいのですが、客のお金と業務知識を利用して自社製品を試作したがっているような怪しげな業者にとって、xfyは格好のギミックになるでしょうから。
最後に、xfy製造業向けソリューションなるものが想定しているターゲットは私がお世話になっているクライアト層とも重なるはずですので、ここで少しだけ助言させていただきます。これはxfyに限らないのですが、新たなドキュメンテーションシステムの導入を検討する場合は、「御社の業務内容に沿って最適化します」といった謳い文句には飛びつかず、「手始めに我々の業務で試用できるモノを置いていけ」と言ってください。先方が考える製造業像と御社の業務内容が同じとは限らないからです。そして導入を決めるのは「これなら(自分たちでも)使える」と確信が持ててからにしてください。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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