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前回の記事、イベントレポート 【人気ソーシャルアプリの作り方 〜 超人気アプリの企画開発者によるパネルディスカッション】では、多数のアクセを頂きありがとうございました。皆様の関心の高さに、日本におけるソーシャルアプリの盛り上がりを肌で感じています。
今回もソーシャルアプリについて書きたいと思います。
ヒットメーカーの打率は何割?
私は仕事柄多くのSAPさんとお話しする機会があります。その際に、「御社のアプリのヒット具合は如何ですか?」と尋ねると、以下のような答えが返ってきます。
- - 「いやぁ、まだ始めたばかりでまだまだです」
- - 「なかなか厳しいですね〜」
- - 「運良くxxがそこそこヒットしてくれましたよ!」
私はそれらの答えを聞く度に常々疑問に思っていることがありました。それは、
- ヒットメーカーといわれるSAPってどの程度の打率なんだろう?
ということです。
例えば、ソーシャルアプリ(以下、『SA』と呼称)を10本作って2本ヒットを飛ばすSAPと、2本作って1本ヒットを飛ばすSAPではどちらが優良なSAPなのでしょうか? これはもちろん一概にはいえません。そもそも「ヒットアプリ」をどのように定義するかで変わってきますし、例え(その定義上での)ヒットアプリを作れたとしても、内部原価が掛かりすぎていたのでは事業的には失敗と言わざるを得ないでしょう。そのような理由から、これまで誰もヒットメーカーの打率を調査しようとしなかったと思われます。(もしくは意味が無いと考えられていた)
しかしながら私はこの疑問がどうしても頭から離れません。ということで私なりの観点で、日本のソーシャルプラットフォーム(以後、『SPF』と呼称)におけるヒットメーカーの打率を調べてみることにしました。
調査環境の整備
調査の前には"調査環境"を整備する必要があります。つまり調査するにあたって、前提条件を明確にしたり、使用する用語の定義を行わなければなりません。
まず今回の調査対象となるSPFは日本の代表的なSPFである、GREEの、モバゲー、mixiの3つに限定します。そして、ヒットアプリを以下のように定義します。
調査時点(2010年7月23〜24日)で、
- ●GREE: オフィシャルランキング、全体/男性/女性のいずれかにランクインしている
- ●モバゲー: オフィシャルの月間ランキング、全体/男性/女性のいずれかにランクインしている
- ●mixi: mixiアプリランキングの[総合順]の上位20SAP
ランキングはユーザーの集合知によるレコメンデーションであり、「おすすめ」 への掲載などより、「多くの人に認められている」という意味での信憑性はあります。本来であればランキングアルゴリズムにまで踏み込み、その妥当性を検証したいのですが、3プラットフォームのランキングアルゴリズムに違いがあるため、そこまでは立ち入らないことにしました。尚、mixiアプリについてはmixiアプリランキングのランキングをデータベースとし、PC/モバイル関係なくランキングを見ています。
過去、レコメンドについてもコラムを書いているので宜しければそちらもご覧ください。
本当は「リリースからの経過日時」も参考にしたかったのですが、その日付が正確にわからなかったのと、調査に時間が掛かることが予想されたので今回は無視しました。
ヒットアプリの一覧
表1が(調査時点の)ヒットアプリの一覧です。(クリックで拡大します)
一般的に知られている傾向としては、GREEには他のプラットフォーム(以下、「PF」と呼称)のヒットアプリの横展開が目立ちます。 mixiはゲーム以外のアプリの割合が多いのも特徴的です。SAPとしてはケータイCPさんが多く見受けられます。その中にSA専業の会社さんとゲーム会社さんがちらほら、という印象です。
表2は、それぞれのPFでのアプリ提供数です。2010年7月23〜24日時点で、合計3,597です。正確な数ではなく、規模的な数値と捉えてください。ちなみにこの数値は以下の定義に基づいて集計しました。
- ○GREE: GREEのサイトを目視でカウント
- ○モバゲー: モバゲータウンのアプリ検索プルダウンの()に書かれている数値の合算
- ○mixi: mixiアプリランキングの[登録アプリ数]の参照

単純に計算しても表1に入れる確率は、3.89%です。狭き門ですね。
ヒットメーカーの洗い出し
さあ、ここからが本番です。私が知りたかったのは、「ヒットメーカーが何本に1本の割合でヒット作を出しているか?」です。これを知るには表1に掲載されているそれぞれのSAPが各PFに何本のアプリを提供しているかを知る必要があります。
どこかにこのデータがあれば便利なのですが残念ながらどこにもありません。なので自分で集計することにしました。この集計は以下の方法で行ないました。
- ●GREE: GREEのサイトを確認し、全アプリについて提供元SAPを目視
- ●モバゲー: モバゲーのサイトを確認し、全アプリについて提供元SAPを目視
- ●mixi: mixiアプリランキングの[検索]にSAP名を入力、検索結果ページから提供アプリ数を目視
- 加えて、それぞれのSAPのWEBサイトをチェックし、提供アプリを目視(提供アプリを書いていないWEBサイトも多数あり)
その結果できたのが表3です。ちなみに作成にかかった時間は3時間程度です。(クリックで拡大します)
基本、目視なので間違いがあるかも知れないことをご了承ください。ちなみにモバゲーでは1つのアプリが複数のゲームカテゴリに登録されている場合があるので、重複してカウントしているおそれがあります。
- 2010年7月26日 10:48追記
初稿で書き忘れていましたが、プラットフォーマーが自社のPFに提供しているアプリは公平性の観点から、表3から除きました。mixi版の怪盗ロワイヤルのみどうしようか悩みましたが悩んだ末に削除しました。
表3を見たSAP様で、「うちの提供アプリ数がオフィシャルに発表している数と違う!」という方がいらっしゃれば、@hisyamadaまでご指摘頂けると助かります。
- 2010年7月25日 19:10 追記
CyberX様より、「星空バータウン」をmixiで提供されているとのお知らせを頂きました。これに合わせて表3を修正しました。
- 2010年7月26日 10:38 追記
ケイブ様より、「しろつく」をGREEで提供されているとのお知らせを頂きました。ヒットアプリにカウントしていたのに提供アプリ数から漏れていました、申し訳ありません。これに合わせて表3を修正しました。
ここでまず重要なのは、
- (3PF合算で)ヒットアプリを2つ以上保有しているSAPは16社
という事実です。 これはこれから日本のソーシャルアプリ市場に参入するSAPにとってはある程度目安になる数字だと思われます。言い換えれば、「2つ以上のヒットアプリを出せる会社は16社しかない」ということです。
ヒットアプリが1つのSAPは自社ヒット率が100%であるところも多いです。これは初回にリリースしたアプリがヒットしたことを示しています。
本当のヒットメーカーを絞り込む
上述したような、自社ヒット率100%の会社でも1本しかアプリを出していない場合は、本当の意味でのヒットメーカーとは呼べないでしょう。ヒットメーカーとは、「継続してヒットアプリを輩出できるSAP」です。そういう意味で私は表3から以下の二つの条件を満たすSAPを抽出してみました。
- ・提供アプリ数が(3PF合算で)5つ以上ある
- ・自社ヒット率が10%を越える
その結果が表4で、これが私の定義するヒットメーカーの一覧になります。 (クリックで拡大します)
この結果をそのまま受け止めると、日本の代表的なソーシャルPFにおける(私が定義する)ヒットメーカーは7社ということになります。これを多いと見るか少ないと見るかは、見る人によって見解が異なるところでしょう。
ヒットメーカーを分析してみる
表4を少しだけ分析してみます。1位のSAPは自社ヒット率が5割を超えています。 野球で考えると3割を超えれば好打者なので、かなり高い打率といえます。その下の2位、3位のSAPも3割超なので、かなり良いように見えます。私見ですが高打率の要因は、一つのPFでのヒット作の横展開であるように思えます。
その他、表3,4を見て思ったのは、「好打者はやはり多くのアプリを出している」ということです。よく、「ソーシャルアプリは水物」といわれます。ゲーム全般にいえることですが、出してみないとヒットするかどうかはわかりません。またヒットしていなかったアプリが、地道な運用/改善によって、ヒットアプリの仲間入りをすることも少なくありません。
そういう意味でもソーシャルアプリの成功は読みにくいのですが、私は「ヒットメーカーは全てのアプリを本気で作っている」、と考えています。「今回はまあ実験アプリだからこれぐらいで・・」とか、「なんか適当に作っちゃったらヒットしちゃったんだよねー」とか、そいう甘い話はもうほとんど無いのではないでしょうか。全てのアプリについて、多量の情熱と資本を投入しても自社ヒット率が1割を越えるSAPは7社しかないのです。厳しいようですが、「ソーシャルアプリで一旗あげる」、といってもそんなに甘い世界ではないことがデータからもわかります。
今回の調査結果の妥当性
今回はデータ面から、ヒットメーカーの打率に迫ってみました。「調査方法が厳密でない。ARPUやDAU、内部原価なども加えて厳密に計算しないとダメだ」、という意見もあるかも知れません。確かにそれはそのとおりです。しかし私はランキングを軸にヒットメーカーを抽出することはある程度妥当性があるかと考えています。
mixiを除くPFのランキングアルゴリズムは、正確にはわかりませんが、売上やDAUに基づいているという話もあります。また、ランキングは少なくとも、「(PFが操作をしていない限り)ユーザーに支持されている」という証でもあります。そしてPVやユーザーが集まっているということはマネタイズできるチャンスがあるということです。そういう意味で、[まずはヒットメーカーになる(≒ランキングに載る) → 事業的成功] という公式も、あながち間違いではないと考えています。
ただし、今回の調査結果において注意したいのは、[ヒットメーカーになる≠事業的成功] ということです。ヒットメーカーになっても内部原価が著しく高いSAPの場合、事業的成功は望めません。またそれ以前の話として、事業的成功の言葉の定義もSAPにより様々です。個人事業規模のSAPであれば、「1本当たって買収候補になれば十分」、という考え方もあるかもしれません。そういう意味で、ヒットメーカーになることと事業的に成功することは切り離して考えるべきだと思います。
まとめ
この記事を読まれているSAPさんの中には、「国内外のSAPとしてソーシャルゲームで一旗あげたい!」と考えられている方も多いのではないかと思います。それらの方々にとって、今回の調査の結果が「厳しい現実」であったのか、「希望の光」であったのかは受け取り手によって認識が分かれるところでしょう。
ちなみに私は必ずしもデータが重要だとは思っていません。むしろ、「ビジネスの成否は情熱が左右する」とすら思っています。しかし、バランスよくビジネスを展開するためには、やはりデータが欠かせません。今回の調査もそのバランスを取るために、私なりに確信を持ちたかったので実施しました。 拙い調査ですが本記事がこれからソーシャルアプリ市場に参入するSAPさんの参考になれば幸いです。
補足:
- 本記事に掲載してあるデータは、2010年7月23〜24日時点のものです。同日時から離れるほどデータの信憑性が低くなることをご了承ください。
- 本記事で使用したデータのHTMLはこちらにあります。
- 本記事に掲載してあるデータ(.xls)が欲しい方は@hisyamadaまでご連絡ください。
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