前回の続きでアメリカの宗教状況、特にキリスト教原理主義者などの動きについてあまり日本に知られていない事を書いてみましょう。 例によってWikiを拝借しますが、 今アメリカで話題の一つがこの”インテリジェント デザイン”です。
インテリジェント・デザイン(「知的設計」論、intelligent design)とは、知性ある設計者によって生命や宇宙の精妙なシステムが設計されたとする説。しばしば、ID(アイディー)と略される。
聖書信仰を基盤にする宗教的な論説の創造科学から宗教的な表現をなくして一般社会や学校教育など、広く受け入れられるようにしたもので、近年のアメリカ合衆国で始まった。宗教色を抑えるために、宇宙や生命を設計し創造した存在を「神」ではなく「偉大なる知性」と記述することが特徴である。これにより、非キリスト教徒に対するアピールを可能とする。また宗教色を薄めることで、政教分離原則を回避しやすくなる(公教育への浸透など)。
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要するに形を変えた反進化論です。 私がアメリカに来て信じられなかった事の一つに、未だに「ダーウィンの進化論は間違っている」 と本気で信じている人が一杯(どころかマジョリティ)いると言うことです。 現大統領ジョージブッシュの支持層に代表されるのですが、一般にFundamentalist(キリスト教原理主義者)と言われる人々がそうなのですが、それだけなら南部の貧しい白人(Poor White 又はRed Neckとか言われる。 カントリーミュージックの愛好層とも重なる) なので人数的にはそう多くは無い(アメリカ全人口の5%以下?)のです。 しかし、そこまで狂信的でなく、毎週教会に行き、バイブルを読み、家族を大切にする、都会でなく田舎や小都市に住んでいる、ちょっと保守的なアメリカ人(恐らく全人口の3分の1以上?)の人々が、未だにダーウィンの進化論を完全には信じていない、と言うことです。 (2004年11月のCBSの調査では、55%のアメリカ人が神が人を創造したと考えているという結果がでている[2]。)
彼らはFundamentalistと違って教育もあり進化論が正しい事は頭では判っているのですが、それを公の場所で大声で言う気にはなれない。 (アメリカにおいて、生物の授業で進化論に言及したがらない教師が存在するのは、教育委員会や一部の親からの抗議などが無言の圧力になっているとされている。 ) バイブルに書いてある事の方が正しい(キリスト教の神様が天地を6日で作った。 アダムとイブが全人類の祖先)のではないかという気持ちが心の奥底に潜んでいる。 日本人が神話を信じているのと同じなのですが、日本人が神話と科学をきちんと分けて理解しているのと違い、神話(バイブル)と科学的真実を分ける事ができないのです。
これはイスラム教原理主義者がコラーンを信じて自殺攻撃をするのと基本は同じです。 近代以前のメンタリティ(心の持ち方)でしょう。 しかし前回も言いましたが、アメリカの方が世界標準に近いのです。 現在でも世界の多くの国では宗教は科学よりも大きな影響力を持っています。 貧しい国ではそもそも科学の教育が普及していません。 ただ、ダーウィンの進化論を真っ向から否定するのはキリスト教国だけかもしれませんが。 (仏教やヒンズー教は科学との相性が良い?)
こういう国なので、ちょっと何か起きるとすぐ宗教論争に火がつき、その大きな火種がダーウィンの進化論なのです。 キリスト教以外でも、黒人の中に多いアフリカのまじない(ブードー)のようなものや、メキシコ系にもやはり土着の宗教的なものがあるようです。 こういうものは本来各民族固有のものがあっておかしくない訳ですが、問題はそれを科学と一緒にしたり、その中ある祖先たちの知恵を学ぶのでは無く、文字通りそのまま現在に通じさせようとする無知と頑迷さです。 なにしろ現職の大統領が「インテリジェントデザインを高校の科学の授業で教えるべきだ」 等と言うのですから。 (2005年8月 ジョージ・W・ブッシュ米大統領は、インテリジェント・デザイン論が学校で教えられることはよいことだと発言した。) 最も直近では2年前に(インテリジェントデザインを高校の科学の授業で進化論と並べて教えるべきだという主張)裁判が起こり、結局最高裁まで行きました(もちろんインテリジェントデザイン側の負けでした)
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2005年にはペンシルベニア州でも同州のドーバー学区が高校の生物の授業にインテリジェント・デザイン論を導入しようとした。しかし父兄の訴えにより起こった裁判で同州連邦地裁は同年12月20日同教育に違憲判決を下した。ジョーンズ判事は、インテリジェント・デザイン論は「科学理論ではなく宗教的見解」だと判断し、同論の目的は「公立学校で宗教を教えることにある。信じられない愚行だ」と述べた
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そういう訳で今でもアメリカでは宗教が大きな問題なのですが、大本は1925年に起きた進化論裁判、通称Monkey Trialです。
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これらの反進化論法に対し、裁判の場で争って廃止しようとする動きを主導したのが、ACLU(American Civil Liberties Union, アメリカ市民自由連合, 全米自由人権協会)だった。ACLUは表現の自由など様々な市民の自由を守るための活動を続けている団体である。
ACLUは進化論教育を禁じる法律を裁判にもっていくために、進化論を実際に公立学校で教えて逮捕される志願者を広告で募集した。そして実際に教育の場で進化論を教えたとして逮捕されたのがテネシー州デイトンの理科と体育の教師ジョン・スコープスだった。もっともジョン・スコープス自身は、科学的使命に燃えて殉教者となったわけではなかった。実際にACLUの広告に応募したのは裁判によって知名度をあげようとした町の顔役たちであり、スコープスは彼らに頼まれて臨時の生物の授業のときに進化論の話をしたという証言をしただけであった。
検察側の代表としてウィリアム・ジェニングズ・ブライアンその人が、そして弁護側の代表として有名な弁護士だったクラレンス・ダローがでることになった結果、この裁判は全米の注目を集めることになった。これが1925年テネシー州デイトンで行われたスコープス裁判(Scopes Trial)である。アメリカでは、通称モンキー裁判(Monkey Trial)として知られている。 この裁判は結局有罪判決となり、スコープスには罰金100ドルが科せられた。弁護側は控訴審で法律の可否を争うつもりだったのである。しかし、控訴した州最高裁では、罰金額がテネシー州の規定に違反して不当に高いとしてこの裁判自体が無効とされることになった。
一般にはこの裁判は、ダローがブライアンに、ヤハヴェが実際に6日間で世界を創造したわけではないかも知れないと認めさせたことから、ダローの勝ちとされている。しかし、ダローが罰金額に対して異議を唱えなかったために裁判自体がないものとされてしまい、裁判によって法律を廃止しようとしたACLUの思惑はくずれてしまうことになってしまった。結局1967年にこの法律の廃止が決定されるまで、40年以上もの間、反進化論法が存続することになるのである。
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現在アメリカでは来年の大統領選挙の前の各政党毎の予備選が始まっています。 共和党は保守が基盤なのでどうしても宗教の話が民主党より多くなります。候補を集めた討論会が何度か行われ、最後に一般からの質問を受け付けます。 YouTubeを使ったビデオ質問も出てきました。 この前あったのは 20代の白人の男性が(どうやら原理主義者らしい)「あなたはバイブルに書いてある事を文字どうり(自分で解釈したりしないで)信じますか?」という質問がありました。 さすがに候補者たちは「文字どおり信じる」とは言えないので、「バイブルは偉大な本だ」とか、「私は毎日読んでいる」とか、「何か困った事が起きた時はいつでもバイブルを読む」 とか答えていました。 質問者のビデオには続きがあり「あんたが文字通りバイブルを信じていないなら、こうしてやるよ」と言って機関銃を撃って終わっていました。 半分は冗談で候補者達も笑っていましたが、TVや会場で見ている人も含めて、それが完全な冗談では無い事をみんな知っていましたので、笑い方にも何か影があるように感じられました。 実際、ここで変な答え方をしたら、現実的に、後で遊説中に撃たれる可能性があるのですから。
共和党有力候補の一人元マサチューセッツ州知事のロムニー氏は、モルモン教徒なので、当初から宗教論議が出ていました。 アメリカでプロテスタントでない大統領は今までに1人だけ、John F. Kennedyのみです。 彼はアイリッシュ系でありカトリック教でした。 そのため選挙の前に「宗教(カトリックの教義)と大統領の職務を混同しない」と言う有名な演説をしたのです。 ロムニーさんもKennedyに習って、「モルモン教の教義と大統領としての職務を混同しない」と言う宣言をするように言われており、当初は拒否していたのですが、この間ついに宣言するはめに追い込まれました。 これも今のアメリカの一断面でしょう。
今日のおまけはWikiから。 ダーウィンの風刺画:進化論が話題になると、しばしばこのような風刺画が書かれました。 ダーウィンが始めて王立学会で進化論を発表した時、当時の最高の学者の一人が「ところでサルから進化したのは、あなたの父方のご先祖かね? それとも母方かね?」と言われたのは有名な話です。 しかしこの種の話はいくらでもあって、アーサー C. クラークは、ある科学分野の権威者が、「これこれの事ができる」と言った時は信じても良いが、「これこれの事は不可能だ」と言った時は間違いが多いので信じてはいけない。 と言っています。 どんな分野でも一旦成功してしまうと、新しいもの、自分の理解できないものに抵抗したくなるものなのでしょう。 本来ならその分野の権威であれば未知の可能性をも良く理解しているはずなのですが。
そう言えば、アインシュタインが量子力学に反対したのも有名な話です。 皮肉な事に彼の作った相対性理論は量子力学への一歩であったのに、それが見えなかった。 そして言った言葉が「神はサイコロ遊びをしない」 神様を科学の世界に持ち出すのはアメリカ人に限った事ではないですね。 では今日はここまで。
大額和良(おおぬか かずよし)
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
shinkaiakikazu on 2007/12/17
前から気になるので、ひとつだけ...。御参考になさっているのは、どの「Wiki」でしょうか。お願いですから、「Wikipedia」は「Wiki」を使ったひとつのシステムに過ぎないということを御理解ください(Wikimedia財団には、WikibooksやWiktionary、Wikiquoteなどのプロジェクトもありますし)。Google Alertで「Wiki」の動向を追いかけていると、Wikipediaの記事が出てきてたまらんのです。
ゆきち99 on 2007/12/17
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別にwikiが問題なのではないと思いますよ。
アメリカの宗教状況、特にキリスト教原理主義者などの動きについてあまり日本に知られていない事を書いてみましょう。 例によってWikiを拝借しますが、 今アメリカで話題の一つがこの”インテリジェント デザイン”です。