BG/Lの値下げセール
BG/Pの1ラックの価格は初期のBG/Lと同じ$1.3M-$1.4Mの価格帯だといわれており、BG/Pの発表によりBG/Lの値段がどうなったのかは興味のある点であった。
http://www.hpcwire.com/hpc/1636039.html
http://www.networkworld.com/news/2007/062607-ibm-supercomputer.html
どうやら、昨年末から1ラック$0.8Mでクリアランスセールを行っていたようである。
http://www.pcworld.com/article/id,135334-pg,1/article.html
2007年6月のTop500にBG/Lが多数ランクインした理由は、どうやら、このBG/P発表を想定したクリアランスセールであった可能性が高い。
第5位のStorny Brook/Brookhaven National Lab.(BNL)は18ラックなので、日本円で17億強、第7位のRensselaer工大は16ラックで15億強と言うことになる。勿論、BG/Lは計算サーバーなので、これ以外にLOG-ONサーバーやファイルサーバが必要であろうからシステム全体ではもう少し高いはずであるが、それにしても、安くなったものである。
Storny Brook/BNLはロングアイランドの中ほどだし、Rensselaer工大は州都オーバニーの近くだったような記憶があるが、どちらもニューヨーク州にあることは確かで、一躍世界ブランドに躍り出た。これは単なる偶然なのか? それともご近所だけの口コミセールでもあったのか? スパコンも家電並みに安売り情報に耳目を凝らす必要のある時代に突入したのかもしれない。
とは言っても2007年末から2008年になればBG/Pがさらに安い価格性能比1,100万円/TFLOPS、つまり1.1万円/GFLOPSという価格で出てくるのであるから、最早、価格性能比的には中国製パソコンと同じか、もっと安くなってしまうことになるのであろう。
そーいえば、BG/Pは1ラック13.9TFで$1.3Mなので、地球シミュレータと同じ程度の性能にするには3ラック、$3.9MでOKとなる。多分BGは奇数ラックはサポートしていないので4ラックとして$5.2M、6億2千万円程度プラスサーバー類の価格となるが、地球シミュレータの年間の電気代で買い取れるかも知れない。
IBMのサイトを見るとBlue Geneには型番は無く、単に”Blue Gene Solution"となっているだけである。これはBGがIBMの本流である標準製品では無く、顧客の要求にあわせた特注品を提供するSolutionという位置づけであることを示している。標準製品の場合は会社が需要を予測して会社のリスクで機能や価格を決め開発投資を行うものであるが、Solution 製品場合は開発行為の前に顧客との契約が求められ、顧客との購入契約に基づき開発が行われる言う違いがある。
Top500のリストからわかるとおり、BGにはBG/LとBG/W及びBG Solutionと言う3つの呼び名がある。勿論、BG/LはLLNLのLであり、BG/WはIBMのWatson研究所のWである。そして、その他は購入者がBlue ProteinとかBlue Brainと言ったようなニックネームを付けているが、製品的にはBG Solutionである。
何故このような違いがあるのか。BGの価格と関係があるのか? 一般的開発ビジネスマネジメントの常識から推測できることは以下のような推定である。
BGの場合、少々経緯が複雑で、最初は基礎研のexpense処理で行う$100Mの単純な内部的な研究投資であったはずで、製品販売を目的とした投資では無いので、Pricingは無用であったはずである。しかし諸般の事情からエネルギー省の入札に組み込まれたため、販売を目的とした開発投資に変更になり、Pricingが必要になった。勿論顧客はLLNLである。対社外的にはLLNLとの契約以前に$100Mの研究投資を表明していたので、この線は崩せない。従って、LLNLとの契約も概ね$90Mから$100Mで行われたはずである。研究用のプロトタイプと販売目的の製品では全く品質のレベルが異なり、$100Mで製品が完成出来たとは思えない。つまり基礎研のプロトタイプ作成の研究投資予定額の$100MとLLNLからの$90Mが合算され、$190Mで2台が作成されたと考えるのが妥当であろう。1台作るのも、2台作るのも部品コストと組立費の差程度で大所では変わらない。これはPower5によるASC-Purpleの開発費と合致する。違いは1台で割るのか、2台で割るのかの差であり、BGは2台で割るので安くなっているのである。 このため、BGにはBGのビジネスを成立させた2台のBGがあり、1台がLLNLのBG/Lであり他の1台がwatson研のBG/Wと言うことで、それ以降は単にBG Solutionとなっとしているのではないかと思っている。
この結果、BG Solutionは、開発費はBG/LとBG/Wで回収済みであるため、コスト的には開発費のアモタイズ分は不要で単純な部品組立原価と小規模な営業経費だけで済むことになり、価格的に競争力の強い製品となっているように思えるのである。
BG/Pに関しては、BG Solutionの売り上げからの再投資分と既にANLや独プランク協会などの確定契約先があるようで、BG/Lと同様なPricingが可能であったのであろうと見ている。
これに引き換え、Powerサーバーの価格が高い理由は、山ほどあるように思える。機能的にはBG/Lのような単純な計算サーバーとは異なり全方位的なサーバー機能が必要であること、標準製品としての世界各国の基準への適合、世界各国での保守サービスの保証等々に加え、過去の先行製品開発の付けなどのしがらみもあるはずで、BGほど単純ではないからであろう。
<スパコン価格>
<日本のスパコン>の項でTFLOPS単価の表を示したが、その増強版を以下に示す。
DARPAの2件は、持続的性能で1PFLOPS、LINPACK実行性能で3PFLOPSであるので、Peakは4-5PFLOPS必要であろう。そして、この$250M、$244Mは最終フェースのみの価格で、第2フェーズでそれぞれ$50Mを得ているので全体では$300Mとしたほうが正しいかも知れない。それはともかく、米国では2010-2011年頃を見据えたLeadership Systemプロジェクトでも生産性ソフト開発込みでTFLOPS単価は1,000万円以下である。
ANLとORNLはともにDoE(エネルギー省)のOS(Office of Science)に属する研究所である。OSに属するその他の著名な研究所にはBNLやLBNL(ローレンス・バークレイ国立研究所) などがあるが戦後に出来たBNLを除いて、原子爆弾開発に関係した研究所である。
ANLはもともとは原子爆弾用のプルトニュームの研究のため冶金研究所という名称でシカゴ大学に設立された研究所で、コンプトン効果の発見で米国で最初のノーベル物理学賞を受賞したアーサー・コンプトンがオーガナイズし、ベータ崩壊の理論でノーベル物理学賞を受賞し、受賞式典に出席したまま米国に亡命したイタリア人核物理学者エンリコ・フェルミを招き、世界で最初に「制御された核分裂連鎖反応」を確認した研究所である。米国中西部における原子核物理研究の一大拠点である。コンピュータ関連の部門はMCS(Mathematics and Computer Science Division)で、NLCFプログラムに乗って結構大きくなっているようである。百万コアに向けた独自のOSやファイルシステムなどを作成している。
ORNLの始まりは、戦時中ウラニューム濃縮のためにテネシー州の田舎町クリントン近郊に建設されたクリントン・パイルと呼ばれた工場で、戦後、オークリッジ国立研究所と改名された。ノースキャロライナとの州境近くで、アパラチア山脈の南端のGreat Smoky Mountain国立公園の少し西側にある。NLCFプログラムの拠点である。
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能澤さん、素晴らしい一連の考察ですね。感服いたしております。
これを機に、日本の計算機業界のあり方を広く議論してもらいたいものです。