最終更新時刻:2010年2月10日(水) 21時17分
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事業仕分けその後に

公開日時:
2009/11/22 07:00
著者:
HammerBird

テレビや新聞を見ていると事業仕分けが賑やかに取り上げられていますが、
どういう経緯で実施となって、誰が仕掛け人なのか全く判らないままに、
民主党の取り組みのごとく取り上げられています。
もちろん良い面もあって、意思決定の生々しいプロセスが一般公開されたことは画期的だと思います。ネット中継もあったし、市ヶ谷の会場には誰でも入場できるので、この点も従来にない特筆すべきことでした。

さて、
悪い面、うーん改良すべき面と言うべきかもしれませんが、それも沢山あります。もしかしたら良い面と天秤にかけると、良い面が吹っ飛んでしまうくらい悪影響があるかもしれません。それは、政策の全体最適化を目指すことができず、部分最適に陥る落とし穴を山のように生み出す悪影響です。

実際問題として、事業仕分けの位置づけは行政刷新会議の下部構造であり、
行政刷新会議を経ても、さらに国会での承認が必要です。
もちろん、事業仕分けには法的拘束力はありませんから、どんな判定が出ようが
いきなり事業が中止になったりすることはありません。
しかし、運用の方法によっては、事業仕分け以外の場所で属人的な調整が行われる
でしょうから、この部分が見えないと問題の本質は変わりません。

さらに、事業仕分けには財務省視点での極秘査定マニュアルが存在することが、時事通信の報道でも明らかになったように、仕分けが誰の視点による、大変わかりづらいものになっています。

そうしたなかで、スーパーコンピューターなんか要らないという仕分け判定に対して、次世代スーパーコンピュータ開発に関する緊急声明(リンク)が、基礎計算科学コンソーシアムから発表されました。スーパーコンピューターという名称の掴みの良さもあって、Yahooニュースにも取り上げられましたし、同様に、政府の総合科学技術会議(議長・鳩山首相)の有識者の方々からも緊急提言が出されています。(読売新聞11月19日)
こういう展開になると、おそらくこの先は属人的な調整になるのではないでしょうか。あれ、そうすると、事業仕分けの意味ってなんなのかなぁ。

別の視点から考えると、もしかしたら科学技術に対する期待や希望というものが希薄になっているかもしれません。40代以上の人にこれからの世の中はどう変わる?って聞いてもあまり明確な回答が出てこないのではないでしょうか。きっとその人が子どもだった頃は、無線電話とか、道案内をする自動車とか、1000mタワーとか答えが返っていたでしょう。しかし、2009年後半の日本社会で、未来への期待が語られることはあまりないですよね。

今回の事業仕分けの見解のように、若手研究者への予算が削られると未来は先細りになると思います。同時に、この背景には未来をつくる研究に対する社会からの理解と共感がとても不足している気がします。
なので、若手研究者が声を上げて、「予算を増やして!」と言っても、どう転ぶか良く判らない研究にお金を使うのは気が進まないなぁというのが世間の反応でしょう。
本当に科学技術への投資を促すならば、この意識の断絶をこそ埋めなければなりません。

ロビイングという言葉があります。議会のロビーで議員を掴まえて"お話"をするなかで、ある団体や組織の意向を政策案として議員に伝えることで、政策誘導を行う仕事です。これを生業にする人がロビイストでアメリカには日本企業からの億単位の報酬で仕事をするひとが結構います。
日本でもロビイストというほど洗練されてはいませんが、存在します。ロビイストが優秀であれば、国益を損なう政策にはなりませんが、ロビイストが優秀かどうかは仕事を依頼する企業にだって実は判りません。

スーパーコンピューターの取り組み及び、もうちょっと視点を拡げて日本の科学振興政策を誘導するためにロビイストを雇うことも有効かもしれませんが、それは結局のところ利益誘導に過ぎません。同様に、署名を万単位で集めてもその先にはなかなか繋がりません。理由は、コミュニケーションは閉じているからです。
閉じたコミュニケーションは公開の場で、きちんとした自己説明ができないからです。

つまり、事業仕分けから明らかになったことは、仕分けされる側にも企業が行うIRのようにステークホルダーとの関係を意識的に、戦略的にマネージメントする必要が出てきたということです。
この新しい状況に対応する、仕分けされる側にとっての最も有効な方法として、
『ステークホルダーマネージメントに基づくパブリックリレーションシップ』を
提案します。

例として、スーパーコンピューターを含む科学政策をイメージしながら
考えてます。簡単に言ってしまえば、当事者が輿論(public opinion)をつくるきっかけを用意して、世論(people’s reaction)に納得してもらったうえで味方になってもらうPR+調査型のコミュニケーションプロジェクトです。
順序はこんな感じかと思います。

1:主体を形成(有志でもいいので、What we areを明確に)

2:日本お科学技術政策の戦略ロードマップを開発
 (完璧なものなどないので、現状で考えられるベストなものをつくる)

3:意見広告型(+参加要素)のサイトを立ち上げる(ネットユーザーと繋がる)
 参加要素では、日本の科学技術政策について6−8パターンを用意して
 回答をすることで、タイプ分けが出来るようにする。
 (基本的な構造はポリネコと同様、これにID発行管理機能を加えるのみ)

4:ニュースリリースは各マスコミに郵送または手渡し+電話
(記者と繋がる)

5:記事にしてもらう機会に、参加要素に触れてもらう

6:できれば、小見出し枠(よくタバコとかの広告がある5cm×5cm程度のスペース)を主要各紙で購入して、非ネットユーザーにも回答を呼びかける

7:並行して、議員会館をまわり回答をお願いする
 このプロセスがいわゆるロビー活動にあたることになるがこのプロセスも
 オープンにすることで、ネガティブなイメージにならないようにする

8:1と連動しますが、研究者のグループと慶應SFC研究所(の研究員の私) 
 との共同プロジェクトとすることで、コミュニケーションの背景の大義名分を確立する

9:集計結果を再度、プレスリリースで発表
 見出しは、『日本の科学技術政策について、多数が〜な戦略を選択』
 または、『国民と議員の共同回答から見いだされる-新しい科学技術振興政策!』
 という感じ。

10:見いだされた共同回答を業界に浸透させるコミュニケーションを行う
   メーリングリストとかでも良いと思う。
   さらに、贅沢をいえば、2のロードマップの精度を上げることを
   継続的に行うことが望ましい。

という上記のような取り組み案が考えられます。
これで、日本の科学政策について社会全体が了解、共感しながら、改善すべきことも含めて今後どうしてゆけばいいかを共有できるようになります。

よく考えると、莫大な額の予算が投入されながらその恩恵を受ける当事者と、予算の拠出者(言い替えれば出資者ですよね)である国民との間のコミュニケーションはいままで皆無だったわけです。
実のところ、聖域はないとか言いながら、事業仕分けの対象には年金関係の見直しは一切入っていないですし、診療報酬のレセプト審査に関わる費用と人員は大きな無駄を生む構造なのですが、これも手つかずという状態です。

日本の科学政策についても、上記のようなコミュニケーションをつくることから研究者が社会やパブリックを意識するようになると、科学立国ニッポンの面目躍如ではないでしょうか。

研究者にとって、自分の研究が成果を挙げることが第一になるのは良く判りますが、急がば回れで
上記のようなコミュニケーションをやってみるのはいかがでしょうか。

付記1:ポイントは研究者が自己主張するのではなくて、社会学者やデザイナー
    と共同して新しい知の在り方をつくり出すこと、社会の共感を構築することに
    もうちょっと力を注ぐことににあると思います。
    興味を持たれた方はポリネコ(www.polineco.jp)からご連絡ください。

付記2:私の前のエントリーである能澤徹さんの<a href="http://japan.cnet.com/blog/petaflops/2009/11/21/entry_27035472/">『計算基礎科学コンソーシアムの声明はお門違い』</a>と合わせて考えると
    よりおもしろい構図が見えてくると思います。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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