Vocaloid第2弾、鏡音リンです。 
今回は初音ミクと著作権について書いてみたいと思います。 この件についてはもうあちこちに書かれているので読んだり考えたりしている人も多いと思います。 又、ミクだけでなくCGM(Cosumer Generated Media)の著作権については、通常の(プロが作って販売している)音楽や映画以上に複雑な点がありますので、それについても一言書きたいです。
「著作権なんてかんけいねーよ!」と言ってるあなた、あなたにも関係あるんですよ。 これからのWeb2.0社会ではいっそう重要になってきます。 その内、飲み屋で横に座ったかわいい女の子が、「ねーあたしロックグループやってるんだけど、ネットで自分達の歌を売れるって本当? その時なんか著作権とかいう法律が絡んでくるらしんだけどさー、あんた何か知ってるー?」 とか言われ、そこですらすらと説明してやると、一気に尊敬ムードになってその後のお付き合いにもつながる、なんて事が起きる時代なんでっせ。
まずミクで作った音楽に対しての著作権に関しては発売元のクリプトンではこの様に言ってます。
この中ではソフトウェアパッケージについては通常のソフトウェアと同じですので省略して、このソフトで作った合成音声(ミクの歌声)について述べているところを取り上げると。
3. 合成音声の使用の制限
お客様が公序良俗に反する歌詞を含む合成音声を公開や配布することはどのような方法であっても許されません。
お客様がライブラリの歌手本人だけでなく、第三者の人格権を侵害する合成音声を公開または配布することは許されません。お客様が合成音声を公開あるいは配布したことにより発生したいかなるクレーム、訴訟、直接的、派生的、付随的または間接的な損害に対しても弊社は一切責任を負いません。
お客様が本ソフトウェアによる合成音声を以下の形態で使用する場合には、本使用許諾契約とは別に弊社から別途の使用許諾契約が必要となります。もしそのような使用許諾契約が必要であれば、弊社までご連絡下さい。
(a) 主として、商用カラオケソフトウェア、カラオケハードウェア、インターネットを利用したカラオケ製品システムやサービスの開発での使用など、商用のカラオケサービスあるいはシステムにおいてバックコーラス等の歌声に合成音声を使用する場合。
(b) 他の楽器や音楽作品中の音との組合せで使用する場合以外で、電話機の呼び出し音(いわゆる「着メロ」を含む)、電話や電話用機器での警告音として合成音声を商用に使用する場合。
----- 引用終了 ---
3の前半の ”公序良俗に反する歌詞を含む...”については問題ないでしょう。 これは著作権では無く刑法に引っかかります。 要は「包丁で人を刺してはいけません」と言うのを、包丁メーカが言っているようなものですから、著作権の立場からは必要無いものです。 ただ、クリプトンとしてはミクのイメージを保つ為に入れたのでしょう。
しかし残念ながらと言うか、喜ばしい事にと言うか、ミクの声をポルノ動画に使ったり、アダルトアニメの声優をやらせたりする事を、この条項で禁止する事はできないと思います。 作成された動画が映倫等のチェックを通った「合法なポルノ」であれば、ミクをそれに使う事を禁止する事は、不当な差別になると思われますので禁止はできないでしょう。 つまり、クリプトンとしては合法の範囲で使われる事に制限は掛けられない事になります。 「あいつの作るものはきらいだから、使わせない」という事はできないと思います。 恐らく今後(もう既に?)、ポルノアニメ等にミクが使われるのは避けられないのでは無いでしょうか?
(a)と(b)については、どちらも「商用目的での使用について」です。 つまり「個人的使用」については関係ありません。 これは著作権一般で「一定の条件での使用目的では侵害を認めない」 条項があるからで、例の”CDをコピーしたり、テレビをヴィデオにで録画したりしても、個人で楽しんでいる分にはOK"と言うナップスター以来、どこの音楽や動画アップサイトが主張した事です。 基本的にこれはどこの国でも認められているので今後も変わる事は無いでしょう。 ただし、あくまで「個人的使用」ですからナップスターの様に「個人的使用の仮面をかぶったビジネス」が認められる事はありません。
さて後半の「以下の形態で使用する場合には、本使用許諾契約とは別に弊社から別途の使用許諾契約が必要となります。」の部分ですが、これについては私は疑問があります。 私が思うに「クリプトンはミクを使って作った音楽(ミクの歌声)については、基本的に何らの著作権を主張できないのではないか」という事です。 この点長くなるので次から説明しましょう。
まず第一に「ミクの著作権」と言うときに2つのものが混同されていると思います。 つまり、
1はいわゆるキャラクターですので各種のマンガのキャラクターや俳優、有名人の肖像権ですね。 これは判ると思います。 これについてはクリプトンが権利を持っていますので使用にはクリプトンの了解と使用料の支払いが必要になるでしょう。 もっともクリプトンはかなり鷹揚なので払わなくても済む場合が多いようですが。 ですからにこにこ動画にアップされている動画についても、個人的使用の範囲を超えて商用製品に使う場合はクリプトンの了解が必要です。
問題は2ですが、私が考えるに「キャラクター抜きのミクのソフト」 は要するに楽器です。 ギターやピアノと同じ楽器ですので、これを使って作った音楽に対して楽器メーカが著作権を主張するのは無理だと思います。 つまり、スタインウェイ(有名な高いピアノ)のピアノを使って黛敏郎が交響曲を作曲した場合、黛はスタインウェイ社に許可を求めるだろうか?という事です。 もちろんそんな事はありえません。 我々が彼の作曲した音楽を聴く時に彼がどんなピアノ、楽器を使って作曲したかなんて関係ありません。 曲の紹介にも乗らないでしょう。 大量生産された安物のピアノであろうと、世界に1台しかない「幻のピアノであろうと」、ピアノメーカには著作権はありません。
同様に、「クリプトンのソフトを使って作った音楽」 そのものにはクリプトンは何らの権利も無いと思います。 ただ一言でも「初音ミク」が出てきて、それが例の「青い長髪のキャラクター」を喚起させるのなら、そこには1のキャラクターの権利が入って来ます。 バーチャルアイドルとしてミクを使う場合は当然キャラクター権に引っかかってきますし、今のミクフィーバに乗りたいビジネスの場合は、ミクの名前を出さない事はありえない訳ですから、当然著作権料の支払いが必要でしょう。 しかし、例えばパソコンゲームの声にミクを使ったが、「うちはゲームの魅力で十分売れるので、あえてミクの名前はいらない」と判断したメーカがあったら、クリプトンは著作権を主張できないと思います。 もちろんゲームのパッケージのどこにも、初音ミクもクリプトンも表示できないですが。
こちらのサイトでは私と同じ判断で「バーチャル歌手は人間ではない」 「チンパンジーが描いた絵に著作権は発生しない」と言う言い方をしています。 ミクをチンパンジーと比べてはかわいそう。 せめて楽器と言ってあげたいですね。 でもこのWebサイトは著作権関係では充実している上に面白いのでお勧めです。 私が見落としていた、元の声の提供者である声優の藤田さんにもなんらの権利が無いと言っています。
今回本当は「初音ミク」本体では無く「はちゅねミク」について書きたかったのですが、そこに行くまでに長くなってしまったので次回にお預けにします。 「はちゅねミク」は著作権では一番難しい「パロディ」の問題を含んでいますので、考えると面白いのです。 そしてにこにこ動画でのマッシュアップ(人の動画や音楽を組み合わせたり、にこ動のコメントを入れたりする行為)についても書きたいです。 これは単にミクの問題では無く、最初に書いたようにCGM全体に関係してくる事ですから。 ではいつもの様に最後におまけです。
アトランタ空港の地下の通路は各コンコースをつないでいます。 普通は専用列車に乗っていくのですが、私は運動の為に良く歩きます。 そこにアフリカをテーマに美術品が飾ってあります。 音楽も流れて一瞬空港にいる事を忘れてしまいます。 成田にはスペースの問題もあってこういう遊び心は無いのが残念です。 アトランタだけでなくアメリカの大きな空港はみなこういうスペースを持っています。 展示品は主に石の彫刻で20くらいあるのですが、3つ紹介しましょう。 どれも先進国の洗練された作品には無い、土着の力強さを持っています。



では今日はここまで。
大額和良(おおぬか かずよし)
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