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前編記事ではソーシャルアプリ市場の主要プレーヤーをまとめた上で、現在の市場トレンドについて考えました。今回は前編記事の内容をふまえ、SAPがソーシャルアプリ市場で成功する素養について考えてみたいと思います。
成功しやすいSAPに傾向はあるのか?
前編でも紹介しましたが、そもそもこの記事を書こうと思った発端は、私が職場の仲間に、「どんなSAP(Social Application Provider)さんがソーシャルの世界で成功しやすいと思う?」と聞いたことから始まりました。この議論に参加したのは私を含め3人。いずれもSAPさんへの接触頻度が高い人間ばかりで、携帯サイトのプロディース、ディレクション、開発をやっていたいわゆる「携帯CP」上がりの人間です。
議論はその時の雑談を機に、後に数回に渡って行われました。総議論時間は推定で5時間程度です。まず最初に、我々はソーシャルアプリ市場にいる代表的なプレーヤーをまとめてみることにしました。その結果が前編の記事です。そしてそれらのプレーヤーのそれぞれの強みと弱みを分析し、「どのようなプレーヤーがどのようなシュチュエーションで強みを発揮するか?」を考えてみました。その結果、「こういうプレーヤーはこういうケースに強い」という一定の傾向を見出すことができました。そしてそれらをトータルで考えると、「ソーシャル市場で成功しやすいSAPには(確実ではないものの)一定の傾向がある」という結論に至りました。以下にその結論と理由を紹介します。尚、本記事の内容は上記の思考過程から導かれた一意見であり、明確な根拠があっての意見では無いことをお断りしておきます。
ソーシャルアプリ市場で成功するための要件
結論から言うと、同市場で成功するためには3つの必須要件と3つの参考要件があることがわかりました。必須要件とは文字通り成功に必須な要件です。参考要件とは、「必須ではないが、あると成功しやすい要件」のことです。以下それぞれについて見ていきましょう。
必須要件:
- 1) ソーシャルアプリ企画・開発の課題を十分に理解し、課題に対応できる要員・パートナーを有している(ナレッジ、問題可決能力、リソース)
- 2) 複数タイトルの開発/運用する会社体力を有し、事業として注力する意志がある(会社体力、ソーシャルへの力の入れ具合)
- 3) サービスを創出し、運用・改善していく経験・能力を有している(サービス構築・運用能力)
参考要件:
- a. 既存アプリが秀逸でそのゲームデザインに発展的なのびしろを感じる(タイトル牽引型の会社上昇力)
- b. キラータイトルの版権を持っている、あるいは調達力がある(キラータイトル版権調達能力)
- c. プラットフォーマーや業界内他社に対して一定の影響力を持っている(業界への影響力)
まずは必須要件から見ていきます。
必須要件
1) はソーシャルに対する理解度です。私は前編の記事で以下の図を引用し、「同市場で勝ち抜いて行くにはソーシャルに対する理解が必要だ」と主張しました。

1) は「この図の右寄にいる必要がある」ということです。実はこれにはいろいろな側面があります。一般に「ソーシャルへの理解度」といっても事業的側面、企画的側面、開発的側面など様々です。
例)
- 事業的側面:ゲーム認知度を向上させるための効果的な戦略を理解し、仕掛けて行ける力
- 企画的側面:ゲームシステムにソーシャルならではの「交流」や「ちょっかい」 を仕込める力
- 開発的側面:ソーシャルゲーム特有のバーストトラフィックに耐えられるシステムを開発、もしくは(目利きした上で)調達できる力
もちろんこれ以外にもありますが、ちょっと考えただけでも実に様々な要素があることに気づきます。我々の結論としてはこれらの要素をなるべく多く持つSAPが勝ちやすいということになりました。
これについてはもっと細分化できますが、「あまり細分化しても覚えにくいし、必須要件からはみ出るおそれがある」という意見から1)の言葉に集約しました。
図1でカテゴライズしたグループで、これらの要件を "確実に" 満たすグループは存在しないように思えました。強いて言うなら、(大手)携帯CPと海外SAPでしょうか。しかし正直どちらもどちらもしっくり来ません。どちらかというと1)は「このグループなら保有している」というより、「このSAPなら保有している」といった方が言い当てている気がしました。
2) は簡単にいうと腹のくくり具合です。「うちはソーシャルアプリでやっていくんだ! そのために人もお金も投入するんだ!」とリスクを取ってソーシャルアプリビジネスに立ち向かう決意を持つSAPでないと成功はおぼつかない、という事を言っています。これはどの商売であってもいえる普遍的な原則といっても過言ではありません。しかしながら市場にはそのような腹決めをしているSAPが少ないことも事実です。一般的に企業が飛躍するには、あるポイントでリスクを取って積極的に資金やリソースを投入必要があるといわれています。ソーシャルアプリでもその原則は同じですが、「どのタイミングでどの程度のリスクを取るか」についてはその企業の経営センスが問われるところでしょう。
また企業体力も大事な要素の一つです。一般的にソーシャルアプリのヒット率は(現時点で)10〜20%といわれています。つまり多くとも5戦1勝なのです。同市場の歴史は短くまだデータが十分ではありませんが、運良く最初に出したタイトルがヒットすることもあれば、5〜10本目に出したタイトルがヒットすることもあります。しかしながらトータルとして見れば(ここ半年〜1年程度は)5〜10戦1勝程度に収斂していくと私は見ています。
この数値の根拠についてはソーシャルアプリのヒットメーカーは現時点で7社?! 〜自社ヒット率から見るヒットメーカーの真実〜をご覧ください。
そのような状況下で重要なのは継続的かつ平行にラインを走らせることができる企業体力です。「新作タイトルを作りながら既存タイトルを手早く改善していく」、「運用タイトルが2本以上になっても改修ラインを並列して走らせることができる」。SAPの増加に伴いヒット確率が低下していく中、このような(ある程度の)手数戦略は重要になってくるのではないでしょうか。
ヒットの見込みが無いタイトルは早めにcloseの判断をするという戦略もあります。しかしながらソーシャルアプリは地道な運用改善を重ねた結果、ユーザーに認められてヒットタイトルの仲間入りをするという事例も少ないくないため、"ラインを並行して走らせる力" は重要であると判断しました。
2)の中でも「覚悟を決めている」という点で、最も評価できるのグループはソーシャル専業会社でしょうか。なにせよ事業ポートフォリオが一つしかないので覚悟を決めざるを得ません。ただし企業体力を十分に保有していないことが多いため、複数ラインを並列して走らせることが出来るかどうかには疑問が残ります。
3) は個人的に最も必須な条件と考えています。ソーシャルアプリはコンセプトや企画も重要ですが、それと同じぐらい大事なのは「継続的に効果的な機能改善をしたり、盛り上がるイベント発生させられるかどうか」です。ソーシャルアプリは基本的には無料であるため、ユーザーのプレイを途中でやめることへの抵抗感は著しく低いといわれています。
コンシューマーゲームの場合、「せっかく買ったんだから・・」という理由から最後までプレーすることも多いものです。これは特にお金のない高校生以下のユーザーで顕著です。
なので運用側は頻繁にユーザーに来てもらう工夫を継続し、課金機会を増加させる必要があります。これには非常にセンスを要しますが、このサイクルを上手く回すことができれば高ARPU状態で数年に渡ってヒットを継続させることも可能と言われれています。以前書いたイベントレポート 【人気ソーシャルアプリの作り方 〜 超人気アプリの企画開発者によるパネルディスカッション】でGREEの吉田さんは以下のような発言をされています。
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Q:売上が上がり続ける期間は? そもそもアプリの寿命ってあると考えていますか?
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まさにこの発言には継続的な運用改善の重要性が込められています。
この手の運用に最も長けているのはグループは(携帯ゲームを主たる収益源としている)携帯CPです。逆に、コンシュマーのゲーム会社はこの手の運用が一般的に不慣れとされています。
参考要件
上述の必須要件は、「成功するには少なくとも上記の3要件を満たす必要がある」というものでした。次は「(必須要件は持ちあわせていないものの)これらの要件を持っているSAPは成功する可能性がある」という参考要件について見てみましょう。
a. はタイトル牽引型でSAPが成長する可能性について言及しています。ソーシャルゲームに限らずゲームの世界全般でいえることですが、あるタイトルのメガヒットがその企業の成長を牽引するというケースがたまに見られます。そのメガタイトルの続編や派生タイトルを出すことでブランドを確立し、その企業の成長の起爆剤とするやり方です。ゲームの場合、1本のヒットタイトルがその会社をすっかり変えてしまうことも少なくありません。そしてこれが「ゲームは水物」といわれる所以でもあります。そしてそのような将来性を感じるタイトルを持つSAPは(上手くやれば)理想的な成長曲線に乗れる可能性があるのです。
私は前職はゲーム屋さんだったのでこのあたりの感覚はわりとある方です。
b. は上述の図1の上寄りのSAPです。前回の記事でも書いたように、最近のソーシャルアプリ市場においては認知度の高いタイトルほど勝ちやすい傾向があります。そしてそれを実現するには認知度の高い既存タイトルやコンテンツをより有利な条件で引っ張ってこれる交渉力や調整力(これらを総称して『調達力』と呼称します)が必要となります。この力は今後同市場においてなくてはならないものとなる可能性すらあるため参考要件としました。
c. (どの業界にもいえることですが)日本のソーシャルアプリ市場は完全な自由競争の世界とはいえません。現時点では胴元であるプラットフォーマー(以後『PFM』と呼称)に対して一定の協力や調整を仰ぐ必要があります。別にPFMが特定のSAPをひいきにするというわけではありませんが、PFMは自身のプラットフォームをより魅力的なものにするために、参入して欲しいと考えているSAPを誘引したり、強化したいゲームジャンルに力を入れているSAPに便宜を図るのは当然のことです。そしてこのような場合、SAPはPFMにより対し、より有利な条件交渉を行うということが重要になってきます。
また十分な企画・開発機能持たないSAPの場合、腕のいい企画者(≒企画会社)や開発者(≒開発会社)を調達するコネクションを保有することも重要な成功の要件といえるでしょう。
まとめ
今回はソーシャルアプリ市場で成功しやすいSAPの素養について、必須要件と参考要件に分けて分析→説明しました。絶対的な話ではないので本記事に対しても様々な見解があるとは思いますが、一意見として参考にして頂ければ幸いです。
「上記に記載した以外にも成功要件がある!」という方は@hisyamadaまでご意見頂ければ幸いです。
最後に私の何気ない疑問に興味を示し、貴重な時間を割いてその後の議論に参加してくれた2名、S氏とA氏にお礼を言いたいと思います。本当にありがとうございました。
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