村上敬亮より:
ぼちぼちと、「産業分野横断的なビジネス戦略に弱い日本企業」というサブテーマから、「iPod型か亀山型か」というテーマへと、話を移していきたいと思います。
1.「顧客中心ではなく、製品中心に考えてしまう」ということ
前回のエントリでは、熊澤さんのお力を借りて、「価値連鎖のマネジメン[続きを読む]
この記事ではマーケティング重視の必要性が語られていて、”職人志向の日本企業は特に製品中心になり易く、顧客の要求が変化しても着いていけずに同じ製品を作り続ける” これは私が日頃から感じている事です。 私の勤めている某半導体商社は某日本半導体メーカの代理店なのですが、このメーカは80年代後半日本の半導体産業絶頂の頃、6年連続生産額世界一になったという栄光から抜けられず、現在2年間赤字を続けており、親会社から切り離されいつ売り飛ばされるか噂が絶えない、現在の日本半導体の苦境の象徴の様な企業です。
口癖が、「技術では負けない」 「現在の製品を改良すれば充分対抗できる」 「ファブレスとか新しいトレンドなんて信用できない。 いつまで続くものか。 今までのやり方が結局一番信頼できる」 要は大企業病なのですが、マーケットが変化しているのについていけないのが最大の原因です。 これと対照的な企業の代表が台湾のFablessLSIチップメーカのMediaTechです。 様々の種類のReference Kitを揃え、お客さんはすぐ製品の製造に入れる(もちろんMediaTechのLSIを使って)事を売りに10年で大企業にかけあがり、現在も年率30%で成長を続けています。 日本半導体メーカとは対照的に、LSIメーカなのに、社内の技術者の過半数は、顧客のためにReference Kitや開発Toolを開発するソフトウェア技術者だとの事。 日本にも進出を始めたようです。
よく自動車産業と電機産業を比べて、どうして車のメーカはあれだけ世界で成功しているのに電機産業、特に半導体はダメなんだ? と言う疑問が湧くのですが、最大の理由は”技術の進歩とそれに伴うマーケットの変化の速度の差”でしょう。 車はもう100年も経つ製品で基本技術(内燃機関動力、4つのタイヤ、ハンドルやアクセルペダル)は変わっていません。 電気自動車も大した事ないし、ガンダムのような人の乗るロボットもまだありません(介護用、重作業用に少し出てきた)。 車の使い方も(人の移動と荷物の運搬)変わっていません。 馬から自動車に変わってから100年間同じマーケットなのです。 これなら日本流の”こだわりの職人根性”が最大に生きます。 トヨタが強いのはトヨタ自身の努力や経営があるのは当然ですが、ホンダ、日産、スズキと日本の自動車産業の強さを見れば、単なる個々の企業の強さでないのは自明です。 コマツのフォークリフトや三菱重工など、結局日本はマーケットが簡単に変化しない”重厚長大”産業に強いという事です。
これに比較して電気電子産業は1年どころか、3ヶ月単位で新製品、新技術が出てきます。 半導体も今や各種開発ツールの発達で”誰にでも開発できる”Comodity化しました。 いくら”うちの技術者が設計すれば信頼性の高いチップができます”と言っても、お客さんは遥かに早く安いアメリカのファブレス企業、台湾、中国に行ってしまう。 そして今インドがソフトだけでなく、LSI開発にも入ってきました。 ソフト以上にLSI開発、設計はアウトソースし易いので、日本の半導体企業は今後インドとの競争にも苦しむでしょう。
アップルはiPODの設計も生産もアウトソースしてファブレスメーカとして成功してます。 日本の電気メーカは再生できるのでしょうか? 電気製品、中でもデジタル機器はパソコンと同じパターンに入りつつあります。 台湾や中国にはReference Kitが出回り、電気電子部品を売るためには”すぐ量産に使える”Reference Kitを持っていかなければ売れないという状態です。 日本の半導体メーカでは相変わらず”ハードウェア優位主義”が幅を利かせ、Reference Kitや開発Toolの重要性が判っていません。 ソフト技術者の数がハード技術者を越えるなんて夢の話でしょう。
キャノンなどがデジタルカメラで頑張っていますが、これは各企業の努力の他に、カメラにはレンズ等の光学技術が必須でここがアナログ的でデジタルになりきれないので、日本企業の優位が保てているのです。しかしこの優位はいつまで続くのでしょうか? 80年代後半、評論家も経営者も「日本の半導体の優位は今後長く続く。 なぜなら...」ともっともらしい説明をしていましたが、それが追いつかれるのには時間がかかりませんでした。 今状況はもっと厳しくなっています。 インターネットで最新の技術情報は誰でも見れるし、台湾や中国、インド、ロシアなどの企業は投資資金を潤沢に持ち、教育を受けた優秀な技術者が掃いて捨てるほどいます。 恐らくデジカメなどでも低級機から追い上げが始まり、それが中級機更には高級機にも及んでくるのにそう時間は掛からない(10年?)のではないでしょうか? アップルのように製品のマーケティング、コンセプト、ソフトウェアで勝負できるなら大丈夫でしょうが、デジタル製品のメーカは全て危ないと言っても、そう的外れとは思えません。 もちろんそれに伴う部品メーカも影響を受けるでしょう。
”光学技術がどうこう” などと言っても、半導体産業で半導体製造装置メーカが外国企業に販売して、それが技術の拡散につながったと言われるように、日本の光学メーカの小さいところを買収しても良いし、下請けで苦労しているところを使っても良いのです。キャノンは自社内製造にこだわっているようですが、日本の産業構造からして、下請けで技術を持っているが、親会社に搾取されているところなどいくらでもありますから、そこから技術が流出するのは時間の問題です。 逆に言えば、今後日本の下請けにとって、日本以外のお客さんを捕まえる事が、親会社からの理不尽な搾取から逃れる有効な手段になるでしょう。 要はこのグローバル経済の時代、国内だけでなく世界を見なければいけない。 どこの国の企業でも”最も良い技術を持ち、最も効率の良い経営をする企業のみが生き残る”というのが当たり前の時代になったという事です。 デンソーもトヨタの下請けから脱する事で世界第2位の車載部品メーカになりました。
さて10年後、2017年には、トヨタ、キャノン、コマツはどうなっているでしょう? 又、Google, アップル、 任天堂、マイクロソフトは更に巨大化しているのでしょうか? アメリカから、今はまだない新ビジネス、新企業が出てきている事は確実でしょうが、それがいわゆる”Web2.0ビジネス”なのか判りません。 今までの歴史を見ると、”我々の想像のつかない新しいもの”である事の方が可能性は高いようです。 例によって日本の中ではそのマネをする企業が持てはやされている事でしょう。
今日はクリスマス。 Atlantaは朝から静かです。
では今日はここまで。
大額和良(おおぬか かずよし)
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