Crayの次世代スパコン
Crayは11月6日に同社の次世代スパコンとしてXT5ファミリーを免責条項付で発表した。つまり、あくまでこの発表はプランであって、達成できない場合はご容赦ください、ということで、出荷の時期は明記されていない。
http://investors.cray.com/phoenix.zhtml?c=98390&p=irol-newsArticle&ID=1073071&highlight=
XT5ファミリーの構成は、Opteron ベースの”XT5”とハイブリッドの”XT5h”で、XT5hは”XT5"を基本として、ベクタ機”X2”とReconfigurable Processor用の”XR1”で構成される。
XT5は以前からCrayがロードマップに載せていた1Pflops機の”Baker”のことと考えられる。XT4からの変更点は、Red Storm、XT3、XT4と続いた4ソケットから8ソケットに増強され、2ソケット当たり32GBでバンド幅25.6GB/sのローカル・メモリが配置され、Interconnectは3D Torusで1方向9.6GB/sのSeaStar2+に増強された。
8ソケットであるので、XT4と同じ1ラック24Bladeに192チップ収容可能となり、Quadコアの場合、1ラックで768コアということになる。クロックを2.6GHZとすると、1ラックで8Tflopsとなり、128ラックで1Pflopsということになる。
今年の8月にNSFのCyberinfraプログラムの Track2で$65Mのファンドを得たテネシー大のシステムは、このXT5の1Pflops機と考えられ、2009年前後の設置といわれている。このファンドから計算すると、Tflops単価は$65K(約748万円)で、さらに細かくいうとMflops単価は$0.065(6.5セント、7.48円)である。
ベクター機のX2は、CrayのロードマップでBlackwidowと呼ばれていた機械で、X1、X1Eの後継機である。基本的にはX1Eの水冷を空冷のBladeタイプにしたものと考えられる。
X2のCPU性能は20Gflopsで、1ボードに8CPUを搭載し、1ラックに16ボード、128CPUを集積し、ラック性能2.5Tflopsの機械である。価格の目標は$1/Mflopsとなっており、1ラック2.5Tflopsで$2.5M(約3億円)ということになる。このX2の目標単価はテネシー大のXT5と比べると15倍である。
先日発表されたNECのSX-9と比較すると、CPU性能は102Gflops対20Gflopsで圧倒的にSX-9が優勢であるが、ラック性能になると1.6Tfops対2.5Tflops(16CPU対128CPU)で、SX-9はX2の3分の2程度の性能ということになる。
X2の設置予定は2008年に1ラックシステムを英国のエジンバラ大学のACF(Advanced Computing Facility)に行うことが決まっているようである。このエジンバラ大のX2はHECToRという団体によりファンドされたCrayのRainierというシステムの一部で、59TflopsのXT4+と1ラックのX2が組になっている。このXT4+の部分は2007年に設置され、2008年にX2、そして2009年にはXT5のBaker(1Pflops目標)にまで拡張されるとなっている。RainierはDARPA-CrayのCascadeの一歩手前のシステムで、ラックレベルでのScalar-VectorのHybridシステムであるが、CascadeはボードレベルでのHybridを目指しているとされている。
このエジンバラ大の機械はHybrid構成とはいうもののスカラ59Tflops対ベクタ2.5Tflopsということからわかるように、実態はスカラ機であり、どうしてもベクタ機でなければ困るというユーザーに対し、ベクタ機もありますといった程度のものであろう。
XRD1はDRC Computer社のReconfigurable Processor Units (RPUs)をOpteronに接続して、FPGAによりDRCをカスタマイズして使用する専用用途の処理機である。
以上、今回の発表内容は、2006年末にCascadeがDARPAのHPCSプログラムでファンドを得たときに、既に語られていた内容であり、新鮮味に欠けるが、敢えて何らかの意味を求めるなら、Cray社が公式に報道発表を行ったということであり、また、発表の重み付けとしては、スカラー機のXT5がメインで、ベクタ機のX2はXT5hというHybridの一部に過ぎないというニュアンスが強く感じられることである。
エネルギー省のオークリッジ研究所(ORNL)は、テネシー州に所在し、ノックスビルにあるテネシー大学に運営をアウトソースされており、テネシー大とは極めて密接な関係にある。ORNLは、早くからCray-X1Eを導入しベクタ機にフェイバーの掛かった研究所で、文科省の次世代スパコン検討グループが動向を注視していた研究所である。ORNLは、その後、XT3(Jaguar)、TX4(Jaguar update)を導入し、前述のNSF−Track2ファンドによるテネシー大のXT5 -1Pflops機も設置場所がORNLと報道されている。
このORNLのスパコンの将来プランを見ると、XT5、あるいはその後継機は見当たる、X2(Blackwidow)などのベクタ機は見当たらないのである。基本的に各種実アプリケーションによるベンチマーク・テストの結果、ベクタ機なしで処理可能と判断しているのである。
いずれにしろ、メーカーもユーザーもベクター機の必要性は感じていないということで、ベクター機X2の開発は一種の保険であったということであろう。
因みに、今回発表されたCrayのXT5ファミリは、基本的に文科省の次世代スパコンとコンセプトは同じで、機能的にはCrayの方がReconfigurable部があるので大きくなっていると考えられるが、開発はCray1社で、米国政府が支払うのは、DARPAを通したCascadeに$250Mと、NSFーテネシー大を通したXT5の$65Mで、合計$315M(約362億円)と考えられる。
文科省の次世代スパコンの1,154億円の妥当性は、このCray の額と比較せざるを得ないであろう。
なお、筆者の誤解、思い違い、転記ミス、計算違い、あるいは不適切な表現等がございましたら、ぜひ、コメント欄にてご指摘いただけますと幸いです。
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