最終更新時刻:2008年9月5日(金) 23時13分

6

Reference Kit と言う魔物?

公開日時:
2007/12/26 04:56
著者:
おおぬか

村上敬亮より:

 ぼちぼちと、「産業分野横断的なビジネス戦略に弱い日本企業」というサブテーマから、「iPod型か亀山型か」というテーマへと、話を移していきたいと思います。

1.「顧客中心ではなく、製品中心に考えてしまう」ということ

 前回のエントリでは、熊澤さんのお力を借りて、「価値連鎖のマネジメン[続きを読む]

 

この記事ではマーケティング重視の必要性が語られていて、”職人志向の日本企業は特に製品中心になり易く、顧客の要求が変化しても着いていけずに同じ製品を作り続ける” これは私が日頃から感じている事です。 私の勤めている某半導体商社は某日本半導体メーカの代理店なのですが、このメーカは80年代後半日本の半導体産業絶頂の頃、6年連続生産額世界一になったという栄光から抜けられず、現在2年間赤字を続けており、親会社から切り離されいつ売り飛ばされるか噂が絶えない、現在の日本半導体の苦境の象徴の様な企業です。

口癖が、「技術では負けない」 「現在の製品を改良すれば充分対抗できる」 「ファブレスとか新しいトレンドなんて信用できない。 いつまで続くものか。 今までのやり方が結局一番信頼できる」 要は大企業病なのですが、マーケットが変化しているのについていけないのが最大の原因です。 これと対照的な企業の代表が台湾のFablessLSIチップメーカのMediaTechです。 様々の種類のReference Kitを揃え、お客さんはすぐ製品の製造に入れる(もちろんMediaTechのLSIを使って)事を売りに10年で大企業にかけあがり、現在も年率30%で成長を続けています。 日本半導体メーカとは対照的に、LSIメーカなのに、社内の技術者の過半数は、顧客のためにReference Kitや開発Toolを開発するソフトウェア技術者だとの事。 日本にも進出を始めたようです。

MediaTech

よく自動車産業と電機産業を比べて、どうして車のメーカはあれだけ世界で成功しているのに電機産業、特に半導体はダメなんだ? と言う疑問が湧くのですが、最大の理由は”技術の進歩とそれに伴うマーケットの変化の速度の差”でしょう。 車はもう100年も経つ製品で基本技術(内燃機関動力、4つのタイヤ、ハンドルやアクセルペダル)は変わっていません。 電気自動車も大した事ないし、ガンダムのような人の乗るロボットもまだありません(介護用、重作業用に少し出てきた)。 車の使い方も(人の移動と荷物の運搬)変わっていません。 馬から自動車に変わってから100年間同じマーケットなのです。 これなら日本流の”こだわりの職人根性”が最大に生きます。 トヨタが強いのはトヨタ自身の努力や経営があるのは当然ですが、ホンダ、日産、スズキと日本の自動車産業の強さを見れば、単なる個々の企業の強さでないのは自明です。 コマツのフォークリフトや三菱重工など、結局日本はマーケットが簡単に変化しない”重厚長大”産業に強いという事です。

これに比較して電気電子産業は1年どころか、3ヶ月単位で新製品、新技術が出てきます。 半導体も今や各種開発ツールの発達で”誰にでも開発できる”Comodity化しました。 いくら”うちの技術者が設計すれば信頼性の高いチップができます”と言っても、お客さんは遥かに早く安いアメリカのファブレス企業、台湾、中国に行ってしまう。 そして今インドがソフトだけでなく、LSI開発にも入ってきました。 ソフト以上にLSI開発、設計はアウトソースし易いので、日本の半導体企業は今後インドとの競争にも苦しむでしょう。

アップルはiPODの設計も生産もアウトソースしてファブレスメーカとして成功してます。 日本の電気メーカは再生できるのでしょうか? 電気製品、中でもデジタル機器はパソコンと同じパターンに入りつつあります。 台湾や中国にはReference Kitが出回り、電気電子部品を売るためには”すぐ量産に使える”Reference Kitを持っていかなければ売れないという状態です。 日本の半導体メーカでは相変わらず”ハードウェア優位主義”が幅を利かせ、Reference Kitや開発Toolの重要性が判っていません。 ソフト技術者の数がハード技術者を越えるなんて夢の話でしょう。

キャノンなどがデジタルカメラで頑張っていますが、これは各企業の努力の他に、カメラにはレンズ等の光学技術が必須でここがアナログ的でデジタルになりきれないので、日本企業の優位が保てているのです。しかしこの優位はいつまで続くのでしょうか? 80年代後半、評論家も経営者も「日本の半導体の優位は今後長く続く。 なぜなら...」ともっともらしい説明をしていましたが、それが追いつかれるのには時間がかかりませんでした。 今状況はもっと厳しくなっています。 インターネットで最新の技術情報は誰でも見れるし、台湾や中国、インド、ロシアなどの企業は投資資金を潤沢に持ち、教育を受けた優秀な技術者が掃いて捨てるほどいます。 恐らくデジカメなどでも低級機から追い上げが始まり、それが中級機更には高級機にも及んでくるのにそう時間は掛からない(10年?)のではないでしょうか? アップルのように製品のマーケティング、コンセプト、ソフトウェアで勝負できるなら大丈夫でしょうが、デジタル製品のメーカは全て危ないと言っても、そう的外れとは思えません。 もちろんそれに伴う部品メーカも影響を受けるでしょう。

”光学技術がどうこう” などと言っても、半導体産業で半導体製造装置メーカが外国企業に販売して、それが技術の拡散につながったと言われるように、日本の光学メーカの小さいところを買収しても良いし、下請けで苦労しているところを使っても良いのです。キャノンは自社内製造にこだわっているようですが、日本の産業構造からして、下請けで技術を持っているが、親会社に搾取されているところなどいくらでもありますから、そこから技術が流出するのは時間の問題です。 逆に言えば、今後日本の下請けにとって、日本以外のお客さんを捕まえる事が、親会社からの理不尽な搾取から逃れる有効な手段になるでしょう。 要はこのグローバル経済の時代、国内だけでなく世界を見なければいけない。 どこの国の企業でも”最も良い技術を持ち、最も効率の良い経営をする企業のみが生き残る”というのが当たり前の時代になったという事です。 デンソーもトヨタの下請けから脱する事で世界第2位の車載部品メーカになりました。

さて10年後、2017年には、トヨタ、キャノン、コマツはどうなっているでしょう? 又、Google, アップル、 任天堂、マイクロソフトは更に巨大化しているのでしょうか? アメリカから、今はまだない新ビジネス、新企業が出てきている事は確実でしょうが、それがいわゆる”Web2.0ビジネス”なのか判りません。 今までの歴史を見ると、”我々の想像のつかない新しいもの”である事の方が可能性は高いようです。 例によって日本の中ではそのマネをする企業が持てはやされている事でしょう。

今日はクリスマス。 Atlantaは朝から静かです。

Atlanta Christmas

では今日はここまで。

大額和良(おおぬか かずよし)

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

この記事に対するTrackBackのURL: 

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

2008年9月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

ケータイ時代のスタンダードiPhonista Nightの事後報告
ケータイ時代のスタンダード
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点ストリートビューは新デジタルデバイドを生む
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点
クロサカタツヤの情報通信インサイト北京オリンピック
クロサカタツヤの情報通信インサイト
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
村上敬亮 情報産業の未来図コンテンツ市場14兆円の中身と行方
村上敬亮 情報産業の未来図
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」場所・空間を増幅!?「ロケーション・アンプ」
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

夢幻∞大のドリーミングメディア「あなたとは違うんです」首相の存在感
夢幻∞大のドリーミングメディア
素人サーバ管理者のボランティア業務日誌我が家のD4もようやく機能強化に旅立ちます
素人サーバ管理者のボランティア業務日誌

企画特集

サーバ仮想化・グリーン化の利点を最大化!サーバ仮想化・グリーン化の利点を最大化!
多機能・高価値なNetAppストレージの秘密とは

新着コメント

サポートが悪いので課金コンテンツなんて開始したくないですね。 課金トラブ......
イーモバに冷たい各社
投稿者:blade
きむこうさん、コメントありがとうございます。 >  ソフト屋サンというと......
まず10年間は泥のように働け2
投稿者:生島勘富
いつも佐々木さんの記事を楽しみしています。 ストリートビューで汚い自宅が......
ストリートビューは新デジタルデバイドを生む
投稿者:gg
→niroさん コメントありがとうございます。確かにniroさんのおっしゃる通り......
イーモバに冷たい各社
投稿者:isidai
→shiestさん コメントありがとうございます。Googleの公式なアナウンスで「......
夢=Opera+Chrome+Ubiquity
投稿者:isidai

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

プレスリリース

pixiv、ユーザー数が30万人を突破
クルーク
あなたが変われない「8つの理由」。常識だと思い込んでいる考え方を取り除いて、今感じている「壁」を突破しよう。話題の書籍『「心の翼」の見つけ方』(フォレスト出版刊、浜口隆則著)が、インターネットラジオ番組サイト『BizPro.FM−ベストセラーズチャンネル−』(起業
特定非営利活動法人起業家大学
自分の中にある素晴らしい可能性に気づき、すべてが豊かに手に入る魔法のルール。これを知っている人こそ、「感動の億万長者」。話題の書籍『感動の億万長者30のルール』(サンマーク出版刊、平野秀典著)が、インターネットラジオ番組サイト『BizPro.FM−ベストセラーズチャ
特定非営利活動法人起業家大学
その頭のままでは仕事がなくなる!「感性とビジネスの第一人者」が送る、「さびないビジネス人になる道」。話題の書籍『ビジネス脳を磨く (日経プレミアシリーズ 6) 』(日本経済新聞出版社刊、小阪裕司著)が、インターネットラジオ番組サイト『BizPro.FM−ベストセラーズチ
特定非営利活動法人起業家大学
『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い 禁じられた数字〈下〉』(光文社刊、山田真哉著)が、2008年9月7日(日)放送のFMラジオ番組『ベストセラーズチャンネル』(起業家大学制作、パーソナリティ主藤孝司)に取り上げられます。
特定非営利活動法人起業家大学

レビュー

今週の新製品総チェック:ノート、デスクトップ、UMPCまでPC秋モデルが続々
富士通、NEC、東芝などのPCメーカーから続々と新製品が登場した。ノートPC、デスクトップPCに加え、注目の
今週の新製品総チェック:薄さ13.9mmのサイバーショット登場!NEC「LaVie」はデザインモデルが
最薄部13.9mmのソニー「サイバーショット」、ニコンのGPS内蔵デジカメ「COOLPIX」など、機能性、デザイン性