一応あまりこういうものに慣れていない人のために簡単な用語解説を書いておきます。 知っている人はここは無視して本文へ飛んで下さい。
初音ミク: ヤマハの音声合成システムを使った、メロディーと歌詞を入力すると歌ってくれるソフトウェア。 DTM(Desktop Music)というカテゴリーのソフトウェア製品。 今年(2007)9月にクリプトンフューチャーメディア社より発売される。 DTMソフトは1000本売れればヒットとされるが、10月の時点で20000本を超えてDTMソフト全体の30%以上を占めるメガヒットとなっている。 あまりの売れ行きに個人商店に近いクリプトンでは出荷が間に合わず一時品切れ店が続出し、eBayで3倍のプレミアム価格がついた。 又、デモ版のCDを付録につけたDTW雑誌DTMマガジンが売り切れで手に入らないという前代未門の事態におちいった。 VocalとAndoroidを組み合わせたVocaloidというのがカテゴリー名なので正式名称は ”Vocaloid 初音ミク”。
みっくみっくにしてあげる: 初音ミクオリジナルソングのさびの部分で繰り返される決め言葉。 ”ミクのとりこにしてあげる”といったくらいの意味。
にこにこ動画: 2チャンネル管理人”ひろゆき氏”が今年(2007)作った動画投稿サイト。 投稿された動画にコメントを後から他のユーザがつけられ、それがテロップのように画面に流れる仕組みで人気を集める。 アクセスの増加にシステムが追いつかず現在ユーザIDで時間制限をかけている。
YT: Youtube 世界最大の動画投稿サイト。 企業後1年足らずでGoogleに2000億円で買収され、現代版”アメリカンドリーム”として話題になった。 本当かどうか判らないが、買収の2週間前に入社した、受付の女の子がストックオプションでミリオネイヤになったと言われている。
CGM: Consumer Generated Media プロの歌手やアーティストが作成した作品では無く、普通のユーザが作成者になって作り出した作品とその流通による社会の変化を意味する。 YTや写真投稿サイトなどにプロ顔負けの高レベルの投稿が続出し、”これならわざわざ高いお金を出して買う必要無いじゃない?” という疑問も出てきた。 1970年代エコノミスト マーシャル マクルーハンによって提唱されたProsumerという、Producer(生産者)とConsumer(消費者)を統合した言葉もこれに近い意味を持っている。
このブログを始める前、10月の中ごろ初めて初音ミクにクラッシュしまして、それからは”にこ動”のメンバーになったり、YTを会社でこっそり(と言っても日本と違い、ボスとは離れた広い部屋にいるので、音楽かけてても問題ないんですが)聞いています。 とりあえず話題の初音ミクを聞いてもらいましょう。 このメロディー、歌詞ともオリジナルでまさしくCGMです。 トータルで50万回以上ダウンロードされています。 将来ミクのCDがでるなら(おそらく出るでしょう)確実に入る1曲でしょう。 3Dグラフィックも素人とは思えないできです。 なぜか長ネギがミクの一つのポイントになってます。
こちらは”はちゅねミク”という、幼児体形のキャラクターです。 メインキャラクターは写真のイメージですが、この3頭身のキャラクターはにこ動でユーザが作り上げ、本来のキャラクターとは離れて一人歩きを始めています。 こちらが好みだというユーザも多い。 いわゆる”コミカルな萌え”キャラで、メインにはできない”ぼけ”を演じています。 これも現実の人間でないバーチャルだからこそ可能なわけで、ユーザに作られたという意味では、こちらの方が真のCGMと言えるかもしれません。 (メインキャラはクリプトンがVocaloid発売のために造った)。 ちなみにこの曲はIevan Polkkaと言って、フィンランドのフォークソングでLoitumというグループがヒットさせました。 沢山のユーザがミクに色々な歌を歌わせているのですが、こういうリズムのある曲が一番合っているようです。 うただかおるの歌や物の怪姫等はイメージは合うのですが、ちょっと声に力が無くて淋しいですね。 この動画でははちゅねミクが忍術の分身の術で増えていきます。 これも素人とは思えないできばえです。 歌も聴いて下さい。
これは”ラクガキ王国”というグラフィックソフトで作ったメルヘンチックな作品。
にこ動では曲ばかりでなくキャラクターを3次元グラフィックにした動画も沢山投稿されており、トップ10くらいは軒並み10万、20万、30万ダウンロードされています。 いくつかのCNET ブログでも取り上げられていますが、今最もホットな話題の一つでしょう。 そして、この”初音ミクフィーバ”にどう対処するかでその人の”いわゆるWeb 2.0と言われているもの対する感性"が問われている気がします。
1.まず夢中になってこのブームを盛り上げている”おたくたち”。 しかし現実にはもう彼らの手を離れてメインミディアの現象になりつつあります。 又そうでなければここまで盛り上がる事は無かったでしょう。 ブームを造るうえでコアになる狂信的なファンは必要ですが、本当に大きなブームになるためには、おたくを離れて普通の人が参加できる必要があります。 にこ動やYTの投稿でも、明らかに単なるおたくを超えた、プロやセミプロの手になると思われる曲や動画があります。 私が”これは何か大変な事が起きているのではないだろうか?”と思ったのも、このクオリティの高さでした。 ぜひみなさん時間を取ってチェックしてみて下さい。
2.”こんなものは、又おたく達の馬鹿騒ぎにすぎない。 すぐ消えるさ”という大人や評論家の常識人。 一般には少なく、どちらかと言えば音楽や動画作成のプロやセミプロの方が、反発が強い。 自分達の技術を否定された気になるのだろう。 今だにブログに反発しているマスコミ人等、CGMに対するプロの目は厳しい。 逆に言えばプロすら認めるようになったらすっかりメインストリームになったと言えるのだろう。 その時は又次の新しい波が起きていることになる。 しかしプロの中にはいち早く新しい波を取り込んで自分を変えていける人もいるのも事実で、初音ミクにももう何人かの音楽のプロが興味を示している。
3.DTMって? にこにこ動画なんて聞いた事もない。 Youtubeの名前は聞いた事あるがGoogleに買収された事くらいしか知らない。
おそらくこの3番目の人々が一番多いでしょう。 今回のブログもこのレベルの人達対象に書いています。 Web2.0が何を意味するのかは、かなりあいまいで、CGMって本当に意味あるの? 単なるおたくの人の遊びにすぎないのでは?という疑問もあります。 しかしこの初音ミクブームを見て、私はCGMが充分社会を変える力を持つ事を確信しました。 初音ミクの成功は、クリプトンのソフトウェアの優秀さももちろんあるのですが、本当の原動力になったのは、にこ動とYTによるユーザの参加、それも簡単な事(にこ動でコメントをつける)でもアクティブに参加できるユーザ達が、大きな流れを作り出しました。
現在クリプトンには、”あらゆる種類のオファーが来ている”との事なので、この後2弾、3弾のVocaloidの発売。 オリジナル曲を含めたCDの発売。 アニメやCMへの”出演” などバーチャルタレントとしての活躍が見られそうです。 そういえば昔バーチャルタレント伊達杏子というのが居ましたが、3Dのイメージを作って声はゴーストスピーカーが居たわけですから、ミクとはちょっと違いますね。 声まで作れるというのはやはり大きいようです。
アメリカでミクが受けるか?と考えると、こういうバーチャルタレントはアメリカでは流行らないでしょう。 ドラゴンボールでさえ実写版になるというのですから、アニメに対する違和感は強い社会です。 それに比較すると韓国、中国、タイ等のアジアにはかなり進出できるんじゃないかと思います。
これは又これから書いていきますが、アメリカの南部を中心とする原理主義キリスト教徒(Fundamentalist)は”人間は神の姿を似せて作られた聖なる存在で、動物や植物、まして機械などと一緒にするなんて許せない”と言う気持ちが強く、アニメやバーチャルタレント、ロボット等にたいする感覚が日本人とは大分違います。 東部のLiberal派やCalifornia等はもっと自由ですが。 アメリカ人の多くはかなり保守的です。 Bushが2期やれたのもそのせいではあるのですが。
今回のタイトル通り、初音ミクが”日本発のCGMの夜明け”になるかは判りませんが、確実に言えるのは、Web2.0とか言われる何かメールや単にWebサイトを見るだけでない新しい動きが起きており、その一つの現れがこの初音ミクブームなのだろう、と言うことです。 その意味では10年後にWeb技術、ビジネスを振り返ってみた時、確実に思い出す出来事の一つには違い無いでしょう。 さあ、さっそくYTやにこ動を”ミク”のキーワードでサーチして下さい。 となりの誰かが”初音ミクって聞いた事ある?”って言ったら、”へーまだ知らなかったの?”と馬鹿にして説明してあげて下さい。
最後に初音ミク関係のリンクをいくつかつけておきましょう。 これを全部読んだらあなたも今日から”みっくみっくになる”資格充分です。
CNETにはライバル(?)のIT Mediaの9月時点での初音ミクブーム紹介記事 "「初音ミク」が掘り起こすDTMのすそ野"
”日本のアニメは本当に世界一か”ブログで”本当に職を失うのは誰か”という視点からミクブームを分析。 読売新聞朝刊の「ウイークリー時評」で「初音ミク」が取り上げられている事を述べている。 趣旨はは2人共「中位の技能職に就く人々の職が失われる」。
TBS”あっこにおまかせ”でミクファンを”お宅の集まり”と言った事に対する批判。 CGMが社会に受け入れられていく一つの過程ではないのかな。
クリプトンフューチャーメヂアのブログ。 このクリプトンの創業者社長がいい性格でブログも誠実なところが良くでている。 ミクのヒットでクリプトンが成長する事を祈ってますよ。
その他、Yahooなどのサーチエンジンで”初音ミク”でサーチすればぞろぞろ出てくる事でしょう。 日本語Wikiの記述も良くまとまっています。 では今日はここまで。
大額和良(おおぬか かずよし)
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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