最終更新時刻:2008年7月25日(金) 21時03分

17

Crayの次世代スパコン

公開日時:
2007/11/07 19:00
著者:
能澤 徹

Crayの次世代スパコン

 Crayは11月6日に同社の次世代スパコンとしてXT5ファミリーを免責条項付で発表した。つまり、あくまでこの発表はプランであって、達成できない場合はご容赦ください、ということで、出荷の時期は明記されていない。
http://investors.cray.com/phoenix.zhtml?c=98390&p=irol-newsArticle&ID=1073071&highlight= 
XT5ファミリーの構成は、Opteron ベースの”XT5”とハイブリッドの”XT5h”で、XT5hは”XT5"を基本として、ベクタ機”X2”とReconfigurable Processor用の”XR1”で構成される。

 XT5は以前からCrayがロードマップに載せていた1Pflops機の”Baker”のことと考えられる。XT4からの変更点は、Red Storm、XT3、XT4と続いた4ソケットから8ソケットに増強され、2ソケット当たり32GBでバンド幅25.6GB/sのローカル・メモリが配置され、Interconnectは3D Torusで1方向9.6GB/sのSeaStar2+に増強された。
 8ソケットであるので、XT4と同じ1ラック24Bladeに192チップ収容可能となり、Quadコアの場合、1ラックで768コアということになる。クロックを2.6GHZとすると、1ラックで8Tflopsとなり、128ラックで1Pflopsということになる。
 今年の8月にNSFのCyberinfraプログラムの Track2で$65Mのファンドを得たテネシー大のシステムは、このXT5の1Pflops機と考えられ、2009年前後の設置といわれている。このファンドから計算すると、Tflops単価は$65K(約748万円)で、さらに細かくいうとMflops単価は$0.065(6.5セント、7.48円)である。

 ベクター機のX2は、CrayのロードマップでBlackwidowと呼ばれていた機械で、X1、X1Eの後継機である。基本的にはX1Eの水冷を空冷のBladeタイプにしたものと考えられる。
 X2のCPU性能は20Gflopsで、1ボードに8CPUを搭載し、1ラックに16ボード、128CPUを集積し、ラック性能2.5Tflopsの機械である。価格の目標は$1/Mflopsとなっており、1ラック2.5Tflopsで$2.5M(約3億円)ということになる。このX2の目標単価はテネシー大のXT5と比べると15倍である。
 先日発表されたNECのSX-9と比較すると、CPU性能は102Gflops対20Gflopsで圧倒的にSX-9が優勢であるが、ラック性能になると1.6Tfops対2.5Tflops(16CPU対128CPU)で、SX-9はX2の3分の2程度の性能ということになる。
 X2の設置予定は2008年に1ラックシステムを英国のエジンバラ大学のACF(Advanced Computing Facility)に行うことが決まっているようである。このエジンバラ大のX2はHECToRという団体によりファンドされたCrayのRainierというシステムの一部で、59TflopsのXT4+と1ラックのX2が組になっている。このXT4+の部分は2007年に設置され、2008年にX2、そして2009年にはXT5のBaker(1Pflops目標)にまで拡張されるとなっている。RainierはDARPA-CrayのCascadeの一歩手前のシステムで、ラックレベルでのScalar-VectorのHybridシステムであるが、CascadeはボードレベルでのHybridを目指しているとされている。
 このエジンバラ大の機械はHybrid構成とはいうもののスカラ59Tflops対ベクタ2.5Tflopsということからわかるように、実態はスカラ機であり、どうしてもベクタ機でなければ困るというユーザーに対し、ベクタ機もありますといった程度のものであろう。

 XRD1はDRC Computer社のReconfigurable Processor Units (RPUs)をOpteronに接続して、FPGAによりDRCをカスタマイズして使用する専用用途の処理機である。

 以上、今回の発表内容は、2006年末にCascadeがDARPAのHPCSプログラムでファンドを得たときに、既に語られていた内容であり、新鮮味に欠けるが、敢えて何らかの意味を求めるなら、Cray社が公式に報道発表を行ったということであり、また、発表の重み付けとしては、スカラー機のXT5がメインで、ベクタ機のX2はXT5hというHybridの一部に過ぎないというニュアンスが強く感じられることである。

 エネルギー省のオークリッジ研究所(ORNL)は、テネシー州に所在し、ノックスビルにあるテネシー大学に運営をアウトソースされており、テネシー大とは極めて密接な関係にある。ORNLは、早くからCray-X1Eを導入しベクタ機にフェイバーの掛かった研究所で、文科省の次世代スパコン検討グループが動向を注視していた研究所である。ORNLは、その後、XT3(Jaguar)、TX4(Jaguar update)を導入し、前述のNSF−Track2ファンドによるテネシー大のXT5 -1Pflops機も設置場所がORNLと報道されている。
 このORNLのスパコンの将来プランを見ると、XT5、あるいはその後継機は見当たる、X2(Blackwidow)などのベクタ機は見当たらないのである。基本的に各種実アプリケーションによるベンチマーク・テストの結果、ベクタ機なしで処理可能と判断しているのである。
 いずれにしろ、メーカーもユーザーもベクター機の必要性は感じていないということで、ベクター機X2の開発は一種の保険であったということであろう。

 因みに、今回発表されたCrayのXT5ファミリは、基本的に文科省の次世代スパコンとコンセプトは同じで、機能的にはCrayの方がReconfigurable部があるので大きくなっていると考えられるが、開発はCray1社で、米国政府が支払うのは、DARPAを通したCascadeに$250Mと、NSFーテネシー大を通したXT5の$65Mで、合計$315M(約362億円)と考えられる。
 文科省の次世代スパコンの1,154億円の妥当性は、このCray の額と比較せざるを得ないであろう。

 なお、筆者の誤解、思い違い、転記ミス、計算違い、あるいは不適切な表現等がございましたら、ぜひ、コメント欄にてご指摘いただけますと幸いです。

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

この記事に対するTrackBackのURL: 

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

2008年7月
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々今アーキテクチャが面白い
外資系エグゼクティブの日々
クロサカタツヤの情報通信インサイトインターネットのリュミエール
クロサカタツヤの情報通信インサイト
平野敦士カールのアライアンスInsightGoogleお前もか?
平野敦士カールのアライアンスInsight
江島健太郎 / Kenn's ClairvoyanceiPhoneという奇跡
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」サミット、サミット、そして今こそ!公衆無線LAN
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点暗黙共同体へ−秋葉原事件で考える
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点

読者ブロガー

個人・少人数制作アニメーション現代記 - 真狩祐志動画配信の影響なのかインターネット部門が「終了」
個人・少人数制作アニメーション現代記 - 真狩祐志
独断と偏見の気になる情報セキュリティGoogleというネットの巨大なメディアに支配される脅威
独断と偏見の気になる情報セキュリティ

企画特集

DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」
〜企業システムの仮想化環境の構築を支援〜

新着コメント

ルート134さん。コメントありがとうございます。 >すべての情報にはス......
Googleというネットの巨大なメディアに支配される脅威
投稿者:新倉 茂彦
コメントありがとうございます。 「消費者・生活者を主役とした行政への転換......
パブリックコメントは国民に知られていなかった( 2 )
投稿者:sumimotoshohei
こういう余計な人がいなければ、知られずにアリバイ工作できたのに。 //...
パブリックコメントは国民に知られていなかった( 2 )
投稿者:ルート134
一般にも、うけているが、マニア系にはHPLXの後継機なのでしょうね。 XPにも......
iPhoneの影で馬鹿売れしているみたい
投稿者:ルート134
>制作についてはこれといって語られない。 今週、4ch(読売)で深夜に少......
動画配信の影響なのかインターネット部門が「終了」
投稿者:ルート134

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]高い信頼性を普通に使う地球に優しい電源ユニット--Antec EarthWattsシリーズ EA-650
“自作ユーザーは、電源ユニットに何を求めるのか?”出力なのか、安定性なのか、それとも機能性なのか?難し
オンリーワンの個性を極めた超薄型テレビ--日立 Wooo UTシリーズ
日立製作所の超薄型液晶テレビWooo UT 770シリーズは2008年6月にラインアップが増強され、さらに日立らしい
[レビュー]“この手があったか”と思わせるパワーユーザーも納得のPCオンデマンド--「VALUESTAR G タイプR Luiモデル」+「Lui RN」詳細レビュー
「VALUESTAR GタイプR Luiモデル+PCリモーター」は、設置場所にとらわれずにPCを使える、NECが新しく提案
今週の新製品総チェック:ドコモ、au夏モデルが続々店頭へ、ビデオカメラは新機種ラッシュ
NTTドコモ、auなど、ケータイ夏モデルの店頭発売日が決定し、盛り上がりを見せている。9.8mmの超薄型ケータ
[レビュー]テレビを持ち歩ける最強ツール--ソニー、Blu-rayレコーダー「BDZ-A70」
[レビュー]ネットワーク対応の高機能デジタルフォトフレーム--ソニー「Canvas Online CP1」
15時間の行列で手に入れたiPhone 3Gファーストインプレッション--ソフトバンクモバイル「iPhone 3G」
北京を見逃すな!--2008年夏、今買うべき「薄型テレビ」
[レビュー]通勤鞄に忍ばせたい軽さと装着感--マクセルのノイキャンヘッドホン「HP-NC15」